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近所で頼り合う子育てシェア

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AsMama・甲田恵子CEO

AsMama(アズママ)はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を通して子育てをシェアする事業を展開している。助けてほしい人は、近所の子育て仲間にネット上から依頼する。子供の送迎や託児を頼みたい人と、経験や時間を生かして役に立ちたいと思う人の両方の欲求を満たせるウインウインの仕組みだ。甲田恵子最高経営責任者(CEO)は「昔ながらのご近所の頼り合いの現代版として、生活支援インフラにしたい」と子育て支援を超えた事業への発展に意欲を示す。

◆85%が問題解決

アズママは全国に3万人を超える会員を抱える。単なるネット上のマッチングにとどまらず、会員同士が顔見知りになるよう、年間を通じて各地でセミナーやワークショップを開いている。イベントで交流することで助けてほしい人と支援したい人が仲良くなることが狙いだ。

各地域で活動の中心となるのが、約500人のママサポーターだ。イベント、交流会の運営を担うだけでなく、会員の相談に乗り、託児や送迎も請け負う地域の世話役だ。2カ月にわたる学科、実技の研修を経て認定している。勤務実態によって報酬も支払われるので、空いた時間を利用して家計の足しにすることもできる。

助けてもらった人は1時間当たり500~700円の謝礼を、支援してくれた人に直接支払う。登録料や手数料が一切かからないだけでなく、万が一の場合に備えて最高補償額5000万円の保険も無料で付与される。安心して頼り合う社会共助の仕組みが実現し、助けを求めた人の85%が託児などの問題を解決できている。

同社は利用者から一切料金を徴収しない。各地のイベントでのスポンサー企業に対するPR・集客支援、コンサルタント料などが収益源となっている。

例えば、子育てに良い住環境についてのセミナーを住宅会社が開くことでPRにつなげてもらう。コンサルティングとしては、不動産会社の販売しているマンションで住民同士が頼り合える仕組みづくりを行う。災害時などに助け合うコミュニティーがある物件は、人気が高く資産価値向上につながる仕組みだ。

◆大手企業が支援

同社の事業に対する支援企業は100社以上。イオンモール、積水ハウス、森永乳業など大手も名を連ねる。経営面以外でも企業による支援は重要なこと。企業も応援していることで、子育てが孤独ではないことを保護者にアピールし、アズママ自体のブランド力強化にもつながる。また地域コミュニティーづくりにはCSV(共通価値の創造)の観点から、企業による5~10年の長期的な協力が欠かせない。

1月14日には初となる自治体との連携協定を、奈良県生駒市と締結した。行政と一体となることで、地域全体で子育てを支え合う先進的事例としての成果が期待される。

取り組みは子育て支援にとどまらない。3年以内に多世代交流にも広げ、活動支援サポーターを1万人に増やす。「ミドルやシニアにも社会の役に立ちたいという意識を持つ人は多い。電球の取り換え、買い物代行などの生活支援へのニーズは高い」

世界でも有数の高齢化社会の日本は、社会問題の先進国でもある。社会課題の解決ソリューションとして10年以内に海外にも展開する。「双方向で相手の顔が見えて、気兼ねなく支援を頼めるツールはどこの国でも喜ばれるだろう」と日本で生まれた世界共通インフラの普及に自信を抱く。(佐竹一秀)


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近所で顔見知りを増やし、子育てを頼り合うための交流イベント

≪Q&A≫育児の悩み知り起業思い立つ

--起業のきっかけは

「出産後に会社の都合による人員整理で退職した後、職業訓練学校に通っていたときの体験が原点になっている。優秀で意欲のある女性が仕事と育児のはざまで板挟みになって悩んでいる姿を見た。育児について助け合うことのできるプラットホームが不可欠だと痛感し、ビジネスとしてのニーズがあると思い起業した」

--今のビジネスモデルを確立するまで試行錯誤している

「2009年11月に起業した。最初は子育て世帯の人を公民館や喫茶店に集めて3カ月で100回以上のイベントを開催した。参加人数も増えて協賛企業が現れたことで、無料の親子コンサートを開くようになる。ところが、助け合いにつながる参加者同士の交流への発展に期待したがうまく機能しなかった。もう一度ビジネスモデルを考え直そうと、街頭で4カ月かけて1000人にアンケートを取り、リアルな子育ての悩みを知ることになった。そこから今のサービスの基盤となるママサポーター制度や子育てシェアを開発するヒントを得た」

--子供にとっての子育てシェアの利点は

「一人っ子でもきょうだい体験をすることができる。おやつを取り合うけんかもあるだろうが、対処能力や譲り合うような協調性を身につけることにつながる。また各家庭で夕食後に入浴するか、入浴後に夕食にするかといった慣習の違いを把握できる」

                   ◇ 【プロフィル】甲田恵子

こうだ・けいこ 関西外語大外国語卒。1998年特殊法人環境事業団(現・環境再生保全機構)ののち2000年ニフティ入社。ベンチャーインキュベーションを経て、09年11月AsMamaを設立し現職。40歳。大阪府出身。

                   ◇

【会社概要】AsMama

▽本社=横浜市中区山下町73 アクティ横浜山下町1306

▽設立=2009年11月

▽資本金=700万円

▽従業員=455人(15年12月末時点)

▽事業内容=地域交流、共助コミュニティー創生

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