株式会社セールスの学校 代表取締役 浅井隆志氏

公開日:2018年12月4日

仕事のやりがいと喜びを見出す社会人のための学校

御社のサービス内容について教えて下さい。
社員研修とコンサルティングがあります。社員研修には新入社員研修、リーダー育成研修、管理職育成研修、営業力強化研修、人事労務エキスパート研修などがあり、いずれも合同型で1人からでも参加が可能。
コンサルティングについては新卒採用コンサルティング、育成計画コンサルティング、評価制度コンサルティングと、人材育成の入口から出口までに対応しているほか、顧客企業の根本課題を分析し、対処療法ではなく、問題の本質や根本的な原因に対処する課題解決コンサルティングも行っています。
営業マン時代の体験が「セールスの学校」のルーツになっていますね。
もともと私は営業マンで、営業で売れないという経験をしました。そこで自分なりに勉強して営業理論を構築し成果を上げてきた経験があったので、営業のトレーニング会社を作ろうと思ったのです。
大企業なら社員教育も充実していると思いますが、私が入社した中小の住宅会社には、教育がまったくありませんでした。
私の実家は家業が建具屋で、私は職人を辞めて社会に出たので、名刺の渡し方すら知りませんでした。会社で上司に「名刺はどう渡したらいいのですか」と聞いたら「知るか」と冷たくあしらわれました。
それでも、見よう見まねで一所懸命に電話営業を行ったところ、アポイントが取れたので、上司に報告したら「お客様のところに行ってこい」とひと言。何を話していいのかわからず、苦し紛れに会社の説明だけをして訪問を終え、会社に帰ったら帰ったで、「じゃあお前、設計図を描いてみろ」と言う。
図面など描いたことがなかったので、インターネットでいろいろな会社の間取りのプランなどを見ながら作業していましたが、ほかの人は何をしているのか、どうやって売っているのかと思って隣を見ると、机の上を隠されるような会社でした。
にもかかわらず、なんとか自力で少し売れるようになったのですが、正直言って気合い・根性で売れた部分があったのも事実です。
そのあとヘッドハンティングで富裕層向けの住宅会社に転職しましたが、そこでは気合い・根性ではまったく売れませんでした。これはなんとかしなければならないと思い、外部のセミナーにも足を運んだりして、そもそも営業とは何をする仕事なのかということを勉強しようと思ったのです。ところが、それを的確に教えてくれるところがなかったので、自分なりにコミュニケーションや心理学、プレゼンテーションを勉強したり、スキルを磨きながら、自分なりの営業理論を構築しました。
その結果、良い成果が出せるようになってポジションも徐々に上がり、部下の面倒を見ながら自分のやったことを教えるようになりました。いわゆるOJTを行ったわけですが、現場での指導などをするなかで営業統括に就任し、会社を運営する立場になったのです。
起業の経緯を聞かせて下さい。
1人の営業マンが幸せにできるのは年間10世帯のお客様で、営業統括として幸せにできるのは年間100世帯のお客様。もし私がコンサルタントとして、さまざまな企業にノウハウを提供するようになれば、幸せにできるお客様が百倍にも千倍にもなると思い、起業を志すようになりました。
会社の運営やマーケティングに加え、ホームページやチラシ、新聞折り込みをどうすればいいのかということも一通り経験したので、当初は営業戦略コンサルタントとして起業し、個人向けにコミュニケーションの方法や文章の書き方、チラシの作り方などを教える勉強会を開きました。
その後、厳しいコンペに勝ち抜き、大手通信会社の代理店の営業マン向けの研修に採用されたことから、自分の営業コンテンツにはニーズがあり、多くの営業マンに喜んでいただけるということに気付いたのです。
私自身が営業で悩んでいた時期が非常に長かったので、営業で思うように成果が出せない人のための学校を作りたいと思ったのがちょうどその頃で、創業後約10カ月が経っていました。
当時、ある知り合いと一緒に飲んでいた時、浅井さんは将来何をやりたいの?」と言われたので「営業マンが頑張れるようなセールスの学校のようなものを作りたい」と答えたのですが、この言葉が現在の社名になりました。
それから間もなく著書の『“検討します”を言わせない営業術』(PHP研究所)も出版され、同書をきっかけにして全国の商工会議所から講演やセミナーの依頼が舞い込むようになり、さらにそのセミナーや講演に参加した企業から営業研修の依頼を受けるようになったのです。
「セールスの学校」にはどんな特徴がありますか?
