一般社団法人 中小企業事業推進機構 代表理事   平井 良明

福岡から全国に中小企業支援の輪を広げる「事業推進クラブオンラインサロン」がスタート

今年で設立13年目を迎える中小企業事業推進機構(福岡市中央区)。コロナ禍でリアルの活動に影響が及んだことから、毎月1回行っている交流会の「事業推進クラブ」をオンラインサロンに刷新した。福岡、九州以外にも活動の幅を広げ、Zoomを活用した展示会「ZOOTEN」を行ったほか、会員・メンバー向けの学びの場も設けるなど、サービスを拡充させている。オンラインとリアルのハイブリッドで、中小企業の経営支援を強化していく。代表理事の平井良明氏に、新たなスタートを切った同機構の取り組みについて聞いた。

 

交流会をオンライン化し、共創と価値が生まれるサロン

――「新事業推進クラブオンラインサロン」が今年からスタートし、新たな活動が始まりました。
今まで、月1回の「事業推進クラブ(月例会)」という交流会を開催していましたが、コロナ禍でリアルでの開催がなかなか難しくなりました。実際、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、会場を借りて準備していたのに使えなくなったり、オンラインでの開催になったなど、さまざまなことがありました。
――予定していた月例会が中止になったこともありますね。
結局、会場をおさえるにも費用がかかるので、開催できないのは大きな痛手です。また、福岡市をメインに開催していたので、同じ福岡市内でも少し離れた場所や市外、あるいは全国の参加希望者が、リアルで集まることができなかったという事情もあります。
そこで、中小企業事業推進機構が生まれ変わるために、まず取り組んだことの1つが「事業推進クラブ」をオンライン化し、「新事業推進クラブオンラインサロン」として新たに展開していこうということでした。
オンライン化を進める中で、「事業推進クラブ」自体の取り組みも変えようと、今までメインに行っていた「事業推進クラブ」、「ビジネス交配会」、「ブレストファイアー」、「プレゼン練習会」に加え、コロナ禍後に始めた「ZOOTEN(ズーテン)」(後述)を含めて5つのプログラムを実施しています。

 

企業間連携とビジネスの種が自然発生する「ビジネス交配」の場

 

