四方よし経営を実現するためのパーマネント経営学

第2回

SDGs時代の経営的思考を養おうーイノベーション編ー

鈴木 秀顕 2022年1月12日
 

2022年明けましておめでとうございます。社会デザイン協会代表理事の鈴木秀顕です。

新年初めてのこれからの経営学(パーマネント経営学)に関するコラムです。改めてパーマネント経営学とは、パーマネント(永続)的に経営するための学問で、考え方の根底に「社会的意義のある価値を継続的に提供する」ことを目的に持ちつつ、その手法として「四方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし、地球よし)」を基盤に非財務情報から価値事例を見出し永続的に循環経営を実現するための学問になります。今回は、パーマネント(永続)経営の前提となるところから書かせていただきます。


パーマネント(永続)経営を考える前提

パーマネント(永続)経営というと、相変わらずの経営をすることだ、と思われる方も多くいらっしゃるようですが、永続は何も無理やり企業を残しましょう、とか以前の状態をそのまま継続させていきましょう、ということとは違います。そもそも経営とは、社会に対して価値あるものを提供し、その対価をいただくことで、身の回りの生活を安全安心に維持向上できるようにするための活動です。ここでいう社会は、何も人類だけの話ではありません。


SDGsウェディングケーキモデルから考える

SDGsはウェディングケーキモデルで語られることがあります。ウェディングケーキはいくつもの段が重なって作られているものですが、このSDGsウェディングケーキは3段から成り立っています。一番下に「環境」真ん中に「社会」その上に「経済」があるということを象徴的に示されたものになっています。ここから見て取れることは、私たちの社会や経済というものは、環境(地球の健康)の上に成り立っているということです。


この環境というものは厄介なもので、常に変化しています。諸行無常の根本です。しかも、多くの要素が絡み合っているため予想不可能な状態にあります。したがって、環境が変われば社会や経済も変わるという関係にあるということになりますが、ウェディングケーキの一番下にあることからもわかるように、身近なところからは遠く大きいところにあり、かつ段として切り離されたところにあるため、日常の人間の想像が及ばず、なかなかその変化に気付きづらい状態にあるものにもなっています。

SDGsウェディングケーキ図

今までの経営

そのため、経営のはじめにある「社会に対して価値あるものを提供し」の中の社会の変化に対応した価値が見出しづらい状態になります。また、今まで提供してきた価値についてはすでに充足していることに気付かず、今まで売れていたのだから今まで通りの商品が売れるはずだと、相変わらずの商品を提供し続けることに陥ることになったのが今までの経営です。ただ、そこにはそれでも成り立つ要因がありました。それは、今までに起きていた社会の変化として、市場の拡大があり、その環境バランスが保たれていたという状態がありました。


その市場拡大は、交通網(自動車、船、飛行機、国際ルール等)の整備による海外市場への進出やインターネット網の整備等の活動範囲の拡大によるものになります。また、貧富の格差を利用した市場拡大もあります。しかし、この市場は、あくまで環境バランスが保たれた状態(安価な素材が潤沢に供給され、そこから生み出される商品が不足している価値に合致している状態)にあるときのみ有効な活動です。


環境が害された状態での経営

環境(地球の健康)が害された状態では、この活動自体が不全に陥っていきます。なぜなら、ここで生まれてきた商品群は、地球が生み出すものを素材に生産されてきたものだからです。人や生物がいずれ死んで再生するのと同様に、地球や宇宙さえもそこで生み出される素材を無価値な状態で捨てていってしまってはいずれ素材は枯渇し、死んでいくのです。そして、環境適用ができないものとして死滅し、再生さえも不可能になるのです。ここでいうパーマネント(永続)を考えていくためには、再生不可能を避け、終息ー再生のサイクルの実現することを考えていかなくてはならないことになります。


パーマネント(永続)経営を考える意義

さて、ここまでは、環境といういきなり大きな話をしてしまったので、経営とは関係ないじゃないか、と思われた方もいらっしゃる方もいるかもしれません。しかし、これからの経営を考えていくためには、現在の環境や社会を理解した上で、価値の提供という目線で見つめ直さなければ、永続経営を考えることは難しいということを理解いただければと思います。また一方では、そんなに難しいことなら、永続など考えず、明日さえ何とかなるような経営でいい、と考える方もいらっしゃる方もいるかもしれません。しかし、おそらく、多くの経営者は明日さえもどうなるかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか?それは、以前よりも変化の速度がはやく、複雑になっているため不透明感が増しているからになります。


では、明日の経営を考えるためにはどうするか。明日より先の経営を考えなければならないのです。そこで、明日より先の経営に必要なのがパーマネント(永続)経営になります。それは、パーマネント(永続)経営の肝が「社会に対する価値の提供」にあるからです。そして、それ(自社が提供する価値)が明確になっていると、明日より先の経営が見えてくるようになるのです。


