「組織とひと」のRe:Design 〜働き方と生産性を革新する〜

第3回

ポスト「情報化社会」とは何か?

小林 広治 2019年10月1日
 

ポスト「情報化社会」とは何か?

今回の主な論点

  1. 「工業化社会」の流れから、本当に大きな変化はこれから始まることが分かる
  2. 2016年までには「新しい時代」の形が完成されることが予想できる
  3. 「情報化社会」の次の時代は「AI化社会」
  4. 大変化の時代は、不安の時代。しかし、それは一時的なもの
  5. いま進行中の変化は、「コンピュータ化社会」とひとくくりに整理できる

ポスト「情報化社会」とは何か?


前回、「情報化社会」は既に終わった、という話をしました。


今回はそれに続き、「情報化社会」の次にどんな社会が訪れるのか、を予想していきたいと思います。


それではまず、また前回同様「歴史」に学ぶべく、「工業化社会」について、もう一度見ていきましょう。


まずは次の表を見てください。こちらに、「工業化社会」と「情報化社会」の時代の流れを比較して見られるように、左側に「工業化社会」、右側に「情報化社会」、そして、縦軸に時間軸を設定して、上から下に時間が流れるように整理しました。


そして、それぞれの起点を「1712年 ニューコメンの蒸気機関の発明」と「1951年 世界初の商業コンピュータ登場」を設定しました。

表:「工業化社会」と「情報化社会」の時代変化の比較

表:「工業化社会」と「情報化社会」の時代変化の比較

出典:当社独自調査


これを見れば一目瞭然ですが、「工業化社会」においては、最初の100年間はほぼ新しい産業は起こらなかったと言えます。つまり、当初は「手作業」を「工業化」することだけでビジネスになった時代です。


産業革命のきっかけとなった「蒸気機関」の発明を起点に考えると、最初の大きな変化が起きたのは、約100年経った1800年代前半です。この時期、更に次の大きな変化に向けての基礎技術が次から次へと発明されていきます。


そして、「蒸気機関」の発明から約200年後の1900年代前半。ここで時代の変化は更に劇的に加速します。この時2つの大きな世界大戦があったことも偶然ではないと思われます。


そして、世界は、蒸気機関を生み出す前の1700年の頃からは想像もできないくらい、多くの人が活躍しやすいまったく新しい時代が訪れたわけです。それは、「モノの民主化」と同時に、「政治の民主化」も進んだからです。


日本で1700年ごろと言えば、忠臣蔵の赤穂事件が起きたころで、1900年ごろと言えばちょうど明治維新から30年が経ち、大正に変わる時代ですから、この200年の変化がどれだけ大きかったかはイメージできると思います。


では、「情報化社会」はこれからどうなっていくのでしょうか? 「歴史は繰り返す」と言いますから、基本的な流れは変わらないはずです。ただ、前回の工業化社会よりも変化のスピードが速い、という肌感覚的な予想は立ちます。


それでは、詳しく見ていきましょう。まず起点となるのは、1951年に情報化社会の基礎的技術となる商業コンピュータが登場します。


「工業化社会」と同じく、最初は新しい産業が起こるわけではなく、ゆっくりと、でも着実に「情報化」を進めていくための基礎技術と、その流れが社会に浸透していきます。


工業化社会と同様、初期の段階では「情報化」することが付加価値を生み出せる時代だったので、アマゾンもグーグルも何か新しい産業を興してここまで大きくなった、というわけではなく、単に「情報化」という時代の潮流にのった、と考えることができます。


また、この表から言えるのは、ここまでの65年間は、変化の序章でしかない、ということです。工業化社会を見てもらえば分かる通り、ここから本当の大変化の始まることが予想できるわけです。


そして、前回のグラフでお伝えした通り、世界初の商業コンピュータが登場してから60年後の2011年、その変化の境目として、全世界の携帯電話の普及率が約84%になります。


実は、この約84%という数字は、マーケティング上深い意味を持ちます。ロジャースのイノベーター理論というのを聞いたことがありますでしょうか? 市場の約16%のラガード(遅滞者)という新しいものについて一番消極的な方々を除き、それ以外層であるイノベーター(革新者:市場の2.5%)、アーリーアダプター(初期採用者:市場の13.5%)、アーリーマジョリティ(前期追随者:市場の34.0%)、レイトマジョリティ(後期追随者:市場の34.0%)の合計84%へ浸透したことを意味するからです。


したがって、私は、この2011年が情報化社会終焉の年、と見ています。ここから時代は大きく変化し始めていくと見ているわけですが、この年日本では3.11の大震災があったこともこの変化を加速する要素だったと私は考えています。


