マーキュリアインベストメント・豊島俊弘社長
11年前に日本政策投資銀行(DBJ)が中心となって設立した投資運用会社「マーキュリアインベストメント」が10月17日に東京証券取引所2部に上場した。「クロスボーダー投資」を掲げ、株や債券といった伝統的な資産運用が困難になるなか、不動産や企業の事業活動など成長分野に集中投資する“異色”のベンチャーだ。政投銀出身の豊島俊弘社長は2017年に不動産や航空機リースなど各100億円規模の新規ファンドを立ち上げる計画。上場を機に積極的な事業展開に打って出る。
--上場して約半月だが、市場の反応は
「300万株が取引され、反応はまずまず。背伸びせず機関投資家がついてくる公募価格だった。経営基盤がしっかりしている会社だということで関心を持っていただいた」
--国境や既成概念の壁を越える「クロスボーダー投資」を掲げている
「国を超え、心を超える意味で、日本経済が成熟しても世界経済が伸びるなかで、日本経済の強みを生かしていく考えだ。クロスボーダー投資の事例としては、設立当時は中国の成長に注目し、北京のオフィスビルに投資した。香港市場で上場しリターンを得た。また、中国のデータセンターは国営企業主導だが、日本の大手通信事業者と提携したことでデータ認証の信頼度が高まり外資系企業の利用が増えて成長し米ナスダックに上場した」
--16年12月期業績予想は営業収益が22億7000万円(前期比10.8%増)、最終利益が7億1700万円(同15.5%増)と堅調だ
「当社は為替レートを(1ドル)95円に設定したため現在の105円前後だと業績達成を見込めそうだ。健康食品などの鈴木その子ブランドを引き受けたのだが、売却で3億5000万円の成功報酬を得たのも業績に寄与した」
--今後の経営ビジョンは
「成長が期待できる事業や高い収益性が見込める資産への投資が基本方針。中堅企業では株主、経営者の高齢化で事業承継が課題となっており、バイアウト承継投資と、不動産など資産を対象にしたキャッシュフロー投資が2本柱だ」
--17年に向けて航空機リースファンドと不動産ファンドを立ち上げる
「航空機リースはニッチ分野だが、投資適格は世界で約1500社のうち10社程度だ。これはモノ(機体)からのキャッシュフローをきちんと管理できる体制がなければ扱えない分野だ。年金業界などと意見交換をしているが、来年の早いうちに正式なマーケティング活動を始めたい。不動産ファンドは、日本企業が先進国でビジネス展開する場合に不動産子会社が保有するビルなどへの投資が主体だ。私たちはグローバルに投資するが、強みは日本企業の海外展開や外国企業の日本進出という分野。どちらが先になるか分からないが、どちらもファンドの規模は100億円になる予定だ」
【会社概要】マーキュリアインベストメント
▽本社=東京都千代田区内幸町1-3-3
▽設立=2005年10月
▽資本金=7億8515万円
▽従業員=25人
▽売上高=20億4800万円(15年12月期)
▽事業内容=投資助言、投資運用など
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【プロフィル】
豊島俊弘とよしま・としひろ 東大法卒。1985年日本政策投資銀行入行、グローバル投資業務などを経て、2005年創設メンバーとしてマーキュリアインベストメント設立に参画。08年10月に現職。54歳。大阪府出身。
「フジサンケイビジネスアイ」