株式会社ユニコーン 代表取締役 安田 次郎

公開日:2022年3月30日

ユニコーン企業を育てる 親会社の機能・サービスを活用

株式投資型クラウドファンディングサイト「Unicorn」を運営するユニコーンは、スタートアップ企業の成長支援に向け、同社サービスによる資金調達だけでなく、親会社のZUU社(東証マザース上場)がもつメディア機能やサービスも提供していく。ユニコーンの安田次郎代表取締役は「(企業価値が10億ドル以上と評価される未上場企業である)ユニコーン企業を育てるのが我々の目標。そのための支援は惜しまない」と意気込む。

――第1号案件の公開が2019年8月だった。これまでを振り返ると
簡単ではなかった。日本で株投型クラウドファンディングが始まったのは17年5月。それから5年が経つが、バイアウト(企業売却)はあってもIPO(新規株式公開、東京プロマーケットへの上場を除く)は1件も出ていない。このため投資家は株投型クラウドファンディングに対し厳しい見方をしている。この半年ぐらいを見ると、我々が紹介しても目標金額に到達できず成立しなかったケースが増えてきている。もちろんビジネスモデルが魅力的なスタートアップ企業には間違いなく資金が集まる。
――資金調達環境は良くないのか
新型コロナウイルス禍の影響を受けた。東京株式市場の低迷で株価が下落局面なので調達額も減ると判断し上場申請を取り下げる企業が相次いでいる。ロシアのウクライナ侵攻も投資家離れを起こしており、22年に入って投資意欲は弱まっている。今は目標募集額が数百万円でも集まらない感じだ。直近の36号案件は、従来なら960万円の目標額に対しすぐにでも1000万円に達すると思っていたが、最終日になってようやく目標額を超えた。37号案件は公開したものの、ウクライナ情勢の問題や株式市場の不安定な動向などから募集開始を延期することになった。IPOマーケットは決して良くない。
――投資意欲を高めるには、Unicornで資金調達したスタートアップ企業のIPOが待たれるが
東京プロマーケットを志向する企業はあるが、IPOは今年、来年は出ないとみている。このため投資家もエグジット(投資資金の回収)が難しい。同業のファンディーノ(東京都品川区)はそのためのセカンダリーマーケット(流通市場)を開設したが、我々は株式コミュニティ制度を使ったオンラインマーケットを始めるべきかどうかを慎重に検討している。Unicornに参加する会員から『やらないの』という問い合わせ・要望は来ていない。会員向けアンケートでは保有目的はリターン期待が最も多く50%を超えるが、2位は投資先企業の応援だった。まだまだ子供のようなスタートアップ企業が多いので成長に貢献したいと考える会員が少なくないようだ。
――成長支援で新たな取り組みは
昨年から、次世代ユニコーン企業の発掘・支援を目的にブラッシュアップ型ビジネスコンテスト『Unicorn”ブレークスルー“ビジネスコンテスト』を開催している。起業しても起業家として成功するのは簡単ではない。ビジネスプランを磨き上げ、実践し、結果を出してブレークスルーするためにはメンター(助言者)が欠かせないと考えて始めた。エントリーから決勝大会までメンターによるアドバイスを受けられる。メンターの赤羽雄二氏は辛口で、ずばずばと言ってくれる、参加者にとってビジネスプランに対する外部評価が分かる。第1回の参加者からは『経験豊かで実績のあるメンターとの壁打ち(ビジネス展開する上での悩みなどを聞いてもらうこと)のたびに事業計画がブラッシュアップされ、問題点や課題が可視化された』『腕試しのつもりで参加したが非常に多くのフィードバックをもらい、ユニコーン企業になるための気づきを得られた』といった声が寄せられた。
――2回目のコンテストに参加した企業の評価は
今回は将来性豊かなスタートアップ企業が集まり、準決勝進出企業9社から6社を選んで決勝大会を開く予定だったが、3社を落とす選別が難しく9社で決勝を争った。9社とも現状では株投型クラウドファンディングの予定はないが、将来が楽しみだ。今後は年3回の開催を予定しており、『短期集中プログラムで事業をブラッシュアップしたい』『IPOを目指せる事業計画を作成したい』『まずは腕試しとして参加したい』といったユニコーン企業を目指す『大志を持った起業家』の参加を待っている。
――親会社のZUUの活用については
我々ユニコーンのミッションは、第一義的には『スタートアップ企業の資金調達支援』なのでUnicornのほか、企業成長丸ごとサポート、ユニコーンインキュベーションプログラム、というサービスで成長を支援する。加えてZUUのサービス、例えばコンサルティングやファイナンシャルサポートの機能・サービスを提供する。具体的には、『鬼速PDCA』や『鬼速IR』といったサービスがあり、またUnicornを使って資金調達した企業情報をZUUの金融メディア『ZUU online』で配信し、認知度を高めることが可能だ。グループ力を使って、IPOに向けて息長くサポートする。またZUU online会員の中で資産1億円以上をもつ富裕層ファミリーを対象としたサービス『プライベート・ウェルス・メンバーズ』の活用に注力する。富裕層の中にはエンジェル投資家もおり、スタートアップ企業とのマッチングを目指す。スタートアップ企業の中には株投型クラウドファンディングで不特定多数の株主が誕生することに不安を覚えるところもあるからで、そうした企業にエンジェル投資家を紹介する。
――停滞する日本経済に刺激を与えるためにもスタートアップ企業への支援が欠かせない
経団連は3月15日、スタートアップ企業の育成に向け提言を発表した。現在10社程度のユニコーン企業を27年までに100社に増やす目標を掲げた。スタートアップ企業も10万社に増やすという。提言には株投型クラウドファンディングのさらなる活用も入っている。株投型クラウドファンディングの調達上限額は年間1億円未満だが、従来は、株投型クラウドファンディング実施前1年間に行った増資等も通算されていた。今回の規制緩和で、この通算規定が撤廃され、株投型クラウドファンディングだけで年間1億円(未満)まで調達出来るようになったことは評価したい。しかし、まだまだ規制緩和の余地はあり、リスクマネーを提供するパイプを太くすることで、株投型クラウドファンディングが伸びていく可能性は大きい。IPOは出現していないが、今は踊り場。IPO銘柄が誕生すると株投型クラウドファンディングも見直されるはずで、飛躍のステージに入る。ユニコーン企業を育てるという我々が果たす役割もそれだけ重要になる。

安田次郎(やすだ・じろう)
学習院大法学部卒。1990年国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。外資系証券などを経てユニコーン立ち上げに参画。2019年2月から代表取締役。

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