製造業者が知るべきテクニカルマーケティングのツボ

第5回

技術の価値を”翻訳”して伝えることの大切さ

後藤 亘 2018年3月6日
 

製造業者が自社の技術や製品を拡販する際には、大前提としてその技術を正しく評価することが必須です。

この場合の評価の仕方には、大きく分けて2つの視点があります。

それは、絶対的な評価と相対的な評価です。


絶対的な評価というのは、カタログスペックに代表されるものです。

性能であったり、精度であったり、技術そのものについて、それがどれだけ優れているのか、を評価するものです。


もう一方の相対的な評価は、ライバル社が持つ似たような技術や、市場にすでにある既存技術と比較してどうなのか?を評価するものです。

どちらの場合も、大切なのは評価の客観性と、その評価結果を技術を使うユーザー目線の価値としてわかりやすい言葉で正しく伝えるということです。

私はこれを、価値を翻訳すると言っています。


例として、相対的な評価を取り上げて考えてみましょう。

相対的な評価は、一般に競合分析とも言われる手法です。

その技術についてある程度知識を持っていたり、あるいはすでに利用しているような場合には、聞く側からしても違いが想像しやすく、評価しやすいものです。


そのため、既存技術の置き換えを狙うような拡販方法の際に使っている方も多いことと思います。

気をつけなければならないのは、その技術を使う人のための翻訳をしているかどうかです。

というのも、ついつい作り手側の思いが先走って、翻訳を怠るケースが多いからです。


例えば、ある半導体チップで低消費電力が特徴だったとします。

競合のA社の製品は20mW、あなたの会社が持つ技術を盛り込んだ製品は、半分の10mWです。


この時ありがちなのは、「当社の◯◯技術を使うことで消費電力を半分にすることが出来ました」

「この◯◯技術は他社にはないカクカクシカジカで、これがああなんでこうなんです」と自社なりの評価をそのまま謳ってしまうことです。


言われてみればわかると思いますが、これは作り手側の理屈で、絶対的な評価を述べたに過ぎません。数字としての評価でしかないのです。
それを自分のメリットに翻訳して受け止めることができるユーザーであれば良いですが、そう翻訳出来るユーザーだけとは限りませんし、変に解釈されることもあるかもしれません。


では、この低消費電力のチップを使うと、ユーザーにはどんなメリットがあるのでしょうか?


実際に使う場面を想定して翻訳すると、こうなります。

「当社の◯◯技術を使ったことで消費電力が減り、発熱が抑えられます。競合A社のケースで3人月かかっていた放熱設計が0.5人月で済みます」
「その分、筐体の容積を50%へらすことが出来ます」

いかがでしょう?

これは実際にユーザーが享受できる利点を訴えています。ユーザーにとっては、競合A社の技術を使うより設計工数も減らせてセットの大きさも小さく出来ることが、直接の価値として伝わります。


さらに、使用条件を特定して放熱設計のガイドを提供出来ることをアピールすることで、具体的に設計工数を減らせることの裏付けが出来ます。

これは、客観的なデータになります。


このように、技術や製品を評価分析するときには、一歩踏み込んでユーザー目線の価値として翻訳することが必要です。


もう1つの注意点として、特に中小の製造業者に心がけてもらいたい点があります。

それは、ユーザー目線だからといって、その技術や製品自体の価格を比較しないことです。

なぜでしょうか?


それは、価格で優位に立ってビジネスを獲得するということは、技術を評価されたのではないからです。

競合が価格を下げれば、取られてしまうだけであり、不毛な価格競争に陥るからです。

中小企業であれば、そこに踏み込むのは得策ではありません。

はじめから、価格を評価アイテムにすべきではないでしょう。


あなたもぜひ、自社が持つ技術や製品を正しく評価して、ユーザー目線の価値として翻訳するクセを付けることをオススメします。

用途開発を広げる第一歩です。

 
 

プロフィール

株式会社ルーセントコンサルティング
代表取締役 後藤 亘

大学卒業後30年間、主に通信、半導体業界における外資系企業でキャリアを積む。

エンジニア時代には、携帯端末向けやガスメーター向けなど数多くの半導体設計に携わる。その後、そのような電子部品をセットメーカーに対して拡販するマーケティングに異動。そこでは、技術とアプリケーション(使用用途)の両方を熟知した顧客提案が功を奏し、多くの分野で新規案件を獲得してきた。

また、40歳を前に大学院に入学、技術の商業化やマーケティングを学術的に身につけてMBAを取得。その理論的裏付けと専門技術的な知識を、その後の数社の外資系企業でのマーケティング活動に活かした、技術マーケティングのプロ。

現在は、前職で培った経験と実績をベースに、国内の中小製造業が持つ独自技術の「見せ方」を工夫して用途開発を加速させることを目的とした「用途開発誘起戦略」を提唱し、これを実践するための仕組みづくりを体系化して、製造業経営者の方にコンサルティングを行っている。

同じカテゴリのコラム

コラム検索
新聞社が教える SPECIAL CONTENTS
プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。