製造業者が知るべきテクニカルマーケティングのツボ

第23回

暗黙知を経験値にするには

後藤 亘 2018年11月14日
 

社長の会社には、いくつのマニュアルがありますか?

私も過去に技術設計に関わる仕事をしていたので、マニュアルの

大切さや有益性については、十分に認識しています。

一般に技術者と呼ばれる人たちは、みな同様かと思います。

技術の分野では常に実験やシュミレーションで製品や技術が出来るまでの

過程を重視し、それをマニュアルにしています。


では、営業はどうでしょうか?


こちらは過程よりもどちらかというと結果を重視しています。

テレマをする時のアポ取りマニュアルや接客マニュアルが思い浮かぶ

人も多いでしょう。

こういう顧客の場合、このパターンのセールストークだと成約率が何%

期待できるといった営業マニュアルを使っている人もいるかもしれません。


ではマーケティングはどうでしょう?

おそらくマーケティングとなると?ですよね。


今回は私が外資系企業で見てきた、そして自分でも使ってきた

マーケティングのマニュアルについて簡単にご紹介します。

まず、マニュアルの目的や役割について皆さんはどう考えていますでしょうか?

何かのやり方や方法について、この場合はこう、そのときにはこれをこうして。

と細かく案内しているのがマニュアルですよね。

これは次のように言い換えることが出来ます。


その技術や方法について知見を持つ人の頭の中にある知識、暗黙知を

「見える化」して、誰でも同じようにそれを利用できるようにする。

そしてこれを文書やマニュアルとして整えて「仕組み化する」こと。


このようにマニュアル化をすることで、様々なメリットがあります。

まず、頭のなかにある知識を「見える化」して文書化する過程で、新たな

気づきがあります。

その人が無意識に想定していたものがあったり、見落としていた事を

指摘されたりすることがあるからです。

そのために技術者の間では常にデザインレビューを繰り返し行います。

そしてマニュアル化することで、属人的な要素から解放されます。

この技術はあの人しか使えないとか、この人が辞めたら運用はできなくなる

といった心配がなくなります。

つまり引き継ぎや更新が出来るようになります。


では、マーケティング業務でのマニュアル化、見える化とはどういった

ものでしょうか?わかりやすい例で考えてみましょう。


あなたの会社が新製品を開発中です。今までにない新しい技術を

採用しています。

社長であるあなたは、この新製品をどのように市場に投入しますか?

つまり、

・告知をどうするか?

・先行ユーザーを探すのか、一斉販売か?

・ターゲットユーザー、会社は誰か?

・資料として何を準備するのか?

・デモ機は?

・プレスリリースはどのタイミングで打つか?

・営業へのトレーニングは?

・販売計画は?

・アフターサービスは?

・ウェブサイトへの掲載は?


などなど、準備することは山ほどありますね。

現状、その都度考えて対応しているなら、マニュアル化することで、

工数はぐっと減らせますし誰でも対応出来るようになります。

そしてそれを繰り返していくうちに、ここはこうすべきとか、

このタイミングはもう少し早く、などマニュアルを磨き上げていくことも

出来るようになります。


このように、マーケティングに関わることもマニュアル化することで

仕組み化出来ますし、専任担当を置かなくてもスムーズに対応出来るように

なります。

いままでうまく行っていた新製品リリースに関して、マニュアル化することが

第一歩になります。

あるいは、その際に良い働きをした人がいたのであれば、その人の頭の

なかにある暗黙知を見える化することも近道でしょう。


 
 

プロフィール

株式会社ルーセントコンサルティング
代表取締役 後藤 亘

大学卒業後30年間、主に通信、半導体業界における外資系企業でキャリアを積む。

エンジニア時代には、携帯端末向けやガスメーター向けなど数多くの半導体設計に携わる。その後、そのような電子部品をセットメーカーに対して拡販するマーケティングに異動。そこでは、技術とアプリケーション(使用用途)の両方を熟知した顧客提案が功を奏し、多くの分野で新規案件を獲得してきた。

また、40歳を前に大学院に入学、技術の商業化やマーケティングを学術的に身につけてMBAを取得。その理論的裏付けと専門技術的な知識を、その後の数社の外資系企業でのマーケティング活動に活かした、技術マーケティングのプロ。

現在は、前職で培った経験と実績をベースに、国内の中小製造業が持つ独自技術の「見せ方」を工夫して用途開発を加速させることを目的とした「用途開発誘起戦略」を提唱し、これを実践するための仕組みづくりを体系化して、製造業経営者の方にコンサルティングを行っている。

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