図.ロジャースのイノベータ理論イメージ

図.ロジャースのイノベータ理論イメージ

でも、まだ多くの方はその実感ができていないのも事実です。


では、どのくらいの時間が経てば、多くの方がこの大変化を感じることができるようになるのでしょうか? その参考にしたいモデルケースを2つご紹介したいと思います。


それは、明治維新インターネットです。


今年2017年は、明治維新1868年から奇しくも150年目に当たります。


私は今の時代の変化は、明治維新と同程度もしくはそれ以上のインパクトがある、と感じています。それは次回詳しくお伝えします。


まず、今回お伝えしたいのは、その時代の変化にどの程度時間が必要か、ということです。では、1つご質問です。明治維新の引き金になったのは何だったでしょうか?


それは、誰でも知っている「黒船来航」です。日本に来たのは、ネットでもたびたび笑いのネタにされる「ペリー」です。ちなみに、これは何年だったか覚えていますでしょうか? これは意外と覚えている人は少ないと思いますが、1853年、つまり明治維新を遡ること15年です。たった15年で、新撰組がでてきて、坂本龍馬が活躍し、江戸幕府が倒れ、明治政府ができあがったのです。


もう1つ、インターネットが世の中に普及して、多くの皆さんの生活が激変しました。


携帯電話やスマホも単なる電話機ではなく、インターネットにつながっている、ということが生活の変化を大きくした要因である、ということに異論はなかろうかと思います。


では、このインターネットが一般化して、市場の84%に普及するまでに要した時間はどのくらいだと思いますか? 答えは11年です。


参考に、その他、パソコン、携帯電話、スマホも合わせて表にまとめてみました。スマホは昨年2016年現在で72%だったので、今年84%に達すると見込まれています。スマホは発売されてから10年かからずに市場に行き渡ることになります。

表2:イノベーター理論上の市場普及率達成年数の比較

表2:イノベーター理論上の市場普及率達成年数の比較

出典:総務省「通信利用動向調査」、がべーじにゅーす


この2つの事例からわかるのは、15年あれば世の中はかなり変わり得る、ということです。


そう考えると、2011年に情報化社会が終焉し、新しい時代に移行したとすると、そこから15年後の2026年までには新しい時代の完成形に近づいている可能性は十分考えられます。


実際にこれからの日本を考えると、2020年に東京オリンピックまでは追い風モード、そこから逆風が吹き始めながらの2026年になろうかと思います。


それまでに、世の中が大きく変わる、ということを想定しながらこれから企業も個人も戦略を立て直すべき時期にあるわけです。


まずはこのことを、一人でも多くの方に、そして1日も早く理解してほしい、といま私は言い続けています。


では、少し話がそれてしまいましたが、「情報化社会」が終わった次にどのような時代がくるのでしょうか? 「情報化」することが「付加価値」を生み出した時代が終わるわけです。


これから付加価値を生み出すのは、「AI化」です。したがって、ポスト「情報化社会」とは、「AI化社会」である、というのがひとつの答えです。これは、第四次産業革命の定義と基本的に一致しています。


では、「AI化社会」とは何か? これを、今までの例にならって定義してみると、


「AI化社会とは、AI化することで付加価値を生み、AIを民主化する社会」


となります。この文章の前半部分はご理解頂けると思いますが、後半の「AIを民主化」というのは、一見??な感じを受けると思います。


しかし、少し考えてみると想像できます。つまり、人類はここまでの歴史で「モノ」と「情報」を民主化して、「モノ」と「情報」の「持つもの」と「持たざるもの」を対等にしてきました。


これからは、単に「情報化」するだけでは、付加価値を生み出さないため、新しい「発想」が必要となります。


つまり、「考える」ことによって「創造的な付加価値を付ける」必要があるわけです。そうなってくると、今度は「考える」という能力の「持つ者」と「持たざる者」の差が生まれるわけです。


その能力を民主化するため、つまりフラット化するため、のフェーズが「AI化社会」である、と想像できるわけです。


つまり、AIとは何か? というと、その本質的な役割は、ひとの「考える」ことを支援し、仮に「考える」ということが「苦手」だと思っている人であっても、ひとの創造性を発揮できるようにすること、そしてよりクリエイティブな思考を発揮できるようにすること、だと私は考えています。


