■線量測定器購入者をモニター
子育て中の主婦らから放射線関連のリポート情報を集めてインターネット上で共有する-。環境情報サービス事業のCBMI(東京都中央区)は、生活者目線の放射線情報ウェブサイト「放射線ナウキャスト」を新設した。放射線からの“自己防衛手段”として提案し、情報発信に協力するモニターの数を約1300人まで増やしたい考えだ。
政府は東京電力福島第1原子力発電所の放射能漏れ事故を受けて、居住地域の放射線量を半減させる目標などを示した除染方針を固めた。ただ、多くの生活者が抱く「放射線への不安」は解消されていない。
ナウキャストは、こうした動きを踏まえ新設した。気象情報会社ウェザーニューズは、「気象観測機」と「人間の五感」を組み合わせて天気を予報する展開を追求している。CBMIはその放射線版を実現した。
特徴は、放射線をめぐる身近な情報を送信するモニターを募る点。募集は、同社が輸入販売する携帯サイズの露ソエックス製ガイガーカウンター(放射線量測定器)を売る際に行う。
ナウキャストへの登録手続きを行ったモニターは基本的に、その測定器を購入しリポートする。サイト情報を閲覧するのみの登録者も受け入れる。
リポートの流れはこうだ。例えば、子供が公園で砂遊びすることを心配する母親が、測定器をポリ袋に入れて砂場を測る。仮に「毎時1.20マイクロシーベルト以上」という測定値が表示されると、表示画面の背景色が「赤」に変わる。赤色は「危険レベル」という。
その警告を確認した母親は、子供に屋内の遊びを勧める。同時に、手持ちのパソコンでナウキャストにアクセスし、測定値に加えて測定場所と測定日時を入力する流れだ。
入力データは、グラフや地図上で視覚的に把握することも可能。例えば、地図上の測定場所に漫画で多用されるせりふの掲載枠「吹き出し」が飛び出し、その枠内に測定値が表示される仕掛けを取り入れた。
ロシア製測定器のメーカー希望小売価格は5万5000円。その測定器を活用し稼働しているモニターは約50人で、株主も含まれる。これを段階的に引き上げる一方、固定の観測拠点の設置も視野に入れている。
小野雅弘社長は「『自助互助』の精神で自身の身を守る。そんな意識を持つ生活者のネットワークをナウキャストを起点に広げたい」と意気込む。
その輪を生かして企業の販促を支援するビジネスも検討中。例えば食品業界からの依頼を受けて、健康被害に敏感な消費者の意識を調べるモニター調査が想定される。
(臼井慎太郎)