株式会社NIC 代表取締役 岩松 勇人
YouTubeチャンネルでビジネス本解説数1位を目指す「ビジネス本研究所」
- 検索だけではわからないビジネス本の魅力とエッセンスを動画で伝える
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――「ビジネス本研究所」はどんなYouTubeチャンネルですか?
世の中には、新刊書から昔の名著まで大量の本が流通しています。そんな中、有名な本なのに読まずに時間が経ち、そのまま放置してしまった経験が私にもあります。
また、今はAmazonなどのオンライン書店で普通に検索し本を買うことができますが、検索ではヒットしなかった本と新たに出会えるのがリアルの書店のいいところ。
それに近い体験をプッシュで提供し、「『ビジネス本研究所』がまとめた解説動画を見たからこの本を知った」という出会いを、1人でも多くの方にお届けできれば嬉しいですね。
――約200冊のビジネス本の解説動画が見られます。
YouTubeチャンネルで「ビジネス本解説数第1位」を目指しています。
最近、YouTubeを通じた情報発信が非常に増えており、その中でビジネス系YouTuberや書籍解説系YouTuberといったジャンルも生まれています。実際、書籍解説系YouTuberも数多くいて、中には登録者数は数十万人というチャンネルもあります。
2018年にチャンネルを立ち上げ、19年に本格展開を始めた「ビジネス本研究所」は、登録者数が約4500人(2020年9月下旬現在)と、まだそれほど多くはありませんが、基本的に1本10分前後の紹介動画を毎日投稿しています。
一方、登録者の多い書籍解説系チャンネルでも動画の更新は多くて週1回程度。動画コンテンツの制作には非常に手間がかかるので、実際に本を読んで紹介する人、動画を編集する人、動画の要約版をTwitterやInstagram、noteなどの関連SNSサイトに投稿する人がチームを組み、私がディレクションを行ってチャンネルを運営しています。
動画の再生回数は、多いもので1万回を超えており、YouTubeに動画を投稿している人なら気になる視聴者維持率は最近4、50%に達しています。たとえば視聴者維持率50%では、10分の動画なら平均視聴時間が5分ということになり、チャンネル運営者が目標とする数値はクリアしていると言えます。
- 経営者目線で話題のビジネス本を解説
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――他のチャンネルにはない強みは何ですか?
私もビジネスを手がけていますし、「ビジネス本研究所」で解説を行っている人物も年商約1億円の会社の経営者。ですから、実際にビジネスを行う中で「この本に書かれているこういう事柄をこう応用してみたら、こんな成果が出ました。したがって、この本のこの部分はこう役立つと思います」といった独自の解釈をお伝えすることができます。
あくまでも大事なポイントを独自の視点で解説し、最終的には「ぜひ本を手に取って下さい」と紹介するのが私たちのスタンス。中には、本の内容がわかってしまうと嫌がられることもあると思いますが、実際に著者様がYouTubeチャンネルやTwitterなどに直々にコメントを下さったり、「いいね!」やリツイートをいただくことも少なくありません。
著者様や出版社様にしてみれば、せっかく良い本を出されてもその本の存在に多くの人が気付いていないとか、中身は素晴らしいにもかかわらず、読者に手に取ってもらうまでに大きなハードルがあるというケースは多々あると思います。
その意味で、あくまでYouTube側およびYouTuberの皆さんに良いコンテンツだと評価をいただきながら、著者様や出版社様にも何かしらの貢献ができる。そのうえで当チャンネルも伸びていくという「三方よし」の関係を築くことを目標にしています。
――「ビジネス本研究所」をどう展開していきますか?
今までは視聴者のターゲットをとくに定めず、多くの方に響くコンテンツ作りを目指していました。ところが、メンタリストDaiGoさんや、「中田敦彦のYouTube大学」を運営しているオリエンタルラジオの中田敦彦さんなどの著名なビジネス系YouTuberが、ご自身のチャンネルでお勧めの本をよく紹介しています。それらの本を読みたいとは思っていても、まだ読めていない人も多いはずなので、今後は著名なビジネス系YouTuberが紹介しているお勧めの本も積極的に解説していきます。
- 自ら実践した経験を伝える起業支援コンサルティング
――岩松さんは主にコンサルティングを手がけています。
中には中小企業の社長さんもいらっしゃいますが、主に個人の方を対象に起業支援コンサルティングを行っています。
コンサルティングのうえで重視しているのは、最初はやはり「稼ぎやすさ」ですね。その意味で、開業コストが低く抑えられ、後述するように自分で価値を作るのではなく、扱うモノ自体に価値がある、インターネットを使った物販ビジネスを推奨しています。国内外から商品を仕入れ、AmazonやYahoo!、楽天などで販売するというスタイルですね。
ゼロから始めて月100万円の利益を出すまでにどんなことをしたか、実際に売ったのはどんな商品か。さらには、年商で1億円を達成するにはどうしたらいいのかなど、私が実践したノウハウやデータをすべて公開しています。
――どんなポリシーで起業支援を行っていますか?
