ハーツ社長・山口裕詮さん
--運転手付きトラックを時間単位でレンタルする「レントラ便」事業を展開している
「簡単な引っ越しや荷物運搬などの作業を手伝うサービスが売り物で、直近の業績も好調だ。不動産の大手賃貸仲介会社と提携し、入居者の引っ越し業務を請け負うなど、当社と独占契約を交わしている企業が着実に増えており、それが底上げ要因となっている」
--当初から現在の事業モデルを確立していたのか
「ほぼ1社に依存する経営形態だったが、一挙に売り上げの8割が吹っ飛ぶ事態に直面したため、徐々に脱下請けを目指していった。ところが運送業者の大半は中小企業で、かつてのわれわれのような下請け。顧客あっての受け身の仕事で、自社ブランドが通用する企業は極めて少ない。当社のように自ら料金を設定することも難しく、自社で経営改善を果たすのは難しい環境にある」
--政府は働き方改革に力を入れている
「運送業は労働時間イコール売り上げという典型的な労働集約型産業で、効率化を図ることはなかなか難しい。ハーツでは完全週休2日制の導入など労働環境の改善に力を入れているが、運送業界全般には長時間労働を強いられても稼ぎたいという人が集まってくる。残業規制が適用されると、他のアルバイトに従事するケースが増えるのは必至。結果として時間管理が難しくなり、運転時の安全を担保できなくなってしまう」
--抜本的な対策は何か
「事故を契機に貸し切りバスの運賃制度が抜本的に見直されたように、国のかじ取りが重要な役割を果たすはずだ。その前提として、『サービスはタダではない』という意識改革を通販の利用者に促す必要がある。物流は日本経済の血流。そこを健康にしなければサービスが劣化するどころか消失する可能性も捨てきれない」
【プロフィル】
山口裕詮 やまぐち・ひろあき
函館西高卒。大手運送会社を経て1993年に創業。95年にハーツを設立し、現職。北海道出身。
「フジサンケイビジネスアイ」