「事業推進クラブ」では、基本的に4社がビジネスプレゼンテーションを行います。自社の商品やサービス、プロジェクトなどについて、20分の持ち時間で発表したあと、質疑応答の時間を20分設けています。
普通の交流会と違うのは、プレゼンを聞く聴衆が、その商品やサービスを利用したり購入するかどうかを検討することを、主な目的にしていないという点です。基本的に中小企業同士なので、商品を買うか買わないかということより、「その商品なら、こういう使い方をしたほうがいいのではないか」とか、「こんなことなら私はお手伝いできます」、「こういう人を紹介しましょう」といったことを中心に、質疑応答が進んでいきます。発表者も、自らプレゼンを行う一方で、他のメンバーのプレゼンに対して、さまざまなアドバイスを行うのが事業推進クラブです。
もう1つは、私が主催している「ビジネス交配会」。たとえば名刺交換会に出ても、名刺が貯まるだけで終わってしまうことか少なくありません。また、いわゆるビジネスマッチング会で「商品を買ってくれる人」として顧客を紹介されても、1回限りの付き合いになったり、そこで商談が決まらなければ、それまでに費やした時間もなかったことになります。
その意味で、「ビジネス交配会」はビジネスの種を生むコミュニティです。一般的には、A社とB社がコラボをして新しい商品、新しいサービスを作ろうとする場合、どちらかが発注者となり、どちらかが受注者という関係になることが少なくありません。たとえばシステム連携なら、発注者が開発者にお金を支払うという話をコラボだと思っている人もいます。そうではなくて、お互いが持っているものをそのまま結びつけるのが、「ビジネス交配会」のイメージです。
自分が持っているものと、相手が持っているものを結びつけていくその先に、お互いが持っているお客様もいるのです。だから自分が相手から仕事をもらうとか、相手に仕事を発注するということよりもまず、一緒にやりましょう。その中で、新しく商品を開発したりサービスを作っていきましょう、ということなのです。
――自然発生的に、会員の皆さんが持っているものが融合し、新しいものが生まれてくるというイメージですね。
そうですね。そのために会員の皆さんに自己PRをしていただくことが半分、それに対してフィードバックを得るということを、小グループで行っています。その中で意見交換をしながら、この企業のこんな商品やサービス、取り組みがこんなところに使えるかもしれないというものを組み合わせていくのです。
実は、私が取締役を務める株式会社イーハイブ(福岡市中央区)が開発した地域応援オンライン名刺付きバーチャル背景メイカー「ふるさとメイシー」が、「革新ビジネスアワード2020」(https://www.innovations-i.com/award/2020/)でビジネス部門優秀賞を受賞しました。
当社が展開している店舗情報やSNS、利用中の予約サービスなどを一元化して顧客に提供できるファン化ツールの「すまっぽん!」がコラボの良い例で、当社はシステム開発会社ですが、共同開発者は指定障害福祉サービス事業者の株式会社カムラック(福岡市博多区)さんです。指定障害福祉サービス事業者とシステム会社がコラボを行い、「すまっぽん!」という商品を作ったわけです。
こういう話をしていくと、「どちらがお金を払ったんですか」とか「どちらが発注者なんですか」と質問されますが、どちらが発注者か受注者かということもなく、お互いにお金のやり取りもなく、一緒に仕事をしながら新商品を作ったのです。
外からは、両社がくっついて新しい商品を作ったように見えるでしょう。このように企業同士が結びついて新しい価値を生めば、お互いのお客様にそれを広げていくことができます。ビジネスマッチング会などで、目の前にいる人だけを見るのではなく、その人の横を見れば、もっとお客様の広がりがあるというイメージですね。
――そこにいる人同士、会社同士だけがつながるのではなく、お互いの背後にいるお客様同士もつながっていくのですね。
そうです。「ビジネス交配会」はもう10年ぐらい前から行っていまして、すでに九州各県に広がっています。東京でも3、4回、そのほか大阪を始め他の地域でも数回実施しています。基本的には九州全域を対象にしている会ですが、かなり人気はあります。
――東京、大阪などでも開催されていたのですね。
はい。コロナ禍以前は「ビジネス交配会」をメインに、リアルで開催していました。コロナ禍になってからは2回、名古屋でZoomを利用して実施しています。

 

他社や異業種の常識をアイデア作りに活かす

 

「ブレストファイアー」は、異業種や他の会社の方とブレインストーミングをする場です。ブレインストーミングは、普通は社内でやるものですが、同じチームや同じ方向をむいている人同士が話し合っても、なかなか新しいアイデアは生まれないものです。
そこで、他社、他業種の会員同士を組み合わせて「ブレストファイアー」を行うわけです。ある1つのテーマについて、会社も業種も異なるさまざまな人たちがアイデアを出し始めると、何が起きるか。自分では当たり前のことを話していても、相手がそれをまったく知らないということが多々あるのです。
同じことを社内でやろうとすると、ブレストを何回やっても同じ内容、同じ結論になりがちで、他社や他業種の会員同士を組み合わせてブレストを行う意味は、そこにあります。
以前、地元アイドルチームの5周年イベントを盛り上げるために、観客をどうやって動員するかというテーマで話し合ったことがあります。会員にはそのアイドルを知らない人もいて、もちろん業種もバラバラです。そうした中で、「私はこう考える」、「私はこんなやり方がいいと思う」という自分の考え方を話すのです。
すると、自分では常識だと思って話したことが、他の人にとっては「えっ、そんなことができるのですか?」という驚きになる。たとえば印刷業では当たり前のことを、印刷業以外の人はまったく知らない。「ビジネス交配会」にもそういう傾向はありますが、こうした発見が、「ブレストファイアー」では頻繁に起こるのです。
結局、「ブレストファイアー」を通じて、自分自身がわかってくるということになりますね。
それから「プレゼン練習会」は、発表10分、質疑応答5分のプレゼンを数多くこなす練習の場です。たとえばどこかの展示会でプレゼンをしなければいけない、社内プレゼンがあるというときに、練習できる機会がなかなかありません。そこで、このプレゼン練習会を利用していただくのです。
聴衆の方にアンケート用紙を配り、「資料が良かった」とか「時間通り発表できていた」などの評価をしてもらったうえで、その評価表を持ち帰っていただいています。