コンサルティングのやり方は人それぞれであり、データをまとめたり理論を語るだけでも十分に価値があるとは思います。ですが、抽象的な理論はわかっても、結局は「では具体的にどうすればいいのか」とか「具体的な商品は何か」ということを、皆が知りたいのです。
ただし(それはあくまで最初の段階であり)、そこにこだわりすぎると、自分で試行錯誤できなくなってしまうのでバランスが大切。コンサルティングとは「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」ものであり、「儲かる商品はこれです」「これを売ったら稼げます」という答えを自ら導き出せるようになっていただくことが重要です。
- 「起業で一番やってはいけないこと」は何か
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――起業したいと思っているビジネスマンにアドバイスしたいことは?
起業にあたり、かなり大雑把に計画を立てている人が多いのではないかと思います。(私は、起業するうえで大切なポイントを)参入分野、学習方法、指導者に分けています。
要は、どんな分野に参入すればいいのか、そのビジネスで成功するために何をどう学び、どんな指導者を選べばいいのかということです。
たとえば参入分野について言えば、私が推奨しているインターネットを使った物販ビジネスというのも、ある意味、消去法で導き出したものです。
まずはオフラインかオンラインか。初期費用やレバレッジ、つまりどの程度のリスクでどれだけのリターンが得られるかという意味でも、オンライン、ネットのほうがいいと私は思いますし、その根拠も説明できます。
また、ひとくちにビジネスと言ってもさまざまなものがありますが、物販にはモノ自体に価値があります。逆にたとえばセミナーを行うと言っても、お客様に「この人の話を聞きたい」と思えるような価値を感じていただけないと売れません。
でも物販であれば、私が売ろうが誰が売ろうが、お客様が集まるところに商品を出せば、ある程度は売れるでしょう。その意味で私は、初心者の方はまず商品自体に価値があるモノを売ったほうがいいと思います。
さらに言えば、その物販の中でも稼ぎやすいものと稼ぎにくいものがあることに注意しなければなりません。たとえばパソコンのような「型番商品」は、消費者が価格比較サイトなどで値段が安い店舗を検索できるため売りづらく、既存の家電量販店などが苦戦しています。
その一方で、たとえばアパレル製品は消費者が型番を見て買うことがなく、シャツ一枚を取ってもアイテムが膨大にあり、ネットで検索して値段を比較することが、まずできません。
じつはこうした値段がわからない商品ほど利益を出しやすいのですが、このように1つひとつ理詰めで考えていく作業を行っていないため、ビジネスがうまくいっていない人が多いのではないかと思います。
――今後の展望は?
今までは、代表である私が1人でコンサルティングを行いつつ、自社でさまざまなビジネスを「実験」し、その経験やノウハウをお伝えしてきました。ところが最近、私のコンサルティングの受講者(コンサル生)の方が「実験」に加わったり、セミナー等で教えるという体制への移行が進んでいます。今後、会社として、チームとして、何か新しいことに取り組んでいければと考えています。
実際、お金を稼ぐのも大事ですが、やはり今は「ビジネス本研究所」にしろSNSにしろ、チャンネル登録者数やフォロワー数を増やし、発信力や影響力を高めることが大事です。
起業支援コンサルティングについても、今までは「まず稼ぎやすいビジネスから始めましょう」という方針でしたが、自分が好きなものや情熱が持てるものを形にしていけるほうが、本人にとっても楽しいでしょう。
あくまで稼ぎやすい分野という意味で、インターネットを使った物販ビジネスから始めるのは良いと思いますが、自分が好きなことや本当にやりたいことをやらないと「突き抜ける」ことはできないのかもしれません。
起業してビジネスを継続していくことは、かなりハードでシビアな仕事なので、ビジネスについて理詰めで語れるようになったうえで、自分の好きな分野に参入して成果を出す人が増えてくれれば嬉しいですね。
「ビジネス本研究所」と同じように書籍ビジネスをやるということではなく、そのビジネススキームを置き換えて「自分だったらペットビジネスをやろう」とか、ライバルのリサーチを見て「こういうマーケットが空いているから、そこに参入しよう」と自ら考え実行できる。あるいは、値段のよく分からない商品を売るのが儲かるのであれば、それを違う分野に置き換えこう活かしていこう、というように、ビジネスマンとして自立し、自走していける人が増えていくことを願っています。
「取材・構成 加賀谷貢樹」
岩松 勇人(いわまつ・はやと)
1986年、大阪府茨木市生まれ。2010年5月、会社を退職し、個人事業主として物販ビジネスを開始。2011年6月、700人規模のオンラインセミナー「物販セミナー」にゲストとして出演。2012年8月、 東京ビックサイトで行われた1,000人規模のセミナー「物販ビジネス大サミット2012」に講師として出演。2013年6月、株式会社NICを設立し、代表に就任。2016年6月 、漫画「起業で一番やっちゃダメなこと」第1巻をリリース。2018年6月、「起業で一番やっちゃダメなこと」が累計10万部(ダウンロード)を突破。