当社の研修を気に入っていただいているお客様は、おそらく現場感を非常に好まれているのではないかと思います。
当社は研修会社ですが、「セールスの学校」は机に座ってカリカリ勉強する研修ではなく、トレーニングを主体にしています。たとえば、当社の新入社員研修では机を使いません。参加者に4人や5人のチームを作らせてディスカッションやワーク、プレゼン、フィードバックをやらせたりしています。当社のトレーニングでは、あるテーマについて、どこが悪かったのか、どうすべきだったのかということを、ケーススタディで学ぶことがかなり多いですね。
また、研修に1名から参加できる合同型研修の仕組みも、お客様の評価が高いポイントです。
正直な話、たとえば新入社員が数名程度の中小企業が新人研修で研修会社を呼ぶことは、コスト的にも非常に難しく、そのため中小企業の従業員が教育の機会に恵まれないことは多々あります。
まさに私がそうだったのですが、1人から参加できる1日のセミナーや2日間セミナー、合宿研修はあっても、定期的に通い、体系立てて勉強できる場がありませんでした。そこで採用人数や受講者が少なくても、大企業に勝るとも劣らない、きちんとした教育が受けられる機会を提供したいと思い、6カ月で全11回(毎月2回×5カ月、最後の1カ月は1回開催)、1人からでも参加できる合同型研修という仕組みを整えたのです。
合同型の新入社員研修にはどんなメリットがありますか?
1名から参加できるということは、さまざまな会社の従業員と一緒に学ぶことができることを意味します。育成担当者のなかには「『隣の芝』が青く見えたらどうしよう」とか「それが原因で辞められたら困る」と思う人もいるかもしれません。
実際、新卒生は他の会社を知らない状態で入社するので、社会の厳しさや不条理を「会社がおかしい」と錯覚してしまうのです。だから会社を変えれば問題は解決するという発想になりがちで、転職したり早期に離職する若手が増えてしまうのです。
ところが、いざ蓋を開けてみると状況はまったく逆で、他社の話を聞いて「隣の芝」はけっして青くないということに気付くので、当社の合同型の新入社員研修に参加していただくと、若手の定着状況が大きく改善されるようになります。
もう1つ、さまざまな企業の若手従業員が定期的に集まって学ぶことに、リフレッシュ効果もあると思います。実際、合同研修も3回、4回、5回と進んでいくうちに、誰がどの会社の社員かわからなくなるぐらい、皆が仲良くなります。
研修を終えた新人たちを、私たちは卒業生と呼んでおり、たまに卒業生が人事担当者になって挨拶に来てくれたりするのですが、「新入社員研修で仲良くなったメンバーで、いまだに定期的に飲んでいます」という話を聞くことがあります。合同型の研修が、彼らの将来の人脈形成の場にもなっているようで、とても嬉しいですね。
その意味で「セールスの学校」は「社会人の学校」であり、社会人が通う、ビジネスを学ぶ勉強の場だと思います。
当社の新入社員研修は、全国で約2000名が受講しており、これまでに参加いただいた約440社の育成担当者の満足度が97%に達し、新入社員離職率2.47%を実現しています。(受講企業平均)
リーダー育成研修で学ぶのはどんなことですか?
