インターネットを使った企業向け名刺管理サービスを提供するSansan。名刺管理の煩わしさから解放されるとあって注目を集め、2年前まで1000社程度だった導入企業数は、今年4月に3000社を突破した。8月までには外部連携用インターフェース(仲立ち)機能を無償公開してサービスを拡充し、目標の導入企業数1万社に向かって一歩前進する。
名刺管理サービスは、利用者が名刺をスキャンしてSansanのデータセンターに情報を送信すれば、オペレーターが入力してデータベース(DB)化するため手軽に名刺を管理できる。名刺の情報は外出先でスマートフォンを使ってネット経由で簡単に確認することができるのも利点だ。導入先は民間企業だけでなく経済産業省や徳島県など国や地方自治体にも及ぶ。
三井物産のIT部門に勤務した経験を持つ社長の寺田親弘氏が慶大時代の仲間ら4人と8年前に創業した。「ビジネスの出会いを資産に変えれば、働き方を革新できる」という思いで同サービスを始めた。
Sansanによると、当時は名刺をデジタル管理するという発想が珍しく、市場もわずかな規模だった。だが、通信環境の改善や携帯機器の高度化を背景に、徐々にその便利さが受け入れられ、民間調査会社の推計では、市場規模は2014年に33億円、20年には約80億円に拡大するとみられる。
シェアは、早期にサービスを始めたSansanがトップだが、参入企業が増えていることから差別化戦略を強化する。
第1弾として、8月までにパートナー企業が名刺情報を組み込んだ業務ソフトやサービスを自由に開発できるようインターフェース機能を公開する。
すでに日本マイクロソフト、日本郵便など数十社がパートナー企業に名乗りを上げている。日本郵便との連携の場合、SansanのDBを宛名の印字に活用し、はがきのデザインから投函、配達までを一括して依頼できるサービスを提供できる。富岡圭取締役は「サービスの幅が広がると、1社当たりの利用者数は増え、売り上げ増加につながる。魅力が増せば導入企業数も増える」と話す。
一方、Sansanは社員の働き方の改善にも取り組む。ネット関連技術者は本社から離れた場所でも業務ができるという考えで、過疎地の徳島県神山町に築70年の古民家を再活用した開発拠点「神山ラボ」を開設。神山町は高速の光回線が整備され、開発環境に問題なく、常駐社員も配置した。神山町は「最先端の過疎地」として脚光を浴びているという。
他の地域でも類似の展開を進めており、IT企業の柔軟性を生かして働きやすい環境を提供することで、社員のやる気を引き出し、生産性の向上を図る。(佐藤克史)
◇【会社概要】Sansan
▽本社=東京都渋谷区神宮前5-52-2 青山オーバルビル13階
▽設立=2007年6月
▽資本金=11億794万円
▽事業内容=インターネットを使った名刺管理サービスなど
「フジサンケイビジネスアイ」