 

Zoom展示会「ZOOTEN」から全国にも広がる輪

 

加えて、コロナ禍になってからは「ZOOTEN(ズーテン)」という、Zoomを使った展示会を実施しています。Zoomには「ブレイクアウトルーム」という、参加者を少人数のグループに分けてミーティングを行える機能があります。「ブレイクアウトルーム」をたくさん作っておけば、来訪者は好きなルームにいつでも自由に出入りできることになります。
――リアルの展示会のように、たくさんのブースがあるようなイメージですね。
そうです。リアルの展示会場に行くと、各社のブースが並んでいて、自分の好きなブースに行くことができます。これをZoomで行っているという意味です。
昨年2月に第1回目の「ZOOTEN」を開催しましたが、出展社は約20社で、約300人が参加して下さいました。東京、大阪を始め九州以外の地域からも出展があり、テレビ局にも取材していただきました。

 

既存の交流会にはない、尖った個性を持つサロンを目指す

 

会員の皆さんの中には、当機構を異業種交流会だと思っている方もいらっしゃれば、マッチング会だと思っていらっしゃる方もいます。メインは、当機構を会員の皆さんに場として使っていただく。そして、何をやっていくのかはここに集まった皆さんと一緒に考えていくのがこの会で、これまでリアルの場を月1回用意してきました。既存の異業種交流会などにはない特徴を持つ場でなければならないと思っています。
――違いを明確化するために「事業推進クラブオンラインサロン」という形を打ち出したのですね。
はい、そうですね。その打ち出し方ですが、事業推進クラブをネット上に移行しただけではなく、全国からも参加できるようにしました。また中小企業の力を集め、経営相談やビジネスモデルの構築、販路開拓、従業員研修を含むさまざまな角度から、中小企業の経営支援に踏み込んだサービスを行っていきます。その中で、私たち役員も、会員の皆さんから寄せられるさまざな相談に答えられるようにしていく考えです。
コンサルティングやアウトソーシング、BPOを手がけるICI株式会社(福岡市中央区)の島田晃徳代表取締役と私が当機構の代表理事を務め、先に紹介した指定障害福祉サービス事業者・株式会社カムラックの賀村研代表取締役が当機構の理事を務めています。カムラックさんは、第12回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞で審査委員会特別賞を受賞されました。賀村理事は積極的に講演活動も行っており、当機構に障害者支援に携わる方々も参加され始めています。
また、河津祐二監事は九州経営リスクマネジメント協会の代表を務めており、元銀行支店長という経歴を活かして、中小企業の資金繰り支援にも尽力されています。
――役員の皆さんにそれぞれ専門性、得意分野があるのは大きいですね。
はい。実は、役員に会いたいという理由で当機構に入会して下さる方もいます。

 

