都内レストランで、アールキューブの会費婚サービスによって挙げられた結婚披露宴
経済的な理由などから結婚式を挙げない“ナシ婚”が増える中、価格を抑えて会費制の挙式・披露宴ができる、アールキューブ(東京都渋谷区)の「会費婚」サービスが業界に新風を吹き込んでいる。
ホテルやレストランを含む結婚式場から予約が入らない「在庫」枠を安く確保するほか、少ない打ち合わせで人件費を抑えるなど、低コストでも本格的な挙式を実現する。
挙式・披露宴には一般的に300万円以上かかるとされる。若いカップルや急な妊娠などで挙式を急ぐ場合には、用意するのが大変な額だ。厚生労働省によると婚姻件数は2015年に63万5000組だが、同社推計では経済的理由で式を挙げないカップルは年間10万組に及ぶ。
同社の山崎令二郎社長は「お金をかけなくても、すてきな結婚式を提供したい」と11年11月に会費婚サービスを始めた。式のグレードは同じまま相場の半分程度まで費用を抑え、ご祝儀ではなく会費制にすることで収支見通しを立てやすくする明朗会計が特徴。会費は1万5000~2万5000円ほどで、ご祝儀の相場である3万円を切るため、招待客の懐にも優しい。標準的な会費婚で招待客60~70人が1人約2万円の会費を払うと、120万~140万円が集まり、自己負担金(最低5万円)を加えた金額で挙式できる計算だ。
結婚費用の中でも大きな割合を占めるのが会場代。1年から半年前に挙式日の予約を入れるのが通例だが、これを過ぎ、たとえば春の時点で夏の予約が入っていない場合、その日時の枠は販売が難しい在庫となってしまう。同社はこれを格安で押さえる。会場側ももともと「稼ぎゼロ」の枠で収益を上げられるメリットがある。レストランやホテル、結婚式場のほかクルーズ船など首都圏で約120の会場と提携するほか、2月から名古屋、3月から大阪でもサービスを開始した。
人件費を抑える工夫もある。ウエディングプランナーを従業員として抱えず、フリーで活躍する約40人の登録プランナーに発注する。需要に波があるウエディング産業で、人件費を固定費ではなく変動費にする仕組みだ。登録プランナーには、かつて式場に勤め出産を機に退職した「ママさんウエディングプランナー」も多く、女性の労働力活用に貢献する狙いもある。
また、新郎新婦向けアプリを開発し、会場が検索できるほか、ブーケや引き出物など、通常は打ち合わせの場でこまごまと決めるアイテムもアプリでカタログを閲覧して選べるようにした。このため対面の打ち合わせは2、3回で済む。コストを抑え、挙式まで短期決戦になる会費婚も無理なく準備できる。
身内だけで海外挙式した後に友人や会社関係者を招いてお披露目する「1.5次会」や、親族中心の1部と友人知人で楽しむ2部というようにゲストを分けて行う“二部制”結婚式といったトレンドもつかむ。コストや手間が省けるスタイルを求める顧客が会費婚を選ぶという。
消費が多様化する中、結婚式への要望も多岐にわたる。山崎社長は「自分らしい自由な結婚式を挙げる一つの方法として会費婚を提供していきたい」といい、オリジナルの結婚式を挙げたい人のための新事業として、ウエディング情報メディアの運営にも注力する方針だ。
【会社概要】
アールキューブ
▽本社=東京都渋谷区神宮前5-46-16
▽設立=2006年5月
▽資本金=1億2089万8000円(準備金を含む)
▽従業員=23人
▽事業内容=会費制結婚式のプロデュース、ウエディング情報メディアの運営
「フジサンケイビジネスアイ」