NY発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術

第26回

「事例紹介」から「コーポレートストーリー」へ

リップシャッツ信元夏代 2019年7月4日
 

パブリックスピーキング界の大御所、Patricia Frippは次のように言っています:


“People resist sales presentation. But nobody can resist a good story…well told.  

A trivial story well told is much more memorable than a great story poorly told.“ 
– Patricia Fripp


「TEDとか、モチベーショナルな性質のスピーチなら良いだろうが、ビジネスの場では、ストーリーテリングは目的にそぐわないのでは」、という疑問がよく聞かれますが、Patriciaははっきり、「That’s a big big mistake」、と答えています。


何か売り込まれている、と少しでも感じると、人は抵抗を感じたりしますが、豊かなストーリーには誰もがつい耳を傾けてしまう力があります。
それは何も、複雑で巧妙なストーリーでなくて良いのです。シンプルながら、効果的に語られたストーリーには、人は心を動かされるものなのです。


ビジネスプレゼンの中のストーリーは、様々な役割を担ってくれます。
込み入ったコンセプトや新しい知識を得たとき、ストーリーと共に解説されると、より理解が進み、腹落ちしやすくなります。

商品・サービスの購入を検討しようとしているとき、実際それをどんなシーンで使ったらどのように現状が改善されるのか、ストーリーならよりイメージがつきやすくなります。
上司から言われて仕方なく参加した研修でも、講師が自身の失敗談など、ストーリーを語ると、興味が持てるようになります。
過去のケースを紹介する際、そのプロジェクトに関わった人々の顔が見え、どんな苦労を経て今に至るか、ストーリーで聞くことができれば、より、この会社に頼みたい、と心が惹かれます。


ビジネスプレゼンでは、ついつい、「事例紹介」に留まってしまうパターンがほとんどではないでしょうか。


事実(クライアントの課題やプロジェクト背景説明、提供したソリューション、得られた結果)を明確に説明すれば、論理的なので説得力があると思いがちですが、実は論理的だけでは人の心は動きません。


アリストテレスが「説得の3要素」として挙げているとおり、論理的アピール、倫理的アピール、そして情緒的アピールの3要素が揃って初めて、人は完全に説得されるのです。
倫理的アピールは、自社の評判や実績、ブランド力などである程度補えますが、ビジネスプレゼンには、情緒アピールが欠如しているケースが多々あります。


それを補ってくれるのが、「ストーリー」です。
事実を脱して、わが社のストーリー、つまり、「コーポレートストーリー」にしなければ、人は心から説得されないのです。


コーポレートストーリーは3つのCに注目


ストーリーを構築する際、「9つのC」という要素を組み込んでいく手法は、過去のコラム、「ストーリーをドラマにする9つのC」で解説しているとおりですが、ビジネスプレゼンで使用する「コーポレートストーリー」には、ハリウッド映画のようなドラマチックさは、確かに少々邪魔になってしまいます。


コーポレートストーリーを構築する際は、この9つのCの中から、「Conflict」、「Cure」、「Change」の3つのCにフォーカスして構築して行くと効果的です。


通常、「事例紹介」は下記のようなイメージで説明されます:

◆クライアント: 通信事業 A社

◆課題:各種サービスが複雑化しており、俊敏かつ柔軟な情報基盤を作ることが必須

◆ソリューション:複雑化する各種サービスを見える化することで、事業プロセスの効率化、資産を削減 

◆成果:わが社の商品、「Business Flowchart」を導入することで、資産1/4へ
大規模プログラムの開発期間を約30% 短縮し、かつ高品質な開発を実現


ここに欠けているのは、「Conflict」、「Cure」、「Change」の中のどれでしょうか?


「Cure」はわが社の商品、Business Flowchartです。この商品がきっかけとなり、資産と開発期間の削減という「Change」を実現しました。この二つのCは通常、「事例紹介」に含まれています。しかし決定的に欠けているのは、「Conflict」です。


「Conflict」とは、欠点や欠陥、という意味ではありません。
ソリューションを提供するに当たり、必ず、何らかの苦労があったはずです。そして、プレゼンの聞き手の企業でも、もし同商品の導入を決定したら、少なからず、何らかの障害が必ず出てくるはずです。
この事例のA社では、どんな障害があったのでしょうか。どんな点に苦労したのでしょうか。どんな人たちがどのような思いでそれに取り組んでいったのでしょうか。その障害を共に越えようとしたことで、クライアントとわが社の合同チームが一体感を感じるきっかけになったりしたことはありましたか?誰かがふと発した一言で、ひらめきがあったりしなかったでしょうか?


