「原宿ストリートスタイル」で行われたファッションショー=シンガポール
日本発ファッションの魅力をアジアで広めたい-。服飾情報サイトを運営するアパレルウェブ(東京都中央区)は、日本の人気衣料品ブランドを集積した期間限定ショップをシンガポールに開設した。そこでのテスト販売を足がかりに同社は、来年5月にも日本商品を扱う第1号店の出店をめざす。
シンガポールに設けたのは、最先端のファッション情報が飛び交う若者の街、東京・原宿をテーマとする服飾ショップ「HARAJUKU Street Style(原宿ストリートスタイル)」。ショップは地元の百貨店「タングス」内に開設し、10月から3カ月間の日程で試験販売を始めた。経済産業省は、食やアニメなどの海外市場開拓を後押しする「クール・ジャパン戦略」を主導しており、今回の期間限定ショップはその一環でもある。
販売するのは、「URBAN RESEARCH(アーバンリサーチ)」「KBF」などの15ブランド。これらが現地消費者の各年代にどの程度まで受け入れられるかを見極める。
並行して、ショップで扱う商品を「EC(電子商取引)サイト」でも販売。実店舗とサイトの連携策で集客力を高める。 多様な文化や人種が混在するシンガポールは、ファッション情報に対する消費者の感度が高い。このため同社は、アジアへの日本ブランド発信地として最適と判断した。千金楽健司(ちぎら・けんじ)・代表取締役CEO(最高経営責任者)は「シンガポールは、日本ブランドを陳列して見せる“ショーケース”の舞台として適している。その地を『ハブ(中核拠点)』と位置づけ、東南アジア市場を攻めていく」との戦略を描く。
9月には、同社と繊維商社の蝶理、みずほコーポレート銀行の3社が、国内衣料品ブランドの海外展開を支援する合弁会社「AWCG」を資本金約3600万円でシンガポールに設立した。
AWCGは、日本ブランドを集めた店舗をシンガポールに新設。これを手始めに「直営」と「フランチャイズチェーン」の両方式でアジアに店舗網を広げて、2015年時点で200店舗に拡大したい考え。同年に売上高55億円の目標達成も視野に入れている。
1990年代のピーク時に約20兆円あった国内衣料品市場は、半分にまで落ち込んだ。この現状を踏まえて千金楽CEOは、品質や企画力が高いにもかかわらず海外展開が進んでいない衣料品産業を問題視。「アジアを中心に日本文化のファンが多く存在する。輸出を振興すべきだ」と訴える。(臼井慎太郎)
「フジサンケイビジネスアイ」