実際に、昨年2016年に囲碁の世界でAIがプロ棋士に勝ちました。それを見た別のプロ棋士の方に、「これからひとはどうなるんですか?」と聞いたところ、悲観的な答えが返ってくると思いきや、「これからが本当の戦いです。ひとは、AIから学び、ひとの思考が進化するんです。」とわくわくした顔で答えた、という話を聞きました。


ここで、もう1つ掘り下げて考えたいのは、ひとが「考える」ことで付加価値を生み出す、というのは何を意味するか? ということです。


「考える」「思考する」とは何でしょうか? 私は、これこそがひとのアイデンティティだと考えています。


つまり、「考える」「思考する」ということは、私にしか、あなたにしか、できないことなのです。したがって、これからの時代の仕事というのは、私にしか、あなたにしか、できない「考える」「思考する」というプロセスから生まれる「クリエイティブ」な成果物で仕事をする時代なのです。


いままでの労働的作業は、私でなくてもできる、あなたでなくてもできる仕事が中心でした。企業はリスクヘッジという正当性のもとに、マニュアル化して、万が一その担当者が倒れた時でも、退社したときでも、事業に影響がでないような仕組みを作ってきました。


しかし、その結果、そこには私でなければならない理由、あなたでならない理由はほぼありません。つまり、いままでの社会は、ひとを機械やロボットのように見なしてきた、没個性、脱個性を追求してきた、と言えます。


そんな仕事に「楽しさ」があろうはずがありません。そのような仕事に「生きがい」を感じるのが難しいのは当然です。


その結果が、私はうつ病などの心の病の蔓延につながっていると思っています。ひとは本来、一人ひとり違う生き物なのです。それを無理やり枠にハメてきたことがいま大きな代償となって現れてきつつあると思っています。そして、この鬱積したものが、新しい時代への大きな変化を生み出す原動力になっていく、というのが私の見立てです。


したがって、これからの新しい時代は、「自分自身であること」が付加価値を生み出すことになるわけです。毎日「自分自身であること」を活かして、何かを生み出し、誰かに貢献し、そして褒められる。そんな毎日を想像しただけでわくわくしませんか? そうしたら、うつ病もなくなるだろうし、仕事が楽しくして仕方がない! という人が世の中に溢れかえるじゃないか、と一人夢想しているわけです(笑)


ちなみに、一部に、AIがひとの脅威になる、という話をする人たちがいますが、私は100%そうならない、という確信があります。なぜならば、これと同じことを既に人類は経験しています。


工業化社会の1811年にイギリスで起こった「ラッダイト運動」がそれです。機械はひとの仕事を奪う悪魔の機械だ、と言って機械を破壊したそうです。


今聞けば笑い話のようなことですが、いまAIに対する批判的な意見を目の前で聞くと意外と笑えません。しかし、100年後には同様に笑い話になっているはずです。

図:ラッダイト運動

図:ラッダイト運動

出典:wikipedia


 

ちなみに、今までの時代を「情報化社会」、これからの時代を「AI化社会」と説明してきたわけですが、もう一歩歴史を遠くから俯瞰してみると、実はこれは1つの連続した流れのように見えてきます。


いままで「情報化社会」と呼んできた時代は、「指示命令型コンピュータ化社会」、そして、これからは「自立型コンピュータ化社会」と言えます。この「自立型コンピュータ」というのが「AI」です。そう考えると、「情報化社会」から「AI化社会」へと区別してとらえるよりも、この一連の流れは「コンピュータ化社会」という言葉でひとくくりにしたほうが分かりやすいことが見えてきます。


そう考えてから歴史を整理すると、人類は「工業化社会」を経て、「コンピュータ化社会」に突入し、未だにその変化は継続中。そして、「コンピュータ化社会」の前半期の「指示命令型コンピュータ化社会」が2011年ごろに終わり、そこから後半期の「自立型コンピュータ化社会」に移行している。これが私の時代変化の見方の1つです。


しかし、実は、もう1つの時代変化の見方があります。これが、実はもっと大きな社会変化につながっている、というのが私の考えです。


2016年のアメリカのトランプ大統領の誕生、イギリスのEU離脱の投票結果も私には1つの同じ流れに見えています。


今回は少し長くなりすぎてしまいましたので、それについては、次回お話ししたいと思います。


 

「いきいき!わくわく!働ける未来」のために。


ご参考になれば幸いです。


以上、キズナキャスト小林でした。

 
 

プロフィール

株式会社キズナキャスト
代表取締役 小林 広治



1996年3月 早稲田大学理工学部卒。
1999年7月創業、2000年4月に法人化し代表取締役に就任、現職。長野県出身。46歳。(2019年1月)


HP:株式会社キズナキャスト

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