一般社団法人ワークスデザイン 代表 森田次郎氏

公開日:2018年11月20日

中小企業のファンづくりとコミュニティづくりに貢献するフリーランス集団

どんな事業を手がけていますか?
当初は、在宅ワーカーが作成したテキストデータを、Web制作会社やSEO業者に提供していました。この事業は今でも継続して行っています。
今おもに手がけているのはWebコンサルティングで、私の役目は営業・コンサルタント。マーケティングを業務委託で請け負い、お客様がどんな選択をするのがベストなのかをご提案しています。
その1つがWebだけでなくリアルイベントなどの仕掛けとSNSの活用である。ホームページは必要ないとか無駄に予算を使わず経営者自身にSNS運用をお勧めする場合もあります。
そのうえで、餅は餅屋で、それぞれの分野に強いフリーランスに作業を依頼したりしています。
一方、私は基本的に自転車で移動し、Webデザイナーやティレクターを始め、多種多様な職種のフリーランスに直に会っています。そこで私は、「自分はこういう企画営業したり、経営者や担当者の課題を聞きに行き、ソリューションを提案しています。もし、新たなプロジェクトでWeb制作をする場合、一緒にチームを組んでサービスを構築していきませんか」と呼びかけているわけです。
現在、当社のネットワークにはフリーランスのWebディレクターが5人おり、在宅で仕事をしているライターやデザイナーに加え、その他のメンバーを合わせて、約40名で仕事をしています。ワークスデザインはフリーランス集団と言ったらわかりやすいと思います。
最近はどんな事業に力を入れていますか?
今後、さまざまなWebサービスが出てくると思いますが、マーケティングを行ううえで、Web以外の要素も非常に大切です。そこで今、顧客先に対するマーケティング提案の一環として、リアルのコミュニティでイベントを行ったりして、ファンを獲得していこうという試みを進めています。
昔は、テレビや新聞などのマスメディアに広告を出せば、多くの人が自社の商品やサービスを認知してくれたものですが、今は若者たちにとってはスマートフォンが一番の情報ツールになり、新聞もあまり読まれなくなりました。加えて最近では個々人が多種多様な行動をし始めているので、マーケティングも一筋縄ではいかなくなっているのが現状です。
ですから今はある意味で、お客様にも動いてもらう時代になっていて、たとえばあるパン屋さんのファンたちに「ここのお店のパンはおいしい」と言ってもらうといった口コミを促すような取り組みが必要になっているのです。
実際、社外にファンを作り、そのファンたちに能動的にブランド作りに参画してもらえるようなコミュニティを形成することが、最近流行っています。
たとえば、軽井沢のクラフトビール「よなよなエール」の醸造を手がけるヤッホーブルーイングでは、ファンを集めて年1回、「よなよなエールの超宴」というSNS映えするイベントを実施。またファンには時々オリジナルグッズを届けたりして大切にしています。ファン自らが広告塔になってくれるわけですから。
ところが、こういう取り組みは、中小企業でも大企業でもあまり進んでいません。
ファン作りを目的としたコミュニティマーケティングがあまり進んでいないのはなぜですか?
やはり、イベントを頻繁に開催したり、ファンとのコミュニケーションを密にしなければならないので、非常に手がかかるからではないでしょうか。
実際、これまで多くの企業は、広告やSEO対策はしていたものの、お客様とのコミュニケーションを深化させることがなかなかできていませんでした。そのため、お客様がどんな人たちで、どうすれば気持ちが良くなり、喜んでくれるのかということが、あまり見えていなかったのではないかと思います。
とくに店舗ビジネスでは、現場で働く末端の従業員たちが、お客様とのコミュニケーションを一手に引き受けているにもかかわらず、基本的に施策を考えるのはチェーン本部などの管理担当者。そのため現場の温度感や、現場担当者たちが店舗運営のうえで大事だと考えていることがなかなか伝わらないのです。
ところが、新聞広告や電車広告、あるいはリスティング広告といった既存の広告の枠組みから離れ、自社コミュニティを1から作り上げることには時間もかかりますし、泥臭い部分に大きな労力がかかるので、なかなか一歩を踏み出せません。
とくに大企業の担当者にしてみれば、自ら提案したプロジェクトが認められると、自分が担当しなければならなくなるという組織人の宿命があるので、なかなか新しいことにチャレンジできないという面もあります。
