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【ウーマンシップ】テレワークマネジメント・田澤由利社長

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テレワークマネジメント・田澤由利社長

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■ネットオフィスの導入提唱

 ICT(情報通信技術)を活用することで、場所や時間にとらわれない働き方を指すテレワーク。安倍晋三政権も成長戦略を遂行する上で、その重要性を指摘している。普及に向けてはテレワークの知名度をいかに高めるかが不可欠となり、その旗振り役を担うのがテレワークマネジメントの田澤由利社長だ。

 ◆「世の中を変えたい」

 田澤さんは大学時代、叔父からパソコンを譲り受けてコンピューターの世界に出合った。その性能に魅了され「魔法の箱を仕事にしたい」と思うようになる。就職先は実家がある奈良に工場があるといった理由でシャープに入社する。最初の配属先はパソコンの商品企画部門。「シャープのパソコンを日本一にする」といった思いで働き始めたが、7年後には退社した。夫の仕事は転勤が多く子育ても重なり、苦渋の選択だった。

 しかし、本人は仕事から完全にリタイアという気はなく、パソコンを使って家で仕事をし始めた。当時、パソコン雑誌のライターは男性の技術者ばかり。女性の視点に基づく記事は重宝され、さまざまな雑誌に寄稿した。インターネットが普及し始めた1997年には北海道北見市に移住する。子育てをしながらの在宅勤務は注目され、テレビや新聞に「在宅ワークの母」といった形で紹介されるようになる。

 その頃、「どうやったら在宅勤務を行えるのか」といった質問を頻繁に受けるようになった。ただ、答えはなかなか見つからずストレスも感じるようになった。このため1998年にワイズスタッフという会社を設立。インターネット上に在宅勤務者が集まり、ホームページやコンテンツ制作などを請け負うといったビジネスモデルを立ち上げた。データ入力など単純な作業に終始するのではなく、家でも会社にいたときと同様の能力を発揮できるようにする-。そんなコンセプトを掲げた。

 しかし、それから10年が経過した時点でもテレワークの普及は進まなかった。このため「世の中を変えたい」といった思いから、企業に対するコンサルティングを通じてテレワークの導入を促す、テレワークマネジメントという会社を立ち上げた。

 ◆「市場が見えてきた」

 同社が提唱するのは、ネットオフィスの導入。「在宅に適しているのは1人で集中する仕事という概念では、なかなか普及しない」(田澤社長)という考えの下、バーチャルな仕事場ながら会社にいるときと同様の業務に携わる環境をICTで構築する。自宅から朝礼や会議に参加したり資料の共有化を図ることも可能だ。

 安倍政権が女性の社会進出を促すためにテレワークを重視し、企業への助成金制度も開始したこともあって、今年に入って相談件数は大幅に増加。田澤社長は「市場が見えてきた」と手応えをつかんでいる。

 テレワークマネジメントでもテレワークを活用する社員がいる。その中の一人はセミナー運営の企画などを担当。「通勤を行わずに済むため体力の消耗を予防できるし、仕事の直前まで家族と一緒にいられるのがうれしい」と語る。

 テレワークには「自由に働くことができる」といったイメージが強いが、田澤社長は「時間を管理しながらどの時間を自由に活用していけるかがテレワークのメリット」と指摘。時間管理にこだわった事業展開に力を入れ、その一環として子供の送り迎えなどで離席した際にも的確に管理できるタイムカードも実用化している。

 日本では、事務職など「ホワイトカラー」労働者を対象として成果に給与を支払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の導入を検討する企業が相次いでいる。こうした中、田澤社長はテレワークを普及させることによって、「時間と成果で評価することが重要」と強調している。(伊藤俊祐)

                   ◇

 ≪Q&A≫

 ■全国にコンサルスタッフ配置

 --テレワークの導入メリットは

 「まず人材確保の面で有効に働く。女性は育児休業から戻ってきても短時間勤務だったり、営業から事務部門に配置転換されるケースが目立つ。その点、テレワーク制度があれば復帰後も活躍できるからだ。コスト削減にもつながる。オフィス空間を有効活用できるようになるしコストも削減できるからだ」

 --このほかには

 「在宅以外の社員の仕事も見直さなければいけないし、IT(情報技術)体制やセキュリティー体制の強化も不可欠となり、結果として生産性の向上を図ることができる。また、ワークライフバランスやダイバーシティの具現化、障害者の雇用促進にもつながる。単なる福利厚生対策ではなく企業戦略である」

 --テレワーク市場の今後の見通しは

 「当然ながら右肩上がりで伸びていく。あと5年、10年もすると、40~50代を中心に親の介護によって離職を強いられる層がでてくるからだ。コンサルティング業務も同様に推移すると予測している。現在は同じ仕事をしている企業はないが、これから増えていくはず。競争を勝ち抜くためにはブランド力の強化が必要で、より生産性の高いテレワークを先頭で追い続けていきたい。また、コンサルティングを行えるスタッフをネットオフィスの活用を通じ全国に配置する。テレワークで働き続ける社会を作り、日本を変えたい」

                   ◇

【プロフィル】田澤由利

 たざわ・ゆり 上智大外国語学部イスパニア語学科卒。シャープ入社。夫の転勤と出産で退職し、1998年ワイズスタッフを設立。2008年テレワークマネジメントを設立。52歳。奈良県出身。

                   ◇

【会社概要】テレワークマネジメント
 ▽本社=北海道北見市高栄西町4-7-13
 ▽設立=2008年9月
 ▽資本金=300万円
 ▽社員=7人
 ▽事業内容=テレワークの導入支援

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