社会とビジネスの変化、働き方の変化、中小企業でのキャリア開発などについて学べる場も提供

――「事業推進クラブ」がオンラインサロンに移行し、これからどんな動きが始まりますか?
オンラインサロン化によって、コミュニティが広がっているのはもちろんです。現在、会員(年会費1万2000円、別途入会金1万2000円要)のほかに年会費無料のメンバー(月例会および主催セミナー等の参加費有料)という区分を設けていますが、会員の皆さんは無料、メンバーの皆さんは有料で参加できる学びの機会を、月に2回提供しています。
そのうちの1回が、当協会に協力して下さっている講師による人材開発やキャリア開発関連の読書会。人材開発やキャリア開発は、中小企業では「そんな時間がない」とか「費用がない」という理由でおろそかになりがちです。そこで、人材開発やキャリア開発について、中小企業がこんな考えを持つだけで社員が幸せになり、モチベーションを向上させて仕事ができるという知恵があることを理解していただくために、5月から月1回、人材開発やキャリア開発関連の本を読みながら意見を交換し合う読書会を始めました。
もう1回が、私が主催している「平井塾」です。
――「平井塾」ではどんなことを学ぶのですか?
第1回では、世の中の変化の話、たとえば金融資本主義や共感資本主義などについて触れながら、もうお金の時代ではない、ごく一握りの勝者と大多数の敗者が生まれるような世界ではいけないという話をしました。
また、そういう流れの中で、労働から仕事、活動へという働き方の変化にも触れました。つまり、戦後すぐの時代には生きるために労働をしなければなりませんでしたが、今では自分がやりたい仕事をすることができるようになりました。そしてこれから先は、人のために何ができるかという活動の段階に入ろうとしているわけです。
だから当然、会社のあり方も変化しています。たとえば当社は本業で、先の「すまっぽん!」と中小企業・個人事業主向けホームページ作成サービスの「COMLOG CLOUD(コムログ・クラウド)」を展開しています。これらのサービスを使って社会貢献をしなければいけません。
もともと日本人にはアメリカのビック・テック(巨大テック企業)のように、商売で儲けたらどこかに寄付をするという感覚はなく、それだけの規模の企業も日本にありません。だから基本的には、本業をしっかりやっていくことが社会貢献につながるというのが望ましい姿だと私は思います。こんな話を「平井塾」でさせていただいています。
今後、島田代表理事の「島田塾」、賀村理事の「賀村塾」、河津監事の「河津塾」もラインナップに加えていきたいですね。
――他の役員の方も、それぞれの専門分野で、学びの機会を提供していかれるのですね。
そうですね。皆さん経験豊富で、事業推進クラブや飲み会の席で話を聞くこともできますが、改めて系統立てて話を聞ける場を設けたほうが、会員やメンバーの方も参加しやすいと考えました。

 

福岡の中小企業、日本の中小企業のために

――会員の皆さんはどんな方々ですか?
業種や業界は幅広く、社員数10人程度の企業や個人事業主までさまざまです。私がIT系なのでIT系企業の会員もいらっしゃいますし、賀村理事の影響力もあり、障害者支援施設も多いですね。加えて、社労士さんなどの士業の方のほか、花屋さんや婦人服屋さんといった個人事業主もいらっしゃいますね。
――そうなると、サロンのコミュニケーションも密で、学びの場としても活きてくるでしょうね。
そうですね。とはいってもまだオンラインサロンを始めたばかりなので、活性化はこれからです。東京や大阪の方も増えてきそうなので、年に何回かは東京、大阪で出張会を行うといった形で展開していけたらと思います。今後はやはりオンラインとオフラインのミックスになっていくのは確かだと思うので、両者をうまく活用していきたいですね。
新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置も終了し、ここでもう一度畑を耕し直さなければいけません。普通の交流会や親睦団体とはまた違った動きをしなければ、当機構の長所を理解していただくことは難しいと考え、試行錯誤を繰り返しながら運営しています。
――中小企業事業推進機構さんとしては、「福岡のために」という意識を持って活動しているのですか?
もちろんそうですが、中小企業のためにという思いが強いですね。福岡を基盤に活動していますが、オンラインに移行した今、さらに活動の幅を広げていく。それも含めて「事業推進クラブ」をオンラインサロン化したということですね。
中小企業事業推進支援機構のホームページ
平井良明(ひらいよしあき)
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ソーシャルメディアアドバイザー
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株式会社イーハイブ  取締役統括責任者

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