■思い描くキッチン空間を演出
“ギャルママ”向けをイメージしたキッチンルーム
クリナップは梅田阪急ビルのオフィスタワー26階(大阪市北区)に、延べ床面積が約890平方メートルという同社最大のショールーム「キッチンタウン・クリナップ・大阪」を開設した。これまでのショールームは、販売店や工務店を意識したつくりとしていたが、今回は一般のユーザーがメーンターゲット。「ひとりひとりの、キッチンストーリーへ」というコンセプトを導入し、潜在需要を掘り起こしていく。
キッチンタウンには、「新しい提案の場が必要という強い思い」(井上強一社長)が込められている。それを具現化したのが、6つの部屋を備えたキッチン・ルームだ。
来日して長い歳月が経過したドイツ人夫妻やギャルママらをイメージした6つのコンセプトから成り立っており、それぞれにストーリーを持たせることで、「自分が思い描くキッチン空間をできる」といったわくわく感を演出している。
例えば「オトコのキッチンストーリー」の仮想ユーザーは50代夫婦。自宅で料理を楽しみたいという男性を意識しており、レコードを装飾品として活用するなど、男目線のキッチンを提案している。
キッチンスタジオという空間では月2回にわたって、料理教室を開催するなど、「収納関連も含めて、暮らしを豊かにするイベントを随時開催する」(加藤亨一取締役専務執行役員)。また、地元の大手書店、旭屋書店の協力を得て、キッチンに関連した書籍や雑誌などを自由に閲覧できるようにした。
一方、クリナップの本社がある東京ではなく大阪にキッチンタウンを設置した背景には、東日本大震災が大きくかかわっている。
同社の生産拠点は地震で大きな被害を受けた福島県いわき市と、岡山県勝央(しょうおう)町。震災前の生産比率はいわきが8に対し、岡山は2だった。
震災によっていわきの拠点は約2カ月間にわたって操業停止を強いられたが、そのしわ寄せによって全社的に十分に機能しなかった。
そこで、リスク分散を図るため岡山での生産体制を強化。生産能力を倍増し、将来的には岡山の比率を4割まで高める方針だ。ただ、物流体制を考慮した場合、「生産地に近い場所で売れることが重要」(井上社長)というように、関西地域でさらなる需要喚起を図ってシェアを高めた方が、収益面で効果的。キッチンタウンが担う役割は大きい。(伊藤俊祐)
「フジサンケイビジネスアイ」