店舗展開をするとき、商圏調査は国勢調査などのデータを下敷きにして、集客数や売り上げを予測する。しかしデータは過去のものなので、正確な予測は困難だ。「楽しいチリビジ」は5年先までの予測データを作成し、「未来統計」としてリリースしている。真野栄一社長は「より正確な経営判断に活用してほしい」と話している。
--未来統計とは
「5年先までの人口を独自の推計手法で求めた統計データ。すでに確立された人口推計理論に加え、マンション分譲情報や大規模開発情報を活用することで、精度を向上させた。人口統計には国勢調査データがあるが、5年に1度しか実施されず、公開されるのは2年ほど後になるので、最も古いと7年前のデータになってしまう。未来統計は、出店予定地の将来人口を基にした高精度のエリア分析や経営判断に応用できる」
--どんな活用方法があるのか
「店舗展開をする場合、出店予定場所の市場規模が分かる。電力網や上下水道の設備計画に際しては、無駄のない投資に役立ち、収益性の向上を図れる。防災においては避難所の設置や備蓄計画など、将来の人口規模に応じた長期的計画を立案できる」
--どのように未来統計の着想を得たのか
「大学で地理学を学び卒業後、地図会社に就職した。地図を活用して商圏分析を行うソフトウエアを担当した。分析の基本データは国勢調査を基にしていたので、5年後の商圏予測をするには不十分だとずっと思っていた。2007年の起業後に、今のような未来統計の作成方法を着想した。周囲の人も『面白い』という反応を示したので開発に取り組んだ。試行錯誤の末、12年に製品化した」
--導入実績は
「流通大手が初年度から活用しているほか、小売業、学習塾、調査会社、通信などのインフラ関係に活用されている。今は警備会社や防災関係、自治体などへの導入を目指している」
--これからの展開について
「新たなデータを取り込むため、毎年改定している。DVDかCD-ROMで納品しているが、前提となる専用システムが必要になるので、クラウド化する準備を進めている。商圏リポート作成サービスやコンサルティングの要望についても、対応していきたい。今は夜間人口のデータベースだが、オフィスの従事者や商業施設への来店客などの昼間人口の将来推計データ化に取り組みたい。まだ導入は数社程度だが、3年後には50社を計画している」(佐竹一秀)
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【プロフィル】真野栄一
まの・えいいち 名大文卒。1989年アルプス社入社。2000年マップインフォジャパン出向。05年オークニーを経て、07年5月楽しいチリビジを設立し、現職。50歳。愛知県出身。
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【会社概要】楽しいチリビジ
▽本社=川崎市川崎区富士見1-2-1
▽設立=2007年5月
▽資本金=100万円
▽従業員=3人
▽事業内容=地理情報システムのコンサルティング・開発・販売など