クリナップ　九州の雑誌とショールームイベント

■郷土料理講座通じて顧客開拓

　

クリナップは福岡ショールーム（福岡市博多区）で、「ムラのおばちゃん直伝おふくろの味　伝承塾」というイベントを来年３月まで行う。マインドシェアが編集・発行する雑誌「九州のムラ」との共同企画で、“地産地消”を合言葉に地元食材を活用し、ショールームに設置された大型キッチンを通じて、郷土料理を中心とした作り方を伝授する。

　

クリナップは全国１０１カ所にショールームを所有している。現在は移転・改装に力を入れており、この３年間で４０カ所を対象に実施。今後も順次計画を進めていく。

　

ショールームには最新の住設機器をそろえているが、業界内の競争は激しく「ハードだけで勝負するのでは、なかなか差別化できない」（ショールーム推進部ドリミア推進課の橋本健史課長）のが現状だ。このため同社では、主力製品であるシステムキッチンの説明に終始するだけではなく、食や暮らしに関する情報の提供を積極的に行うことでファンづくりに力を注ぐ。その過程で重要な役割を果たすのが「サロネーゼ」という講師だ。

　

クリナップは「Ｄｒｅａｍｉａサロン」というサイトを運営し、自宅などを活用して料理教室やフラワーアレンジメント教室などを開催している「サロネーゼ」と呼ぶ女性講師を支援している。具体的にはサロネーゼを招き、各ショールームでイベントを実施。生徒募集を手伝う。結果としてショールームを訪れる人が増え、キッチンも見てもらうことで新たな顧客予備軍を獲得。実需につなげていくという流れだ。

　

九州の旗艦店である福岡ショールームは今年４月にリニューアルオープン。これを機に、他の拠点とはひと味異なる企画を模索し、九州は食材が豊富な点に着目した。その結果、九州の観光と地域づくりを紹介する雑誌「九州のムラ」と連携し、今年４月から伝承塾を開始した。

講師を務めるのは、「九州のムラ」の養父信夫・編集長が築いてきたネットワークを活用し呼びかけた、各地で活躍する生産者や地域店店長など多種多様な女性。２部構成で１部当たり１２人が参加し、試食して作り方を学ぶ。提供されるのは、素材の良さを生かした郷土料理が中心。これまでに「人気農家レストランの夏野菜レシピ」や「シマの魚料理」などが披露された。

　

１１月のプログラムは「お酒をおいしく飲むためのおつまみ」で、福岡県久留米市在住のパッチワークキルト作家、山口怜子さんが冷蔵庫に残った野菜などを有効活用し、ユニークなつまみの味・作り方を伝授した。今後は「海女発祥の地に伝わるサシスセソの使い方」や「癒やしの宿の精進料理」などが予定されている。

　

料理が作られ参加者が試食するゾーンはショールームの中心部。参加者は最新のキッチンの性能を目の当たりにし、自然と興味を抱くようになる。結果として新たな顧客に育つ可能性も出てくる。また、他の来場者からの注目度も高く、ショールーム全体に活気をもたらす役割も果たす。

　

サロネーゼをベースに、新たな顧客の獲得に向けて九州の食材・郷土料理を活用するクリナップの戦略。橋本課長は「伝承塾の開催を契機として、今後もハードだけではない提案に力を入れていきたい」と語る。（伊藤俊祐）

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