被災地を想定して開発した新タイプの非常用電源装置の試作品(バイオコーク技研提供)
バイオベンチャーのバイオコーク技研(東京都港区)は、少量の天然資源から大量に得られる水素を使って発電する新タイプの電源装置の実用化にめどをつけた。海水に含まれ豆腐製造にも使われるにがりの成分と、土中の鉱物を組み合わせた水素貯蔵材料を活用。水素貯蔵材料から取り出した水素と、空気中の酸素を反応させて電気を生み出す仕組み。今夏までに非常用電源装置として商品化し、東日本大震災の被災地向けなどに販売して認知度を高める考えだ。
使用する水素貯蔵材料は、にがり成分の塩化マグネシウムと土中のドロマイトと呼ばれる鉱物を組み合わせた水素化マグネシウム。この水素貯蔵材料に水を加えると、水素が大量に発生し、酸素と化学反応させて発電する。水素と酸素から電気を生み出す仕組みは燃料電池とまったく同じ。
同社によると、1グラムの水素貯蔵材料に水を加えると、約1.8リットルの水素が発生し、2~3ワットの明るさのLEDランプで1時間程度の点灯が可能な電気が得られるという。
今夏をめどに発売するのは、出力100ワットの非常用電源装置。50グラムの水素貯蔵材料と300ミリリットルの水を充填(じゅうてん)したカートリッジを取り付ける。1本のカートリッジで、10ワットのLED電球で10時間の点灯が可能。携帯電話の充電やパソコンの電源などにも使える。
装置には補助電源として2次電池を搭載し、カートリッジを外してもしばらくは電力供給が継続する。本体価格は未定だが同社の上杉浩之社長は「量産時点で10万円以内に収めたい」と話している。
カートリッジの価格も今後設定する。水素貯蔵材料の価格は現在1グラムで約45円だが、「量産化すれば、将来的に1グラム1円以下にできる」(上杉社長)としている。
また、同社では来春をめどに平均的な戸建て住宅の1日分の電力をまかなえる3キロワットタイプの装置の発売も計画している。(那須慎一)
「フジサンケイビジネスアイ」