社会に対する価値とは

2022年初め、ソニーがEV(電気自動車)市場に参入するニュースが飛び込んできました。日本のEV市場の状態はというと、自動車メーカーは国内産業構造にがんじがらめの中、水素エンジンやハイブリッドエンジンを進めた結果、世界中のマーケットで進められていたEV市場からは大きく出遅れていました。この状態の中で出てきたのが、自動車メーカではないソニーです。ソニーは電気メーカーであると同時に、他電機メーカーとは異なり、「人のやらないことをやる」「チャレンジ企業」を大切に成長してきた企業です。ソニーは「誰もやっていないことをやろう」という創業精神を絶やすことなくオリジナリティーと先進性を世にアピールする形で、人(の想像力)を大切にしてきました。おそらくソニーは、自社の価値を「人のやらないことをやる」「チャレンジ企業」に落ち着いたのではないかと思われます。


社会環境と相まって考えたときに、EV市場への参入が見えてきたのではないかと思われます。社会環境的には、気候変動への対応という形で、世界的にガソリン自動車の減産が見込まれています。その代替として登場したのがEVです。が、EVはガソリン車に比べてエンジン構造が簡易なため大幅に部品が減ります。そのため国内自動車メーカーや日本国は二の足を踏み、日本国内の大手企業参入さえも考えられていませんでした。しかし、EVは自動車とはいえ、見方を変えれば電気製品です。この両方の組み合わせからEV市場は、自動車と電機、お互いの産業が手を組んで新たな産業を作るくらいの意気込みがあってもおかしくない市場でした。


しかしそのEV市場ではお互いの産業が交わることなく、ベンチャー企業が産業形成をしています。新たな産業を生み出すには、ベンチャー企業は最適です。しかしベンチャー企業は、社歴が短く、急成長するというデメリットもあります。これらの要素は、瞬間的には力を発揮するとは思われますが、長年の経験から得られる知見等が不足することが考えられます。2021年末には、EVメーカー大手のテスラ社が2021年販売台数のほぼ全数となる(米国内で)47万台超のリコールが起きる事態が発生しました。この事態はなるべくしてなったことであり、創業期のトヨタ社も起こっていたことなので、仕方のないことかもしれません。が、様々な企業の良さを組み合わせるような経営手法(オープンネットワーク経営等)がうまく機能していれば、この事態の規模縮小が図られた可能性はあります。この話をすると、大手とベンチャーが手を組んで進めている話もあるという話をする人もいます。これは、大手の持つ知見や経験とベンチャーの持つ突破力を組み合わせた形になるので、一見よさそうな感じも受けます。しかし、この組み合わせにおいて、自社の本来的価値を理解せずに進めることも多くみられるため、短命に終わることも多いようです。そこでは自社の本来的価値を理解する前に目先の利益や目先の技術を追うために起こりえることで、パーマネント経営とは程遠い状態で展開されることも多く見られます。永続的に続いている企業は、ソニーに限らず、多くのイノベーションの波を乗せることによって乗り越えてきました。


そのイノベーションの多くは、社会や環境の変化を最適にとらえ、自社の社会に対する価値とを組み合わせたことにより生み出されたものになっています。この社会に対する価値は、経営規模の大小に限りません。自社がなぜ今まで続いてきたのか、という目線を持ち、分析することによって見えてくることであります。この自社価値の認知は個々の事情によっても違うので、自社のみならず、顧客や取引先や社会環境の変化も加えたところで見つめ直す(四方よし「売り手よし、買い手よし、世間よし、地球よし」)ことで見えてくることであります。ぜひパーマネント経営を知り、活用し、そのような活動になるように目指していってほしいと思います。


ただ、ここで見出された自社の本来的価値は、大局を捉えることから見つめ直すため、日常生活の人には認知しづらいという可能性が高く、経営の次のステップである対価をいただくことに及ばないことも考えられます。次回は、その消費者の認知に至ることについて考察していきます。


次回は、自社価値の消費者認知について です。

 
 

プロフィール

一般社団法人社会デザイン協会
代表理事 鈴木 秀顕

栃木県出身。財閥系商社・外資系IT企業など会社員、会社社長を経て教員へ。会社員時は営業マンとして全国1位を獲得。会社社長時はVCから投資を得るビジネスモデルを開発。
研究活動として、東北大学大学院経済学研究科現代応用経済科学専攻博士課程前期修了(東北大学・経営学修士)。東北大学大学院情報科学研究科人間社会情報科学専攻博士課程後期退学。岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学科ソフトウェア情報学専攻博士課程単位取得退学。ソフトウェア情報学博士取得(岩手県立大学・ソフトウェア情報学博士)。GRIサスティナビリティレポート研修修了(GRI)。
現在、社会デザイン協会代表理事、秋田地球熱利用事業ネットワーク副理事長、わらび座支援協議会理事など。
主要研究テーマは、デジタルコンテンツや地域づくりの事業モデルやプロジェクトマネジメント。
学会等の活動として、日本感性工学会評議員、もったいない学会理事など。
フィールドワークとして、(地域リーダー育成スクール)ESDユニバーシティを各地に展開中。


HP:一般社団法人社会デザイン協会

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