口腔内の細胞を取り遺伝子検査を行う=東京都中央区のファンケル銀座スクエア
病気へのかかりやすさや体質などが簡単に調べられる遺伝子検査が、シニア層にも浸透している。サービスを提供する各社もセミナーを開催するなど認知度の向上に努めており、「健康なシニア期を過ごしたい」という人の利用が見込まれる。(兼松康)
約1万円から
ソーシャルゲーム大手のディー・エヌ・エー(DeNA)の子会社「DeNAライフサイエンス」、東京大学系ベンチャーの「ジーンクエスト」、化粧品や健康食品のファンケルの子会社「ファンケルヘルスサイエンス」など今年に入り、遺伝子検査サービスへの参入が相次いでいる。この3社は、医療機関などとも連携して、生活習慣病のリスクや体質などを知るための遺伝子検査サービスを実施している。
各社が行っている遺伝子検査サービスは、まずインターネット上などで、生活習慣病のリスクや体質など、自分の知りたいものに合った検査を申し込むと、それに該当する検査キットが届く。唾液や口腔(こうくう)内の細胞を採取して、専用容器に入れ、同意書などとともに返送すると、一定期間後に解析結果が届く仕組みだ。
従来の同様の遺伝子検査は数十万円から100万円以上という高額な費用がネックだったが、検査の技術革新によりコストを削減。3社は約1万円から数万円台という価格設定でサービスを提供している。
DeNAライフサイエンスやジーンクエストによると、遺伝子検査を受けるのは健康が気になり始める30~40代が最も多いが、最近はシニア世代が増えつつあるという。
「加齢に伴う肺機能の低下や高血圧、骨粗鬆(こつそしょう)症などの健康リスクに対する関心が高い」というのはジーンクエストの担当者だ。
医療費の削減
シニア層を遺伝子検査サービスのターゲットに据えているのはファンケルだ。
同社の池森賢二会長は、「平均寿命と健康寿命には男性で約9歳、女性で約12・4歳の差があり、それが日本の医療費高騰の要因となっている」と指摘。体質やリスクを知ることで生活習慣病を予防し、健康寿命を延ばすことで医療費の削減につなげることを目指す。
ファンケルヘルスサイエンスの青砥弘道戦略推進本部長によると、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患や心筋梗塞などの心疾患、認知症のリスクを総合的に判定するセットの人気が高いという。
同社では現在、月に15~20回程度の小規模なセミナーを開催。参加者もシニア層が多いといい、講演と合わせ、血管年齢などを調べて簡単なアドバイスを行う健康カウンセリングを実施し、その後の遺伝子検査などへ結びつけている。
同社は11月にサービスを開始したばかりだが、「家族に脳梗塞や心筋梗塞にかかった者がおり、自分も心配になってやってみようと思った」(50代女性)「親が高血圧で自分も心配。遺伝子検査自体にも興味があった」(40代女性)と、病気のリスクを心配して検査やセミナーへ申し込む人も多い。また、「効率がいい予防対策が知りたい。遺伝子検査で体の状況を知り、自分に合ったサプリメントを勧めてもらえることに興味があった」という60代男性のように、今後の健康に役立てようとする声が届いている。
■認知度は100%
遺伝子検査についての認知度は100%。DeNAライフサイエンスが11月に実施した意識調査で、こんな結果が出た。
調査対象は一般の20~70代の男女1200人。同社が実施した6月の調査では「知らない」という回答が12.7%あったのに対し、今回は全員が「知っている」「聞いたことがある」などと回答。遺伝子検査の認知度が急速に高まっていることを裏付ける結果となった。
同社の遺伝子検査については、「かかりやすい病気や自分の体質が分かった」などの理由で、利用者の72.7%が満足したとの結果も出ている。
■遺伝子検査
遺伝子を構成するDNAのアルファベット塩基(化学物質)の順序を調べる検査。病気の種類によるが、一般に血液や口腔(こうくう)内の粘膜などからサンプルを採取し、DNAの検出や解析を行う。遺伝子検査は生まれながらの体質を調べるものと、がんや白血病など、生まれた後に生じるDNAの変化を調べる検査とに分類される。
「フジサンケイビジネスアイ」