中堅社員を育てるリーダー育成研修では、まだ受講者が1人前になっていないことを想定し、仕事の完結力に加えて、後輩を指導する立場の人間としての基本的な役割を学びます。
また、部門間や上下間の橋渡し役として、さまざまな意見を集約しゴールに導くファシリテーションスキル(合意形成力)を演習形式で学習。
合意形成力とは、争点と論点を整理していく力で、たとえばお客様の言い分とこちら側の言い分が異なる場合、どう折り合いをつけるかということです。
実際、私は「この金額で買って下さい」とお願いしているのに、お客様は「安くして下さい」の一点張りで、お互いに言い分が違うことが多々あります。その場合、気合い・根性ではなくコミュニケーションとして、どうやって合意に導くかについて、私は営業マン時代にとても悩みました。
一方、社内をみても、「○日までに工事を終わらせてほしい」という営業部の要望に対し、工事部が「そんな短い時間でできるわけがない」と異を唱えることもしょっちゅうです。営業マンは、こうした部門間の言い分の違いも調整しなければなりません。
私は経営者にとっても、こうした合意形成力は非常に重要だと思います。たとえば企業経営において、顧客満足度と利益率、社員満足度と生産性など、互いに矛盾する要素は枚挙にいとまがありません。それらについて、落としどころをどう見出すかが、リーダーにとって非常に大事な力。それは部門間調整だけでなく、部下や後輩指導についても同じことが言えるのです。
たとえば、自分の後輩や部下がやりたいことと、会社の方向性とのベクトルをどう合わせてあげられるのか。「たしかに君はこの仕事をしたくないかもしれないが、この経験は将来的にこう役立つから、今は遠回りに見えても、やっておいたほうがいい」とアドバイスし、働く意義を与えることは、リーダーや管理職にとって非常に大事な仕事だと思いますね。
管理職育成研修で大切にしていることは何ですか?
私がサラリーマン時代に、マネージャーになった時に悩み、自分なりに勉強して実践したことを体系化したものが、今の管理職育成研修です。
私は、人材教育において欠かせないものの1つが、ゴール設定だと考えています。ゴールが設定されれば、そこに近づくためのプロセスが生じるのです。
人材開発の分野において、ゴールとは、キャリアプランやキャリアビジョン、キャリアマップを指しますし、同様に、企業経営における最終的なゴールは皆が「目指すべき姿」や「あるべき姿」、「ありたい姿」を言葉で表した企業理念ということになるでしょう。
たとえば新人教育において、新入社員が入社してきた時に「会社としては、君は1年後にこうなってほしいんだ」という、期待を込めた1年後のゴールがあれば、それを見据えて何をすべきかというプロセスが見えてくるのです。
そこで私が言いたいのは、「1年後に予算をいくら達成するのか」ということより、むしろ皆が1年後や3年後、5年後などに「なりたい姿」や「ありたい姿」というような、従業員のモチベーションが高まる良いゴールが会社としてあるべきだということです。
ですから、まずは会社として自分たちはどうあるべきか、どういう人間が必要なのか、社員にどうなってほしいのか、という軸をきちんと定めたうえで、OJTを行ったりOFF―JTを実施するのでなければ、教育には意味がありません。
その点でも管理職にとって大切なのは、部下の指導ももちろんですが、会社としての軸をいかに作り、ゴールを設定するかということです。
ただし、研修で会社全体のゴールを設定することは難しいので、自分がリーダーを務めているチームでゴールをどう設定し、チームのメンバーである部下たちにどうなってほしいのかをまず考える、ということが当社の管理職育成研修の特徴です。
具体的には、メンバー全員に対して一律の評価をするのではなく、1年後にA君にはこうなってほしい、B君にはこうなってほしい、C君にはこうなってほしいというように、1人ひとりにどうなってほしいのか、それぞれに期待することは何かを考えることが大切。そしてそのうえで、考課のポイントをどこに持ってくるのか、指導の際のポイントは何で、どんなことを積極的にやらせるべきか、ということを研修期間中に考えてもらうわけです。
管理職育成研修は全6回行われ、2週間に1回研修で学んでいただいたうえで現場に戻り、また研修に参加していただくというように、一定のインターバルを置きながら研修で学び、学んだことを宿題として現場で実践していただくところがポイントです。
コンサルティングサービスの特色は?
