インタビュー情報

【コロナ後の世界どう変わる?】

産学連携情報

地域活性学会会長・信州大学特任教授・京都芸術大学客員教授 中嶋聞多先生   

【コロナ後の世界どう変わる?】
いつ終わるのかわからない新型コロナウイルスの流行。この先行きのみえないコロナ禍でどのように見通しをつけたらよいのか、気持ちを前向きにしていけばよいのか、そのヒントとなるようなことを様々な専門家に伺っています。

【コロナ後の世界どう変わる?】

今回は地域活性学会会長であり信州大学特任教授、京都芸術大学客員教授など精力的に活動している中嶋聞多先生にお話をうかがいました。

―まずはご専門分野を教えてくださいー
『情報学です。簡単に言うとアイデアの創出。課題の発見と解決法、ソリューションを生み出す理論や方法について研究しています。信州大学に着任当初、まじめに黒板に向かって教えていたのですが、なんだか虚しくなってしまって笑。そんな時、長野県松本市から街の活性化についての講演依頼があったのです。でも、名もない助教授(当時)が講演したって人は集まらないだろうと。そのかわりに、中心市街地の活性化について、住民やステークホルダーや学生たちと楽しく考えられる場づくりを提案しました。そうしましたら、大変好評いただいたんです。そこから、学生たちを中心とする地域活性を支援するNPOもできていったり、近隣の自治体からも依頼がくるようになったりと広がりをみせました。』

―コロナ禍の今、大学の授業の変化は?―
『オンライン授業なのですが、正直、苦戦しています。そもそも2次元の学生相手では、表情もみえないし、多くの場合、名前しか見えない中で授業をする。話をしていてもこっちも反応がみえないから乗れない、冗談もいえない、淡々とやるしかないので学生も面白くないでしょうね。なるべく当てて発言させるようにはしていますが、難しいです。

コロナ前は、授業のあとに残れる人は残ってもらい飲み食いしながらひざをつきあわせて話す、というようなことをしていました。そこで実際の地域での裏話ですね、実はこんなことがあったんだよっていう現実の話をする。そこでの話が実は学生にとって一番大切だったりするんですよね。でも、それが、今の新しい生活様式には禁じ手になっていますから、大変虚しいです。』

―確かに地域活性となると実際に外に出て体験していくことが学びにつながりますからオンラインは厳しいですねー
『はい、私がこれまで積み重ねてきた教育法が通用しない世界になってきてはいますね。でも、オンラインにはメリットもあります。知っている間柄であれば距離が離れていても、その人と培ってきた時間がありますからちゃんとコミュニケーションが取れます。アフターコロナになっても、オンライン会議はビジネスに不可欠な存在になっていくでしょうね。』

―先生のご専門を踏まえコロナ後はどのような展開を考えていますかー
『今、人生の第4コーナーを回って、一番やりたいことは次世代の人材育成です。学生や学会の若い先生たちを自分の子供だと思って大切に育てていきたいです。未来を作っていくのは彼らですからね、彼らをどう育てていくかが私の最後の大仕事です
また、シニアの逆襲といいますか、私の知識や経験はまだまだ使えると思っていますので、そこにも力を入れていきたいです。よく私は“なつかしい未来”という言葉を使うのですが、その土地には固有の歴史や文化がありますよね。「場の記憶」という言い方がありますが、そこで蓄積されてきたものから未来を創り出すという考え方。なつかしさって色々ありますが、その地域で取り組んできたことを尊重しながら形をかえて未来に向けて地域をデザインしていけたらと考えています。』

