NY発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術

第5回

ロジカルシンキング手法で、ONE BIG MESSAGEを見つけ出す

リップシャッツ信元夏代 2018年8月16日
 

前回、スピーチ原稿やプレゼン資料を作成する前に、①聞き手を分析、②自分を分析、③共通の基盤を見つける、という3つのステップの調査分析を行うことが大切だ、というお話をしました。共通の基盤が見つかったら、それをどうやって端的に言葉で表現するのか?と考えるのが、次のステップです。より相手に「響く」精度の高いメッセージを探すためには、ロジカルシンキング手法を使っていきます。

 

たった一つのメッセージに絞り込む


スピーカーとして、伝えたいことは山ほどあることでしょう。しかし人間は、複数のことを言われると、かえって混乱し、すべてを忘れてしまいがちです。全部忘れられてしまう10つのポイントを伝えるのと、確実に聞き手の印象に残る1つのポイントに絞り込むのと、どちらが良いでしょう?もちろん後者ですね。ですから、自分がスピーチを通して最も伝えたいことはなんなのか、たったひとつの大きなメッセージに絞り込むことで、スピーチは格段にクリヤーになります。

これをブレイクスルー・スピーキング™では、One BIG Message、と呼んでいます。
しかしそのOne BIG Messageを伝えるには、なぜそれが聞き手にとっても最も大切なことなのか、根拠をいくつか挙げて説明する必要があります。それらの根拠をブレイクスルー・スピーキング™では、Main Point(s)と呼んでいます。

 

聞き手によって異なる、「響く」ポイント 


One BIG Messageの根拠となるMain Pointを探し出していくのは、簡単なようでそうではありません。それは、伝えるメッセージが同じだとしても、聞き手が違えば、彼らに響く根拠、というのは異なってくるからです。


例えば、One BIG Messageが、「我が社にとって、A社の買収は、中長期目標達成に必要不可欠である」、だったとしましょう。
聞き手を説得するために、どんな根拠を挙げればよいでしょうか?


もし聞き手が、経営層や役員理事であれば、A社がいかに我が社の戦略的方向性にプラスになるか、というポイントが、響く根拠かもしれません。しかし聞き手が生産関連部門の人々であったとしたらどうでしょう。自社に欠けているA社の生産技術やノウハウ、規模の経済による生産コストの大幅削減などのポイントが、響く根拠かもしれません。あるいは、聞き手がマーケティング関連部門の人々であれば、彼らに響く根拠は、A社の商品ポートフォリオが、いかに我が社の商品ポートフォリオを補完・強化するものであるか、というポイントかもしれません。


ですから、聞き手はどういう興味や価値観を持つ人たちなのか、何を求めているのか、しっかりと調査分析した上で、彼らにもっとも響く根拠は何か?を洗い出していかなければ、相手に響くスピーチには仕上がらないのです。

 

拡散的思考法と収束的思考法で、ポイントを特定する


One BIG Messageから根拠、つまりメインポイントを引き出し、それを言語化していくためには、ロジカルシンキング手法を使いながら3つのプロセスを経ます。
最初に①アイデアを洗い出すブレスト、次に②アイデアの絞込み、最後に③アイデアの言語化、です。


まず最初にブレストをします。
ブレストは、考えうるアイデアをとにかくどんどん書き出して、もう出ない!と思えるまでアイデアを出し尽くす作業のことです。このような思考法をロジカルシンキングの用語では、「発散的思考」といいます。この「発散的思考」では、思いつく限りの方向に発想をめぐらすことで、独創的なアイデアを生み出すことが可能になります。


この段階では、きちんと整理しようとせず、型にはまらない自由な状態で、とにかく新しいアイデアを探すことです。可能性の枠を広げていけば、予期せぬ成果が生まれるものですから判断は後回しにして、あらゆる角度から探ってみましょう。また、最初にパッと思いついたアイデアがベストであるとは限りません。テーマに沿って可能性のあるものを全て出し尽くすまで、粘り強くアイデアを考え続けることがコツです。アイデア創出のプロセスを3回、4回と繰り返していくうちに、本当にいいと思えるアイデアが浮かんでくるものです。


次のステップは、洗いざらい出されたアイデアの絞込みです。
最初のブレストで使ったロジカル思考は、「発散的思考」というものでした。
絞り込みのプロセスでは、「収束的思考」を使っていきます。更に、こちらも戦略コンサルタントが良く使うロジカル・フレームワークですが、「親和図」というフレームワークも使いながら、アイデアを絞り込んでいきます。


まず、発散的思考で出し尽くしたアイデアを、似たもの同士あつめてグルーピングして、そのグループにタイトルをつけます。似たもの同士を寄せていくことから、「親和図」と呼ばれます。各グループにつけたタイトルは、簡潔な言葉で表現できるレベルにまで絞り込んでいいきます。これが、根拠となるメインポイントへとつながっていくのです。

 

捨てる勇気を持とう


ここで大切なことをひとつお話ししましょう。
「何を盛り込むか」と同じくらい、「何を捨てるか」が大切。ということです。
聞き手が、「このプレゼン、もう少し長ければよかったのに」といってくれることは滅多にありません。彼らはもっと情報を詰め込んで欲しいのではなく、もっと簡潔に、明確にしてほしいのです。従って、「情報を伝えること」と、「情報を控えること」のバランスのとり方が重要です。


スピーチ内容をふるいにかけないままだと、何が最重要ポイントなのかが聴衆に上手く伝わらず、従って反応も悪くなってしまうでしょう。聞き手視点でメッセージを組み立てることをを忘れずに、絞り込み作業は、心を鬼にして行うことです!あなたが気に入ったアイデアであっても、潔く切り捨てること。それがプレゼンテーション/パブリックスピーキングの質を高める秘訣です!


ここまでできたら、あともう1歩。アイデアを、分かりやすく、かつ、意味合いの深い言葉へと言語化していきます。言語化へのプロセスは、次回、具体例を用いながらご説明していきます。

 
 
 このコラム筆者のe-ラーニング講座開講中! “ニューヨーク発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術”  ニューヨークを拠点に20年以上にわたり、多くの企業のお手伝いをしてきた事業戦略コンサルタントであり、元マッキンゼー、そしてTEDxTalk登壇者であるリップシャッツ信元夏代氏により、グローバルなビジネス実践型の視点で開発されたBreakthrough Method™。
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リップシャッツ信元夏代
アスパイア・インテリジェンス 代表
ブレイクスルー・スピーキング 代表


早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルに鉄鋼・紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーを経て、2004年に、戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社をNYに設立。2015年にはブレイクスルー・スピーキングを設立し、グローバルに活躍したい日本人のためのパブリックスピーキングのE-learningプログラムや企業内研修を中心に、個人コーチングなどを行っている。


トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初のNY大会優勝3連覇を果たしたほか、世界で100名強しかいない、World Class Speakingコーチに唯一の日本人として認定される。世界的権威者、ブライアン・トレーシーらと共に共著した「The Success Blueprint」は、アマゾンの2016年ベストセラーに。2015年にはTEDxTalkに登壇している。


BREAKTHROUGH Speaking:http://www.btspeaking.com

ASPIRE Intelligence:http://www.aspireintelligence.com

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