■電子看板と融合し観光支援事業
日光東照宮で観光ガイドとして使用されている音声ペン
セーラー万年筆は、紙媒体にタッチすると多言語の音声が流れるペンを用いた、観光支援事業を本格展開する。デジタルサイネージ(電子看板)を手がけるエムビジュアル(東京都文京区)と提携。音声ペンと電子看板の組み合わせによって観光客を誘導するという、新たな取り組みを始める。
2020年に東京五輪の開催が決まったこともあって、今後、訪日外国人が増えることが見込まれており、15年度までに、全国100カ所の観光地での普及を図る。
本格展開に当たっては、JTBグループとも連携。観光協会や地方自治体に向け、電子看板と音声ペンを融合した観光支援サービスの導入を促す。具体的にはホテルや観光協会を通じ、1日当たり500円で、音声データが再生されるペンをレンタル。観光客を電子看板に誘導したり、観光のほか、行政や災害の情報発信も行う。
すでに九州や四国など10カ所以上の自治体などから引き合いがある。15年度には200万人の利用を見込んでいる。
音声ペンは、パンフレットや地図などの紙媒体に印刷したコードをペン型のスキャナーでタッチすると音声データが再生される仕組み。日本語のほか中国語や韓国語、英語などにも対応している。これまで京都観光や岩手県平泉町の中尊寺、日光東照宮などの名所・旧跡の観光案内用として多数の納入実績がある。また、語学学習としても活用されている。
一方、エムビジュアルは、電子看板を利用したコンテンツ配信事業を全国で展開しており、東北では、観光復興を目的として福島県会津若松市や岩手県の三陸鉄道で、多面的な実証実験を進めている。
セーラー万年筆では今後、フランス語やタイ語にも対応できるペンの開発を進めるほか、香港やシンガポールなどのアジア市場でも、日本人観光客向けに同様のシステムを展開する計画だ。
セーラー万年筆の中島義雄社長は「日本には素晴らしい観光資源があるが、言語の壁が問題となって、海外からの観光客をなかなか呼ぶことができない。今回の提携に伴い、新たなニーズを掘り起こすことによって、訪日外国人を大幅に増やしたい」と語っている。(伊藤俊祐)
【会社概要】セーラー万年筆
▽本社=東京都江東区毛利2-10-18
▽設立=1932年8月
▽資本金=23億2000万円
▽従業員数=457人(2012年12月末現在)
▽事業内容=文具、ロボット機器
「フジサンケイビジネスアイ」