だからこそ、中小企業にとってチャンスだと思うのです。
森田さんが手がけた事例にはどんなものがありますか?
たとえば、デジタルカメラで撮影した写真データでオリジナルアルバムを作る「フォトブック」サービスを提供している大手企業と、マーケティングプロジェクトを進めています。
同社はこれまでWebやパンフレットで集客を行ってきましたが、末端とのコミュニケーションを向上させ、フランチャイズ店舗の現場の声や問題意識を吸い上げたいという要望がありました。そこで、まずはモデル店舗を1店立ち上げ、成功事例を作るというプロジェクトを進めています。
また、ある中小の個店向けに、地域のママさんコミュニティがよく集まる場所でイベントを企画・開催しました。というのも、民間企業は意外と、地域のNPOや地域で積極的に活動している人たちにアクセスしていないことが多いからです。地域には自社のファンになり、熱心に口コミをしてくれる可能性を持つママさんたちが数多くいます。
具体的にマーケティングをどう進めていますか?
先の「フォトブック」を販売している企業のケースでは、まずは店舗の従業員を活性化しようということになりました。
そのためには、店舗の従業員が能動的にフェイスブックを利用するとか、現場の心温まるストーリーやお客様からの「ありがとう」のメッセージを発信していくことが重要で、その一環としてキュレーションメディアを作ることを提案。
キュレーションメディアはお客様とのコミュニケーションの場です。マスキングテープのかわいい貼り方といったオリジナル「フォトブック」の上手な作り方なども紹介しながら、「このお店は、たんに店舗を訪れて写真データを『フォトブック』にするだけでなく、自分だけのオリジナル『フォトブック』を作る方法も教えてくれるし、こんな心温まるストーリーもあるんだな。だったら、他社のチェーン店ではなく、この店に行こう」という流れを作ることを目的にしています。
次のフェーズは、人材を育てつつ、最初の店舗で取り組んだことを他の店舗に伝播させていくことです。
消費者の心の変化や時代の変化の中で、ファンの心情や行動にも必ず変化が生じます。そうしたファンの変化にキャッチアップする人が店舗や会社にいることが重要で、人を育てなければ駄目なのです。
人材育成を進めるうえで、従業員にすぐに辞められてしまっては困ります。それゆえ、アルバイト従業員であっても、仕事が「自分事」にならなければいけません。
「あと2時間で仕事から抜けられる」という後ろ向きのマインドではなく、「私が開拓したお客様たちのコミュニティが今日ワークショップをやってくれたお陰で売上が上がった」とか「今日いらっしゃった年輩のお客様が『こんなハートフルなお店、なかなかないわよ。ありがとう』って言われた。嬉しい。また明日も頑張って仕事をしよう」。あるいは「私のやっていることが、お金ではなく、お客様のためになっているんだ」という仕事のやり甲斐を創出し、それを社内外に広く伝えていくというところまでやらなければならないと思います。
コミュニティマーケティングはどう進化していますか?
「ホリエモン」こと堀江貴文さんや、お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さんが会員制のオンラインサロンを運営していますが、非常にうまいやり方だと思います。
両者ともにカリスマ型のコミュニティと言えるものですが、会員になれば、堀江さんや西野さんと一緒に仕事ができるという建て付けになっています。
お客様ではなく、コミュニティの主催者側に入って作品作りなどに主体的に参画できることが大きな特徴。つまり、コミュニティを主催する企業や団体、人がやろうとしていることに積極的に参加してくれるファンたちを開拓できる可能性があるということです。
たとえば、自社商品やサービスのファンであるママさんたちなら、商品開発への協力も期待できます。従来はこうしたことは外注していたと思いますし、かつて、さまざまな企業がネットで消費者の意見を聞いて商品開発に活かそうとしましたが、その多くの試みが失敗しました。
その理由はおそらく、消費者やユーザーがメーカーに対して意見を述べたりすることが「自分事」になっていなかったからでしょう。単なる「お仕事」だと思っているから、「どう思う」と聞かれたら「こう思う」と答えるだけなのです。
