■平易な英語に特化
米国では政治家が演説するときや企業が情報発信を行う際、中学校1年生相当の英語を基準としている。常識を打ち破ったのが、米大統領選共和党候補のトランプ氏。あえて小学校4年生レベルまで下げることによって、支持者の裾野を広げている。この過程で使用されているのが、平易な英語を示す「Plain English(プレイン・イングリッシュ)」。翻訳サービスを行うエイアンドピープルは、この“言語”を活用し日系企業が発行する外国人投資家向けアニュアルリポートなどの受注に力を入れる。
同社がプレイン・イングリッシュに本格的に取り組んだのは、トヨタ自動車からの受注がきっかけだ。各種マニュアルや決起集会でのスピーチ原稿など多種多様な翻訳サービスを手掛けたが、トヨタがこだわったのは平易な英語。その影響を受けてサービスの柱に据えるようになった。
例えばIRリポートを英訳する場合、一般的には日本語になるべく忠実な形で訳す。その結果、外国人投資家に内容が的確に伝わらない恐れがある。
これに対し、プレイン・イングリッシュを活用すれば「すんなりと頭の中に入ってきやすい」(浅井満知子社長)。ワンセンテンス当たり10~20の単語で構成され、受動態をできるだけ使用しないといった5つの指標から数値で評価されるため、文章が簡潔となるからだ。
また、米国や欧州企業のアニュアルリポートは、見出しで拾い読みできるような「編集の工夫がすごくされている」(浅井社長)。これに対し日本のリポートは見出しが毎回同じで、中身をじっくりと読まなければ理解しにくいつくりが慣習となっている。このため受注活動の際には、欧米企業のように個性的なリポートを提案している。
同社はすでに約200社の顧客を抱えている。しかし、プレイン・イングリッシュをリポートに取り入れている企業はまだまだ少ない。このためIR協議会での年1回のセミナーを行っているが、来年から2回に増やすことでアピールに力を入れていく。また、広報関係者が集う日本パブリックリレーションズ協会なども活用する方針だ。
IR協議会でのセミナーを通じ、プレイン・イングリッシュの普及に力を入れる
日本の株式市場は外国人投資家が6割を占めている。日系企業による海外進出も加速しており、翻訳事業が拡大する可能性は大きい。この分野でもAI(人工知能)が“台頭”するのは必至だ。こうした中、浅井社長は「経営理念や中期経営計画の具体的な方針を説明するには、人手が介在するプレイン・イングリッシュでなければならない。こういった高付加価な領域に注力する」と意欲を示す。(伊藤俊祐)
◇【会社概要】エイアンドピープル
▽本社=東京都渋谷区恵比寿西1-3-10 ファイブアネックスビル7階
▽設立=1998年10月
▽資本金=3000万円
▽従業員=15人
▽事業内容=翻訳・通訳、化粧品販売
「フジサンケイビジネスアイ」