弁護士法人クレア法律事務所 代表弁護士 古田 利雄 氏
ベンチャー企業を力強くサポート!

取材日:2012年5月8日


弁護士法人クレア法律事務所 代表弁護士 古田 利雄 氏

弁護士になったきっかけは?
 家族や知り合いに弁護士がいた訳ではではありません。私の実家は食品メーカーを経営していました。どこにでもある零細企業で、工場と自宅は同じ建物でした。そのために独立した事業者として活動することにやりがいとともに、得意先の仕様変更や特売への協力など零細企業者の悲哀も感じながら育ちました。
大学を卒業するまでは、このファミリービジネスを継ごうと思っていたのですが、弟が継ぐことになったので、法学部に在籍していたこともあって、中小企業を支援する弁護士になろうと思ったのです。
クレア法律事務所の特徴は?
 早い時期から専門性の高いブティック型の法律事務所を作りたいと考えていました。そうしなければプロとして社会に貢献できないと思ったのです。そこで、98年ころから、ベンチャー企業創設と育成支援を中心にしていこうと決めました。
ベンチャーは急成長しようという会社ですから、小規模であっても上場会社に準じたコンプライアンスやリスク管理をしておくべきであり、弁護士が役に立てる分野だと思います。
また、当事務所では、特定の分野はその分野を担当する弁護士が取り組みます。繰り返し同じ分野を担当することで、短期間のうちに専門性を持つように育てています。
そこで企業法務を、会社法と金融商品取引法、著作権法やライセンスなどの知的関係、そして、裁判・倒産手続きと分けています。このようなデパートメント制をとっているのもクレア法律事務所の特徴です。
現在の経済環境についてどう思いますか?
 人口構造を背景に日本経済が停滞していくという論調は多いですが、そんなに悲観するべきではないと思います。特に政治家や経営者などのリーダーはいたずらに暗い発言をしないでほしいですね。不況時に若者まで保守的になってしまうのは残念です。少子高齢化、ニート・フリーターなどさまざまな問題もありますが、日本は、フランスとドイツの2国を足したくらいの経済規模がありますし、アジアの成長を取り込むにも地理的に良い位置にあります。日本の領海にはメタンハイドレードや海底鉱床など資源が豊富だという指摘もあります。
こういう時代こそ楽観的な気持ちで、目標を高くもっていれば、その分高い結果を得ることができるのではないでしょうか。
日本企業が成長するうえで期待している分野はありますか?
 ITのサービス関係のビジネスは、ベンチャーとしてやり易くはあるのですが、デファクトスタンダードを取ったトップの会社に利益が集中しやすいので、IT関連のビジネスをおこなうのであれば新しいことをやらなくてはならない気がします。
期待したい分野のひとつには大型の新薬の開発などをおこなうバイオ分野もありますが、農業や漁業のような一次産業の分野にも期待したいです。この分野では既存の農協や漁協などと妙な敵対関係で消耗せずに、洗練されたモデルを創ることができれば、これから面白いビジネスになれると思います。発電などのエネルギー分野にも期待しています。
ベンチャー支援をしていて思うことは、日本はまだまだ中央集権国家で明治政権以降の中央官僚主導のヒエラルキーでできているので、利権を守るため規制や商慣習や不文律があります。そういったものに支配されている非効率な分野を効率化していくことは社会に対しても良いことであり、価値を生み出すことのできるビジネス分野でもあると思います。
企業へのメッセージ
 私は、弁護士になって20年以上にわたり、ベンチャーファイナンスなどを主にベンチャー企業の成長支援に力を入れて仕事をしてきました。クライアントに対しては、資本政策などの相談があるたびに、ミッションやビジョンを具体的に言葉にするようにすすめてきました。目標が定まっていなければそれに近づいていくことができませんし、イレギュラーな問題が発生したときに、従業員が一定の哲学に基づいた適切な対応をすることができないからです。

 人間にとっても、企業にとっても、重要なことは、「自立すること」と「他へ貢献すること」だと考えています。
他者に依存していたのでは、その人(或いは会社)の顔色を窺っていなければならず、安心することはできません。他者や地域や社会のどれにも貢献しない人(或いは会社)がいたとしたら、その人や会社は社会の側から見ると不要です。人間は社会的な動物であり、人から自分の存在を認めてほしいという欲求が強いですから、社会から必要とされていなければ生きていく意義も感じられないでしょう。
企業経営においても社会貢献が強調されますが、それをボランティア活動のように狭くとらえず、顧客や社会に優れた価値を提供することが企業としての社会貢献であると考えればよいのです。
社会から必要とされて企業が存続してゆくためには社会貢献が必須の条件です。
自分を拠りどころにするという強い決意で不断の努力をして実力をつける、同時にすべてのステークホルダーに満足を届ける。経営者、従業員一人一人がそうすれば、企業の成功もついてくるはずだと思います。

略歴

弁護士法人クレア法律事務所 代表弁護士 古田 利雄 氏

1962年東京都生まれ。弁護士(東京弁護士会所属)。東京弁護士会会社法部委員。
新規事業の創出育成と事業再生支援をテーマに弁護士活動を行っている。上場ベンチャー企業、ナノキャリア、NGC、イデアインターナショナル、Canbas等の社外役員も兼務。また、最近の講演に、「株主総会公開講座」大震災の株主総会への影響、昨年の金融商品取引法の開示制度改正等への対応(東京弁護士会 2011年6月)、 著作に、「新・取締役会ガイドライン」(商事法務・東京弁護士会会社法部・2011年9月)、
「上場ベンチャー企業の 粉飾・不公正ファイナンス -上場廃止事例に学ぶ」(中央経済社・ベンチャーファイナンス研究会・2011年3月)、「会社の個人情報対策のことならこの1冊」 (自由国民社・クレア法律事務所・2010年12月)、「会社法の今日的課題と実務」(ぎょうせい・東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会・2009年12月)など多数。

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