もし自分の好きなメーカーのお気に入りの商品なら、自発的に宣伝もするでしょうし、「私は商品作りにこんな協力をしたんだよ」ということをフェイスブックなどに投稿したくもなるでしょう。そのように、自分が愛着を持つ商品やサービスを、自ら口コミで広く宣伝してくれるファンが数多くいることが、企業にとって強みになるのです。
企業と顧客のコミュニケーションが大きく変わろうとしている今、中小企業にとって大切なことは何ですか?
自社のビジョンが非常に大事になると思います。お金儲け一辺倒とか、自分たちの思いが弱い、あるいはビジョンから離れた事業を行っている企業には、おそらくファンが集まるコミュニティは成立しません。
マーケティングにおいてコミュニティが重要になっているということは、逆に言えば、企業が誰に何を届けたいのかという、ビジネスの根幹に関わるビジョンがより大事になっているということを意味します。
その意味で、こうしたコミュニティ作りとファン作りを通じて、「もしかしたら、自分の魂がビジョンから離れ始めていたのかもしれない」と、経営者に気付いていただくことが大事だと私は思います。
実際、自社が提供する商品やサービスで喜んでいる人の姿を、経営者なら見たいと必ず思うはず。今も昔と同様に「お客様は神様」だと私は思いますが、商品やサービスが普及していくにつれて、経営者が現場に足を運ぶ回数が減っていくのはよくあることです。その意味で、有能な経営者ほど現場に通い、自社の商品やサービスのどんなところを気に入っているのかを聞きたがっていると私は思うのです。
ワークスデザインの信条、ポリシーは何ですか?
まさに「そういうことを一緒にやりませんか」と提案することが、ワークスデザインのサービスです。当社にはさまざまな専門分野で優れた技能を持つフリーランスの仲間が多数います。
たとえば、日本古来の工芸品をリブランディングして販売していることで有名な中川政七商店の元店舗デザイナーに加え、リクルートや電通、博報堂などでマーケティングに携わっていたフリーランスなどに仲間がいるので、面白い商品開発の提案もできると思います。
また昨今、マーケティングと言えば「SNSを上手に使って売上○倍」というように、テクニカルな部分ばかりが強調されますが、本質は、経営者がお客様に自社のビジョンを明確に伝え、そのビジョンに沿って企業がお客様とコミュニケーションを行い、ファンが集まるコミュニティを作ってマーケティングに活かしていく、というところにあるのではないでしょうか。
その一方で、お客様に日々向き合う店舗の従業員のモチベーションを向上させていくことも不可欠です。
個人の時代とも言われる今、さまざまな分野で優れた技能を持つフリーランスが数多くいます。彼らと一緒に良い仕事をしていくことが、ワークスデザインの手がける事業の根本だと私は考えています。
最後に、当社では現在地方創生事業としてさまざまな自治体とプロジェクトを進めております。「どうしたら地方の活性化に関われるのか」などご興味のある方は、ぜひご連絡ください。
https://www.facebook.com/jiro.morita ※メッセージ付きで上記facebookにご連絡ください。
インタビュー:ジャーナリスト 加賀谷貢樹

1980年東京生まれ、東京理科大卒。
大学時代より地域振興調査研究およびプロデュース事業に参画。靴下の企画営業、Webコンサルタントを従事した後、2014年フリーランスとして独立。
2015年一般社団法人ワークスデザインを設立し、マーケティングの課題解決プロジェクトを、さまざまなフリーランスとチームを組んで進めている。
同年一般社団法人エデュケーション・コミュニティを設立。幼稚園の放課後に行う体験型教育プログラム教室「ふれあい教室」や子ども向けマルチスポーツ教室「バルシューレ三鷹」を運営する。
2017年より地方創生関連事業として長野県信濃町にて関係人口創出の企画運営を進めている。(現在までに計7回プログラムを実施)
2018年9月より、総務省資源エネルギー庁「原子力発電施設等立地地域基盤整備事業」『地域のちからプロジェクト』をジェイアール東日本企画の専門プロデューサーとして福井県おおい町の町おこしプロジェクトに参画中。
また、ウェイビーと連携して千葉県銚子市にて企業・起業家誘致推進事業(10月より正式に委託事業)を推進中。

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