相続診断協会 小川実代表理事
遺産相続では遺族間でもめたり、多額の相続税で苦労する事例が多数ある。生前に税理士などの専門家に相談することが“争族”の回避につながるが敷居が高いため利用増につながらない。一般社団法人相続診断協会では民間資格「相続診断士」を認定している。診断士は法律の理解はもちろんのこと、エンディングノートの書き方の指導など多岐にわたる知識を取得し、相続問題の解消に努めている。小川実代表理事は「相続は人生最後の仕事」と生前の準備の重要性を訴えている。
--設立のいきさつは
「1998年から税理士として相続に関わってきたが、トラブルがあまりに多かった。家族が壊れる例も見てきた。亡くなる側からすれば、家族のために生涯働いて財産を築いたのに争いが始まってしまうと、『自分の人生は何だったのか』という無念の思いを抱いてしまう。そんな理不尽なことをなくしたい。そのために2011年末に相続診断協会を設立した」
--具体的な業務は
「基礎的な関連した法律を理解し、エンディングノートの書き方の指導方法などの知識を習得して、試験に合格すれば相続診断士として認定される。診断士は依頼者の相談を受けて、必要に応じて税理士などを紹介する。法人を設立した当初は診断士に対する関心はほとんどなかったが、1年後には3000人に達し、2年後の14年1月に9000人、7月には1万3000人を超えた。資格取得者は全体の95%が生保、損保、不動産、金融関係者などで、残り5%が税理士などの士業だ」
--全国各地で講習会を開いている
「エンディングノートの普及を図っている。遺言書は法的な文書で難しいが、エンディングノートであれば気軽に書くことができる。本人の意志が表されるので、大きなもめ事に発展しにくい。それでも実行する人は少ない。そこでさらに簡単なエンディングノート練習帳を作った。6つの設問に答えるだけでいい。例えば『あなたはあと1年と余命宣告されました。1年のうちにどうしてもやりたいことを3つ書いてください』などの問いへの回答を考えているうちに、家族への感謝の気持ちがわき上がったという。書くことによって心の中が整理され『もやもやが取れて安心した』と安堵(あんど)の表情で言われたこともある」
--相続は資産家の問題との意識が強い
「相続分割事件全体の中で、相続税がかからない5000万円以下の遺産分割でもめる件数が全体の約75%を占める。相続問題を抱えているという当事者意識が薄く、対策を立てることがないためだろう。相続診断士は現在1万3000人だが、16年の夏までには3万人にまで増やす。当会の理念を理解した上で、多くの税理士、司法書士などにも資格を取得してもらいたい」(佐竹一秀)
【プロフィル】小川実
おがわ・みのる 成城大経済卒。税理士事務所、インベストメントバンク勤務を経て、1998年税理士事務所を開業。2011年12月に一般社団法人相続診断協会を設立し、代表理事。税理士。50歳。岐阜市出身。
◇
【法人概要】相続診断協会
▽所在地=東京都中央区日本橋人形町2-13-9 ダヴィンチ人形町7階
▽設立=2011年12月
▽事業内容=相続診断士試験の実施・資格の付与、相続に関する各種セミナーの企画・実施など
「フジサンケイビジネスアイ」