製造業者が知るべきテクニカルマーケティングのツボ

第20回

アライアンスを組む

後藤 亘 2018年10月2日
 

用途開発を広げる手法の一つに、特定の業界で影響力を持つ企業とアライアンスを

組む方法があります。その企業が市場で大きなシェアを持つ製品を持っていれば、

非常に効率的に用途開発を広げることができます。なぜなら、そのシェアのもとに

なる数多くのユーザー企業に対して、自社の技術や製品を提案することができるからです。

アライアンスをうまくみせることがキーになります。具体的にご紹介します。


私が以前ある電源ICメーカーに勤務していたときの話です。すこし込み入った

話ですがご容赦願います。

パソコンでもデジカメでもスマホでも、一般に電子機器の中には、複数の電源電圧が

使われています。バッテリーから出て来る電圧は一つでも、たとえばメモリーが使う

電圧とディスプレイが使う電圧は別物だし、プロセッサは一つのチップでも複数の

電源電圧を必要とします。

私が関わっていた電源ICは、このような電子機器に使うために、1チップで複数の

電源電圧を作るものでした。

当時の市場トレンドと自社技術の強みを考えた上で、カーナビをターゲットすべき

用途としました。その詳細背景は今回は書きませんが、当時成長が期待されていた

分野の一つでした。


この業界で最も影響力があるのは、カーナビそのものの性能を大きく左右するメインの

プロセッサーであり、そのプロセッサーメーカーとして国内での実績が多かったのが

R社でした。そこで、このR社にアプローチし紆余曲折の後、彼らのプロセッサの

評価ボードにこの電源ICを採用されることになったのです。

R社とのアライアンスパートナーになったことになります。


これは、その後のマーケティングに大きな変化をもたらしました。

メインのプロセッサーのアライアンスパートナーになったおかげで、そのプロセッサを

使う多くのカーナビメーカーと商談をすることが出来るようになったのです。

しかも、R社が自社のプロセッサーの拡販のために評価ボードを配布すれば、

私が扱っていた電源ICも同時に配布されることになります。非常に効率よく認知度を

上げることができましたし、その後の採用に至るケースも国内海外含め、多くありました。

それぞれのカーナビメーカーは、自社の設計思想にもとづいた製品を作りますから、

それに応じて電源ICの用途開発が広がったことになります。

非常に成功したアライアンスの例でしょう。


このように、アライアンスを組むことで用途開発が促進されることにつながりますので

積極的に取り組む価値が十分にあります。

ただし、注意すべきポイントもあります。

例えば、業界で影響力を持つパートナーと組むこと、その業界のトレンドを見誤らないこと、

などには十分な注意が必要でしょう。

このへんの情報収集と方向付けも、テクニカルマーケティングの大きな役割の一つです。


 
 

プロフィール

株式会社ルーセントコンサルティング
代表取締役 後藤 亘

大学卒業後30年間、主に通信、半導体業界における外資系企業でキャリアを積む。

エンジニア時代には、携帯端末向けやガスメーター向けなど数多くの半導体設計に携わる。その後、そのような電子部品をセットメーカーに対して拡販するマーケティングに異動。そこでは、技術とアプリケーション(使用用途)の両方を熟知した顧客提案が功を奏し、多くの分野で新規案件を獲得してきた。

また、40歳を前に大学院に入学、技術の商業化やマーケティングを学術的に身につけてMBAを取得。その理論的裏付けと専門技術的な知識を、その後の数社の外資系企業でのマーケティング活動に活かした、技術マーケティングのプロ。

現在は、前職で培った経験と実績をベースに、国内の中小製造業が持つ独自技術の「見せ方」を工夫して用途開発を加速させることを目的とした「用途開発誘起戦略」を提唱し、これを実践するための仕組みづくりを体系化して、製造業経営者の方にコンサルティングを行っている。

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