大学の研究シーズ情報

【食】『低価格米粉の特性を活かした新商品・新メニューの開発』

産学連携情報

岡山県立大学  保健福祉学部栄養学科  田中晃一 教授

【食】『低価格米粉の特性を活かした新商品・新メニューの開発』
岡山県立大学保健福祉学部栄養学科 教授 田中晃一、 教授 伊東秀之、助教 我如古菜月、田淵真愉美、
新田陽子、山下広美、山本登志子、久保田恵、中島伸佳、井上里加子
岡山県立大学デザイン学部造形デザイン学科中西俊介
岡山県新規需要米生麵協同組合

1.背景と目的


日本の食糧自給の観点から考えると、自給可能な米の消費を拡大することは喫緊の課題である。米の消費を増やす手段として米粉の活用に期待が集まっているが、小麦粉に比べて割高であることや用途が限定されていることが足かせとなっている。そのような背景の中、本学が参画する米粉プロジェクト事業化推進協議会(岡山県備前市)では、原料米に低価格の新規需要米を活用するとともに、製粉プロセスに低エネルギーで大量処理が可能なローラーミルを採用することで、微細粒の米粉を小麦粉よりも低価格で供給するシステムを確立することに成功した。本研究課題は、この低価格米粉(びぜん米粉)の物理化学的な緒性質を調べて加工特性を明らかにするとともに、その特徴を活かした加工食品の試作やレシピの考案を推進することで、米粉の需要拡大に貢献することを目的としている。

2.米粉の利点


 安心・安全な国産米を原料とする
 原料の供給が安定している(量、質、価格)
 フードマイレージが小さい
 グルテンを含まない
 アミノ酸バランスに優れる
(アミノ酸スコア:米65 VS 小麦41)
 低吸油であるため健康的である
(油吸収率:米粉21% VS 小麦粉38%)
 食糧自給率アップに貢献する

3.米粉の問題点


 小麦粉より高価である(主に製粉コストが原因)
 特徴や用途の基準があいまい
 グルテンを含まない
(麺のコシやパンの膨らみに影響)
 用途、レシピが少ない

4.低価格米粉の製造技術の開発


~小麦粉よりも安い米粉の商業生産が可能に!~
① 動力原単位が低い(電気代1/3)
② 連続無人運転が可能(人件費1/10)
③ 自社開発により低設備費(設備償却1/2)
④ 粒度の調節が可能(20μm~100μm)

5. 低価格米粉(びぜん米粉)の特徴


 低価格(粒度粗:小麦粉より安価、粒度細:同程度)
 大量生産が可能
 粒度の調節が可能(20~100μm)
 安心・安全(岡山県産米を使用)
 でんぷん損傷度はやや高め(パンや麺には不向き)

6. 県大米粉麺の特徴


グルテンフリー
切れにくく、ゆで伸びしにくい
低ナトリウム・高カルシウム
幅広い年代に受け入れられやすい
様々な素材を練りこむことも可能

7. 県大米粉麺の官能評価


総社市の地域住民(12~74歳)100名を対象に、県大米粉麺とビーフンを比較して麺の固さや好みについて試食評価を行ったところ、ビーフンよりも県大米粉麺を好ましく感じる人が多かった。

8. 学校給食向けの米粉麺メニュー開発


アンケートの結果および大量調理向きであることを考慮して、米粉麺メニューの開発を行った。現在までに21品目を作成し、そのうち12品目についてはプチレシピ集として冊子にまとめた。今後は実際に学校給食への導入に向けた取り組みを進める。

9. 県大米粉カレーの開発と官能評価


ルーに使用する小麦粉を米粉に置き換えた米粉カレーを開発した。栄養学科の学生14名を対象に、市販カレールーと米粉カレールーを比較して試食評価を行った。結果は市販ルーを0点としたときの米粉ルーの点数を表している。外観・食味の項目(赤)では、米粉ルーの評価が高かった。また、食感の項目(青)では、米粉ルーと市販ルーの間でほとんど差はなかった。

10. 県大米粉カレー【レトルト】の試作


将来的な商品化に向けて、県大米粉カレーのレトルト加工品の試作を行った。岡山県産の食材として備中牛と瀬戸内マッシュルームを使用したビーフカレー(ザクロエキス入り)のレトルト加工品を300食製造し、栄養学科の学生に配付して試食評価をしてもらった。

11. 食物アレルギー対応米粉レシピの開発


学校給食や防災用備蓄食への適用を目的として、食物アレルギーの原因となりやすい特定原材料7品目(卵、乳、小麦、ソバ、落花生、エビ、カニ)を除去した米粉レシピの開発を行った。
【開発レシピ例】
ホワイトシチュー・クリームコロッケ・お好み焼き・野菜ラザニア・スイートポテトタルト・どら焼き

いくつかのレシピについては、栄養学科の学生60名を対象として、通常レシピと食物アレルギー対応レシピを比較した試食評価を行った。味、食感、香りに関しては、どちらのレシピでもほとんど差はなかった。外観に関しては、一部のレシピ(コロッケなど)で通常レシピの方が好まれる結果となった。

12. ご当地米粉レシピの開発


地域活性化に繋がる商品開発を目的として、岡山県の特産品(黄ニラ、連島レンコン、ままかり、牡蠣、鰆、ブドウなど)を活用した米粉レシピの開発を行った。
【開発レシピ例】
黄ニラと連島レンコンの揚げ餃子(皮に米粉を使用)・カキオコ風ピザ(ピザ生地に米粉を配合)・ブドウのタト(タルト生地とカスタードに米粉を使用)

いくつかのレシピについては、栄養学科の学生60名を対象として、小麦粉レシピと米粉レシピを比較した試食評価を行った。味、食感、香り、外観に関して、米粉の方が好ましい、もしくはほとんど差がないという結果が得られた。

【お問い合わせ】


田中晃一岡山県立大学保健福祉学部栄養学科
〒719-1197 岡山県総社市窪木111
Email:ktanaka@fhw.oka-pu.ac.jp
Tel/Fax:0866-94-2159

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