■道路老朽化データを防災に活用
道路下の空洞を調査するスケルカー
「人の命と暮らしを守る」をモットーに、公共インフラの診断事業を手がけるのがジオ・サーチ(東京都大田区)だ。道路下の空洞や橋の床版の劣化など社会問題となっている公共インフラの老朽化を総合的に診断する「インフラの内科医」を自負する。今年1月以降、こうした調査が「防災・安全交付金」の適用対象となったため、補修予算不足に悩んでいた地方自治体も動き出し、同社への要請が増えるとみている。
同社は1989年に創業、90年に世界初の路面下空洞探査システムを実用化した。マイクロ波を地中に放射し、反射波を解析し空洞や埋設物を、非破壊で高精度に探し出す技術だ。
2010年には、解像度を向上させ時速60キロでも走れる「スケルカー」を新たに開発。調査から報告までの期間を従来の10分の1以上短縮、道路1キロ当たりの調査費も5万~7万円と従来の半額程度に低コスト化した。
同社は東日本大震災までは、公共インフラ調査で災害に強い国作りに役立つことを目指した。しかし、震災発生3日目から緊急調査に入り、かけがえのない「人の命と暮らしを守ることが事業目的だという考え方に変わった」(冨田洋社長)。また、東北や関東の被災地を広範囲に調べ、結果を分析したところ、自然被害に対する地中の弱点が次々とつかめたという。
冨田社長によると、震度5以上で、地下鉄や埋設管の施工時に多く使われる埋め戻し砂は、結合がゆるんで沈下するため舗装直下に空洞を多発し、陥没が起きる。水分を多く含む砂を使った護岸や埋め立て地も一気に液状化が拡大、通常の10倍以上、空洞が多発する傾向も分かった。このため埋設物や下水道周辺を総点検し、空洞箇所をモルタルなど沈下や液状化しにくい材料で強化することを提案している。
東海・東南海地震では、多くの幹線道路や岸壁が陥没して緊急時に使えなくなる上、長期にわたって輸出入も困難になることが予測されるため、経済的損害への警鐘を鳴らす。一方、同社が東日本大震災後に道路を総点検した千葉県習志野市では、陥没危険箇所を特定し、改修を完了したことを公表している。
13年3月末時点で、調査した道路の累積距離は10万3777キロ、発見した欠陥数は1万7703カ所に及ぶ。冨田社長は、自治体から総点検の要請が増えるとみて今年9月までにスケルカーを2倍の20台に増強、14年6月期は調査距離を前期の1万2000キロから2万~3万キロに延ばす。緊急出動に備えて全国の拠点も強化している。
さらに、これまで集積した道路欠陥のビッグデータと、避難路や病院などのデータを重ね合わせることで都市の弱点を探り出し、防災に役立ていく方針だ。(広瀬洋治)
「フジサンケイビジネスアイ」