■映像の配信、柔軟対応 省エネ自動設定
デジタルサイネージ(電子看板)システムのバンテン(東京都新宿区)は、複数のサイネージの簡易管理システムや、省エネ機構の自動設定を標準化するなど、街頭の設置が増えつつある中で、特色あるサービスを打ち出し、他社との差別化を図る。
デジタルサイネージは、同じ広告映像を繰り返して流すシステムが多くを占めているが、同社は、ターゲットや映像を流したい時間帯などに合わせて柔軟に対応できるシステム作りが特徴。例えば1つの画面上で、上面に野球のニュース速報、下面には広告といった組み合わせで配信するなど、さまざまな仕組みの構築を得意としている。
東日本大震災の後の節電対応にも素早く対応した。同社のシステムを導入したサイネージは、東京電力が毎日発表している「でんき予報」で消費電力が発電量の95%を超える場合などに、自動的に電源が切れる仕掛けを標準化している。
1社で数百台に及ぶサイネージを扱う会社向けには、それぞれ内容が異なる映像配信を1つのモニター上で確認できるサービスもすでにシステムに組み入れた。1人の担当者がモニターを確認するだけで、「駅構内のAという場所にある電子看板の映像に不具合がある」といった具体的なトラブル状況を手に取るように確認できる。さらに、トラブル発生時に、必要に応じて担当者の携帯に内容を知らせる仕組みも構築できるという。
同社はシステム構築だけでなく、サイネージへの映像配信も請け負っている。
「正直、震災後は、広告が一気になくなり、厳しい状況だった」(ニール・バンワウ社長)が、今回、震災発生を機に事業とは別に、サイネージを通じて社会貢献につながる活動を本格化させた。
バンワウ社長が設立時の代表理事になり、一般社団法人「Ganbatte(がんばって)365」を設立。被災地でポジティブに何かに取り組む人や活動に焦点を当て、15秒単位の映像を作成。このコンテンツを世界各国にあるサイネージで配信する取り組みだ。
サイネージで継続的に情報発信することで、まず、不特定多数の外国人に関心を持ってもらうのが狙いだ。
バンワウ社長は「各国で日本の震災報道が少なくなるなか、今の日本の正しい姿を少しでも世界に発信したい。それをデジタルサイネージの力でできるのでは、と考え活動を具体化することにした」と話す。自社の利益だけにこだわらず、デジタルサイネージ自体の社会的意義や存在感を高めていく考えだ。(那須慎一)
「フジサンケイビジネスアイ」