北品川本通り商店会の空き店舗を改装して生まれた「楽間」は、街の活性化に一役買う=東京都品川区
■通りは販促物一色
東京都内の商店街を地方自治体や地域企業のPR会場として丸ごと使う-。デザイン制作会社の「Wit」(東京都港区)は、そんな販売促進サービスを始めた。店が立ち並ぶ通りをPR依頼者の販促物で一色にする仕掛けで、依頼者の販路拡大と商店街の活性化につなげる。
サービス名は「TOWN DE PR(タウン・デ・ピーアール)」で、商店街をPR依頼者の販促物などで埋め尽くす。地域産品や観光資源などを一大消費地の東京で認知させたい企業などの要望に応えた。
その舞台は、東京都品川区のJR品川駅から徒歩約10分の商店街「北品川本通り商店会」だ。通りの長さは約500メートルで、飲食店や美容室などの多様な店舗が軒を連ねる。
仮に山口県の特産品「フグ」を売り込みたい場合、フグ料理を試食・販売するPRイベントを伝えるフラッグ(旗)を商店街の街路灯に設置し、ポスターも各店舗に貼り付ける。
並行し、商店街付近の駅やバス停留所に止まる電車やバスもPR手段として使う。例えば、車内ポスターなどでフグのイベントを乗客に告知する。
これらの販促策などを1週間限定で総動員した場合、サービス料金は75万円から。PR素材の印刷・設置費を含む。1カ月までのPR支援も可能だ。
都外の自治体や企業が手がける販促策の主流は、大型展示場や百貨店などで開くイベントへの出展だ。しかし、多数の出展者が軒を連ねるため埋没しやすく、PR期間も数日間と短い。そこで同社は、競合がいない環境下で告知活動を長期で行える新サービスを考案した。この企画を東京都が評価し、事業化前の準備段階で助成支援を受けた。
商店街に着目した背景には「空き店舗の増加や店主の高齢化などで疲弊する商店街を元気づけたい」という越智瑛甫(ようすけ)社長の思いがあった。
多くの商店街を回りニーズを探る中で、巡り合ったのが北品川。その地の商店会と意気投合し、長く借り手がいなかったパチンコ店跡地の有効活用で知恵を出すチャンスを得た。
越智社長の提案は「自由な空間づくり」。協議の末、床面積約80平方メートルの空き店舗を、木製間仕切りで自由に区切れる多目的レンタルスペース「楽間(らくま)」に改装し、2010年に開設した。今回のPRサービスには、この楽間の利用も盛り込んでいる。今後、年間に10件の受注をめざす。(臼井慎太郎)
「フジサンケイビジネスアイ」