製造業者が知るべきテクニカルマーケティングのツボ

第12回

中小製造業のマーケティング業務

後藤 亘 2018年6月11日
 

以前モノづくりに関わる企業の方数名とお会いした際に、話した内容です。


「うちにはマーケティングをする部隊も担当もいないんですよ」


しかし、よくよく聞いてみると、その会社は新製品の発売もしているし、
新規の顧客を獲得しながら、売上も伸ばしています。


マーケティングなんかいなくても、きちんとビジネスを拡大しているということです。
正直な話、日本の中小企業では、このようなケースは珍しくないと思います。


これは一体どういうことでしょうか?

マーケティングなんて、不要ってことでしょうか?


実はこれは、「マーケティング担当」は不在でも「マーケティング業務」は
誰か他の人が行っていることを意味します。


例えば、市場と自社の強みを捉えて、ターゲットを絞るのは、社長が。

販促用の技術資料を作るのは、設計エンジニアが。

ターゲット顧客のレベルや用途ごとの説明は、営業が。

そうすると、一見マーケティング部隊はいなくてもビジネスは回るし、
マーケティング業務としてもそれなりに機能しているように見えます。


現実には、このような運用をしている中小製造業社は多いのでしょうか。
では、このままでいいのでしょうか?
マーケティングは、社長やそれぞれの部署の担当がすれば、新製品や新しい用途に
技術が広がっていくのでしょうか?


私の考えは、YESそしてNOです。

まず、YESについてです。

私は中小の製造業において、技術の用途を広げてビジネスを拡大するためには、
マーケティングは不可欠だと考えています。

しかし、経営資源が限られている中小企業で、マーケティング専属の部隊を
つくったり、それ専任の担当者を雇ったりすることは、必ずしも必要とは思いません。
方向性は社長や経営陣が決める、技術的な資料はエンジニアがまとめる、
商品説明は営業が行う。
それで何ら問題はないと思います。


では、NOはどういう点でしょうか?

最も考えなければならないのは、仕組み化です。
つまり、社長が「うちはマーケティング専任を置かないかわりに、マーケティングの
業務は、どういう考え方に基づいて、だれが何を行う、という仕組みができて
いるかどうかでしょう。


例えば、現状ではエンジニアのAさんがわかりやすく技術を噛み砕いて説明する資料を
作ってくれている。
それを営業のBさんが、新規開拓にはこの図面でこう話すとか、切り替えを勧める
会社にはこの資料でこのポイントを強調するなどの最適化をする。
これで現状はうまく運用できています。

しかし残念ながら、これはいずれも属人的な手法です。
Aさんがいなくなったら、他のエンジニアでも同じレベルのことが出来るのでしょうか?
営業のBさんが他社に転職したら彼のノウハウはだれか引き継ぐのでしょうか?
これがNOたる所以です。


これが仕組み化できていれば、経営陣、技術部隊、営業チームがそれぞれどんな
マーケティング業務をすべきなのかをきちんとマニュアル化することができます。
誰が行なっても、同じレベルのアウトプットが出るようにできます。
結果として、一連の流れとしてマーケティング活動をすることが出来て、技術の
広がりを期待できるようになるのです。


この仕組み化ができていれば、当初の質問の答えは、YESそしてYESになります。


社長も今年はマーケティング業務の見直しとその仕組みづくりを考えてみませんか?

 
 

プロフィール

株式会社ルーセントコンサルティング
代表取締役 後藤 亘

大学卒業後30年間、主に通信、半導体業界における外資系企業でキャリアを積む。

エンジニア時代には、携帯端末向けやガスメーター向けなど数多くの半導体設計に携わる。その後、そのような電子部品をセットメーカーに対して拡販するマーケティングに異動。そこでは、技術とアプリケーション(使用用途)の両方を熟知した顧客提案が功を奏し、多くの分野で新規案件を獲得してきた。

また、40歳を前に大学院に入学、技術の商業化やマーケティングを学術的に身につけてMBAを取得。その理論的裏付けと専門技術的な知識を、その後の数社の外資系企業でのマーケティング活動に活かした、技術マーケティングのプロ。

現在は、前職で培った経験と実績をベースに、国内の中小製造業が持つ独自技術の「見せ方」を工夫して用途開発を加速させることを目的とした「用途開発誘起戦略」を提唱し、これを実践するための仕組みづくりを体系化して、製造業経営者の方にコンサルティングを行っている。

同じカテゴリのコラム

コラム検索
新聞社が教える SPECIAL CONTENTS
プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。