四方よし経営を実現するためのパーマネント経営学

第4回

SDGs時代の経営的思考を養おうー永続地域社会編ー

鈴木 秀顕 2022年3月24日
 

パーマネント(永続)経営を考える前提

パーマネント(永続)経営というと、相変わらずの経営をすることだ、と思われる方も多くいらっしゃるようですが、永続は何も無理やり企業を残しましょう、とか以前の状態をそのまま継続させていきましょう、ということとは違います。そもそも経営とは、社会に対して価値あるものを提供し、その対価をいただくことで、身の回りの生活を安全安心に維持向上できるようにするための活動です。ここでいう社会は、何も人類だけの話ではありません。


デジタル民主主義から考える

最近出版された本に『オードリー・タンが語るデジタル民主主義』というものがあります。その中の はじめに に書かれている最後の部分には、

「こうした状況下で、台湾の先駆的な試みや画期的な事例を紹介することは意義があり、日本のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するうえでも多くのヒントが得られるのではないだろうか。


それは何も国政だけの話ではない。各市町村や企業、そしてそこに所属する市民にとって瞠目に値するアイデアが詰まっているので、一般市民こそ実際に参考にし、実行できるアイデアもあるのではないだろうか。なぜなら、台湾のモデルは、行政(ガバナンスを担う人)と市民が共通の目標に向かい、協働で問題解決に取り組むモデルだからだ。」


とあります。近年、資本主義の終焉と言われることが多くなってきました。18世紀から19世紀にかけて、資本主義は社会主義との経済的思想の対立軸の中から生まれてきました。冷戦構造とまで言われたその対立軸は、マスコミという情報社会が台頭してきたことにより、資本主義の物的豊かさが喧伝され、そこで生まれた欲望に負けた人々は、一気に資本主義へと傾いていくこととなりました。そもそも社会主義は、公平な社会を目指して作られた思想でした。しかし、人はそれぞれであり、誰一人同じ人はいません。そのため公平な社会を目指して作られた社会主義社会は、不平等を生むこととなり、資本主義の偏った自由と豊かさの喧伝に負けることとなっていったのです。しかし今、先ほどの資本主義に内在した偏った自由と豊かさが、デジタルでさらに拡大した情報社会の中で、やはり人の欲望に負ける形で台頭することになってきたと思われます。そして、この本で書かれているのは、次なる社会思想であるデジタル民主主義になります。この思想が定着するかどうかは定かではありませんが、サーキュラーエコノミー、社会的連帯経済等次なる思想が生まれつつあることも事実です。つまり今まで生まれてきた社会思想は、人々の進化に基づいた社会の動向に従い、変化に対応していることになります。このように、永続を考えていく上で大切なことは、終わるということを前提に、技術を含めた人々の進化を観察しながら、次を準備しながら進めていくことにあります。


日本社会の変遷

では、世界の変革を見据えた日本社会の変遷はどのようになっているのであろうか?未来学者のアルビン・トフラーの著書『第三の波』によると、人類は3つの社会変革によって今に至るといっています。第一の波は農業革命による社会変革。第二の波は産業革命によるもの。第三の波は情報革命によるものと捉えられています。これらの変革を超えて、農耕社会から工業社会、そして情報化社会へと変遷しているというのです。私はこれら社会の変遷に加え、金融社会、そして情報社会の後にもったいない社会が来ていると2013年頃から考えています。(もったいない社会は人新世社会へと刷新しています。)

日本社会の変遷

この変遷における大きな変化は、大量生産大量消費型モデルから社会の質の向上モデルへと遷移していることです。そしてこの変化は、流通が発達していった競争社会から職住隣接や地産地消を主とした協創社会へと移り変わっていくということにあります。これは、高度に2次産業や3次産業が発達した機械中心の社会から、確かな1次産業の上に成り立つ人が中心の社会になっていくことを表しています。