―地域活性にデザインですか?―
『私は21世紀はデザインの時代だと考えていて、地方創生・地域活性とかけ離れた分野と思うかもしれないけど、地域がデザイン力を持つということがすごく大事だと気づきました。今、デザイナーとかクリエーターといわれる人たちは東京に集中しているけれど、そうではなくて地域に住んで、地域のために一肌脱いでくれるという人があらわれると地方創生はグーンと進むんじゃないかなと。デザインは付加価値をつくれますから。
長野県出身で建築家の北川原温先生とあるプロジェクトがきっかけでお付き合いが始まったのですが、本当に""ミライ""をみせる力が凄いんです。私たちは何かをプレゼンするときは、パワポなどを使って説明するのが精々なのですが、先生は立体モデルを作ってこられます。実物模型が目の前にあると誰でもアイデアが湧いて何か言いたくなる。このような状況は正直、オンラインではなかなか生まれません。
“アート”というと敷居が高いイメージがあります。でも、“デザイン”は“アート”と“ビジネス”の間にあって、ちゃんとマーケットを見て考えないといけない。本当にいいデザインって機能もいいんですよね。そう考えますと企業のみならず地域にとってもデザインはたいへん大切なものだといえますね。』

―先生は事業構想大学でも教鞭をとられていましたからビジネスに対しての知識も深いですよね―
『そういわれるとお恥ずかしいですが、2014年に事業構想大学院大学研究科長、そして副学長を歴任しました。私は、ビジネスを学びたいという学生たちには“事業”をやれと伝えています。近江商人の三方よしってあるでしょ。「売り手よし、買い手よし、世間よし」 私はこれを逆順にして「世間よし、買い手よし、売り手よし」と教えています。その事業は何よりまず社会のためになるか、次にお客様も喜んでくださるか、そして最後に自分にもかえってくるもの(必ずしもマネーだけではない)があるか問えと。これが私のいう“事業”です。

そして、どうせ事業をやるなら大事(おおごと)にしろとも言っています。精緻なビジネスプランも大切ですが、その前にビジネスモデル自体をしっかり組み立てる必要があります。その際、コト(事)を大きくして社会的意義を前面にたてつつ、公を巻き込んでいくのがよいと思います。その社会的意義をアピールするとき、学生たちには市の議会でプレゼンテーションするつもりでと伝えています。
さらに、こうした事業の核となるアイデアをうみだすのはI3(トリプル・アイと読みます)です。発想(Ideation)、着想(Inspiration)、想像(Imagination)ですね。しかもこの順番にアイデアの質が上がるというのが私の仮説。むりやりひねり出したアイデアより、リラックスしている時にふっと浮かんだものの方が優れていると思っています。そして最も良いアイデアは、実現した姿が生き生きと目に浮かぶんですね。コロナ禍でステイホームの今こそ、着想や想像でアイデアを生み出し、新たな事業に仕立てる絶好の機会ではないでしょうか。』

―たとえばどういった方法で気分転換をしているのですかー
『少しでも体動かすことです。身体知の活用といったところでしょうか。人間、動かないとどんどん内向的になってしまうので、散歩したりちょっとでも動くこと。そうすると気持ちがポジティブになってきます。あとは対話かな。私は“聞多”という名前だけに人の話を聞くのが好きですからね。人と対面してお話をしているうちに元気なってくる気がします。』

―最後に大学教授として今後、注目していることは?―

『アフターコロナでの新しい生活様式を考えますと“家政学“が重要な役目を果たすような気がします。
家庭での生活や環境そして社会との関わりとか。私たちはこれまでのようにマクロな環境ばかりではなく、身の回りや内なる環境にもっと目を向けるべきだと思います。
今後はそういった幅広い視野をもつ若者たちを育てていきたいですし、それが私の今後の生きがいですね。』

■中嶋聞多
・地域活性学会会長、信州大学特任教授、京都芸術大学客員教授
・専門は情報学、民族学、地域活性学など

【主な著書・論文】
『飛耳長目〜信州の成功企業を読み解く〜』など、著書・論文多数。
『月刊 事業構想』での「地方創生の発着想」の連載実績あり。

【お問い合わせ】

さらに詳しい内容は、一般社団法人産学連携推進協会へお問い合わせください。

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