たとえば新卒採用コンサルティングでは、採用の円滑化や採用ブランディングを含めて最適な採用施策を提案するほか、「独自の母集団」から顧客先にマッチする人材の紹介も行っています。
「独自の母集団」とは、現役東大生が運営しているビジネススクールで、身銭を切って勉強している意識の高い学生たちが通っています。当社はそのビジネススクールを支援しており、有料職業紹介事業の免許も保有しているので、そこに通っている学生たちの就職斡旋も行っているわけです。
また育成計画コンサルティングでは、先に管理職育成研修について触れた、会社のゴール設定とプロセス設定の部分を当社が代行させていただいています。
多くの場合、私自身がコンサルティングに入り、顧客企業の各階層ごとに会議体を設けてそれぞれのゴールを作り、社内でコンセンサスを築きながら全社的なゴールを設定。それに基づき人材を育成していくための計画を作り込み、提案を行います。
もう1つが評価制度コンサルティング。育成計画ができあがると、アウトプットとしての実績をどう評価していくかということにつながるので、新たな育成計画に応じた評価制度を提案しています。ある従業員を評価する際、評価者によって評価の甘さや厳しさに差がありすぎるとか、あるリーダーの評価は相対的に得点が低すぎるということをAI(人工知能)で調整しているのが1つの特徴です。
どんな思いで人材教育に取り組んでいますか?
たとえば、当社の新入社員研修では「自社理解」を非常に掘り下げて実施しています。なぜ自社理解を重視しているのかというと、私が住宅会社の営業マンになりたての頃、会社の方向性などにはまったく興味がなかったからです。企業理念を唱和させられていたので覚えてはいますが、記憶と理解は違います。企業理念を記憶しているだけで理解はしておらず、それが自分の人生にどう影響するかということなど、まったく考えていませんでした。ただ、たくさん売ってたくさん歩合をもらい、将来はベンツに乗りたい、ということぐらいしか考えていなかったのです。
ところがその頃、私は母の死に直面し「今の自分は一所懸命に生きていない」、「自分の人生ともっと真剣に向き合わなければならない」と思ったことで、考え方が大きく変わりました。
営業の仕事についても、自分なりに試行錯誤を重ね、それがうまくいった時に達成感や充実感を味わい、お金とは別のところに仕事の喜びがあることを、ようやく理解できたのです。それは、私がちょうど30歳の頃でしたが、そういうことが理解できた時、私は仕事の充実感が人生の充実感そのものではないかと思うようになりました。
実際、仕事は大変なことばかりで、極論すれば「楽しい仕事」は、この世の中にはないのかもしれません。ところが、そうしたなかでも、私たちは仕事を楽しむことができるようにはなれると思うのです。
私は「1日のうちの3分の1に値する仕事がつまらないものであれば、人生の3分の1がつまらないものであると言っても過言ではない」と、毎回研修で話します。
私たちが1日8時間働くとして、寝る時間を除けば、起きている時間の少なくとも半分は仕事です。その仕事がつまらなければ人生はつまらないものでしかありませんが、仕事にやりがいや充実感があれば、人生に「張り」が生まれると思うのです。
私には日本を変えたいという壮大な夢やビジョンはありませんが、私たちの研修を通じて、「仕事は楽しい」とか「やりがいがある」と言ってくれる人が1人でも増えれたら、それはとても素敵なことだと思います。
インタビュー:ジャーナリスト 加賀谷貢樹

1976年、東京生まれ。
高卒で建具職人から住宅会社の営業マンに転身。
売れない営業マン時代を長く過ごすが、独学で自身の営業理論を築き上げ、業界でもダントツの業績を達成する。管理職として組織構築や人材育成に携わり、営業の超効率化を推進し、在籍していた会社を業界のトップリーダーに育て上げた。
マーケティングや事業戦略にも精通し、33歳で起業。現在は4法人1団体を経営し、グループ合計で従業員は73名にのぼる。なかでも「セールスの学校」の躍進は目覚ましく、新人教育分野で研修の開催数が国内トップレベルに躍進。精力的に全国を飛び回り、講演活動や研修講師として活躍を続けている。

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