人新世社会とは

まだまだ現代社会は遷移途中のため、詳細の中身は未確定です。ただ、確実なる大きな変化は、さまざまな多様性が認められた人間らしさが求められる社会へと遷移しているということであり、お金に振り回されない社会へと遷移しているということになります。確かな1次産業の上に成り立つお金に振り回されない人中心の社会とは、医食(職)住が充実した自立した地域コミュニティが社会の点として存在する社会になっていくことになります。その地域コミュニティでは、自立した地域住民が必要で、自立した地域住民は自分で働くことができる人となります。永続地域社会では、そのような自立した地域住民が存在する地域コミュニティの中で成立していくものとなります。そして自立した地域住民には、アントレプレナーシップが必要になります。アントレプレナーシップは基礎的なことはある程度学ぶことはできても、一朝一夕には身に付くものではありません。それが永続地域社会へのステップとなる人新世社会への遷移を遅らせているのかもしれません。ただ、確実に社会は遷移していっています。そして、その一助となるべく、私の社会デザイン協会では、ESDユニバーシティを展開しています。教育を市場の中の産業ではなく、コモンズ(社会的共有財・社会的富)として捉え、人新世社会の地域住民を育成していこうとする試みです。


この活動を強めていくべく、令和4年3月22日10時(4・3・2・1・0の順組み合わせのスタートです。)よりREADYFOR( https://readyfor.jp/projects/esdu )にてクラウドファンディングを展開しています。その中では、ESDユニバーシティのラーナー(学習者)募集のほか、社会デザイン協会の会員にもなることができます。ぜひ、サスティナビリティを一緒に学んでいきましょう。


永続地域社会から見えるパーマネント経営

永続を考えていく上で大切なことは、終わるということを前提に、技術を含めた人々の進化を観察しながら、次を準備しながら進めていくことにありました。それは、地域社会のみならず、それら地域社会の中で活動する企業にも大切な考え方になっていきます。そして、これからは質の向上が注目点にあるということも考えられてきました。さて、その中で地域社会の人々の進化はどのように成し遂げられてきたのでしょう。おそらく、次の準備としてはそのあたりをキーワードとして捉えながら、活動していくことが考えられていくのではないでしょうか。今までの事業の考え方は、足りないものを補うことに価値が見出されてきたことが多かったように思います。しかし、大量生産の社会により、それら足りないものはほぼほぼ補われてきてしまいました。また、それを継続的に行ったことにより、必要以上のものを提供することになってきてしまいました。結果として生まれてきたものは、怠惰と飽くなき欲望の追求です。現代社会は、その揺り戻しが起こっています。その揺り戻しの中に、新たな事業が生まれてきています。このあたりに新たな経営のヒントがあるようです。最大の揺り戻しは、DXによる働き方改革です。


次回は、DX遷移について、です。

 
 

プロフィール

一般社団法人社会デザイン協会
代表理事 鈴木 秀顕

栃木県出身。財閥系商社・外資系IT企業など会社員、会社社長を経て教員へ。会社員時は営業マンとして全国1位を獲得。会社社長時はVCから投資を得るビジネスモデルを開発。
研究活動として、東北大学大学院経済学研究科現代応用経済科学専攻博士課程前期修了(東北大学・経営学修士)。東北大学大学院情報科学研究科人間社会情報科学専攻博士課程後期退学。岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学科ソフトウェア情報学専攻博士課程単位取得退学。ソフトウェア情報学博士取得(岩手県立大学・ソフトウェア情報学博士)。GRIサスティナビリティレポート研修修了(GRI)。
現在、社会デザイン協会代表理事、秋田地球熱利用事業ネットワーク副理事長、わらび座支援協議会理事など。
主要研究テーマは、デジタルコンテンツや地域づくりの事業モデルやプロジェクトマネジメント。
学会等の活動として、日本感性工学会評議員、もったいない学会理事など。
フィールドワークとして、(地域リーダー育成スクール)ESDユニバーシティを各地に展開中。


HP:一般社団法人社会デザイン協会

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