例えば、上記の「事例」にConflictを加えてみると、こんな豊かで、「ヒトの顔が見える」ストーリーになるのです。


事例からコーポレートストーリーへ


“皆さんの企業では、市場の先を読みながら多様なサービスを迅速に展開しているのに、少々伸び悩んでいる、という課題はお持ちではないでしょうか。


昨年秋、A社のトップ営業マン、山田さんと、業界コンベンションで1年ぶりにばったりお会いした時のことです。久しぶりだったので、コンベンションセンターのスターバックスでコーヒーをご一緒しながら情報交換することにしました。


私は山田さんにこういいました。
「A社はここ数年、新サービス導入のスピードが速くて素晴らしいですね。市場の先をいっていらっしゃる」


すると山田さんは、意外にも表情が曇って、コーヒーを飲む手を休めてこうおっしゃいました。
「いや実は、新サービスが増えすぎて複雑になってしまって、売上げは上がっている一方で、資産もどんどん増えてしまって…」
「なるほど、山田さん、例えば複雑になったサービスが、ひと目で把握れば、もっとシンプルにマネージできますね?」


その時私は、わが社のBusiness FlowchartがA社の悩みを救う、と確信しました。


Business Flowchartは事業プロセスを見える化することによって、今どのプロジェクトがどの段階にあるのかひと目で分かるようにするシステムです。
そうすると、これまでプロジェクトごとに別々のシステムで独自管理していた状態から中央集権化できるので、不必要な資産は大幅に削減できます。


コンベンションからもどった山田さんは早速社内でプロジェクトを立ち上げ、わが社のBusiness Flowchart導入に取り組みました。


>>>Conflict挿入<<<
しかし事業プロセスの異なるサービスはなんと100種類以上を越えていて、これらのプロセスを全てBusiness Flowchartに落とし込むのは途方にくれるような作業量でした。しかしそれぞれ専門性を持つわが社のプロフェッショナル5名がA社の担当者と毎日肩を並べてひとつひとつBusiness Flowchartに落とし込む作業を地道に進めました。
途中、担当者の出張で日程がずれ込んだり、毎日方をつき合わせるのを快く思わない方もいたりしましたが、「お客様と共に」という姿勢を徹底する我々プロフェッショナルチームは約6ヶ月かけて作業を完了させました。
>>>Conflict終了<<<


Business Flowchartを導入したことでA社は資産1/4への削減を達成しました。
さらに、情報を把握しやすくなったために高品質なプログラム開発が実現した上に、事業プロセスが効率高くなり、開発期間も30%短縮できるようになりました。


つい先日、再度山田さんとお会いしたところ、こんな嬉しい一言をおっしゃってくださいました。
「お蔭様で私の営業の成績も順調です!」


わが社のBusiness Flowchartは、皆様の会社の生産性を、資産効率良く、大きく改善することができます。
そして我々の専門性の高いプロフェッショナルが、皆様の会社の課題にパーソナルに取り組み、やり遂げます。


まさに、技術とヒトが一体となって、皆様の成長のお手伝いをします。
次は皆さんの番です。”


いかがでしょうか。
形式ばって簡素な「事例紹介」を、「コーポレートストーリー」として語ることで、興味を持って聞くことができませんか?


上記の例には、9つのCの中から、コーポレートストーリーのポイントとなる3つのC(Conflict, Cure, Change)を中心に、Circumstance、Curiosity、Conversation in Dialogues、Carryoutなども含まれています。


みなさんが普段のプレゼンで行っている「事例紹介」を、是非、「コーポレートストーリー」に仕立ててみてください。
聞き手の共感度が一気に高まることでしょう。

 
 
 このコラム筆者のe-ラーニング講座開講中! “ニューヨーク発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術”  ニューヨークを拠点に20年以上にわたり、多くの企業のお手伝いをしてきた事業戦略コンサルタントであり、元マッキンゼー、そしてTEDxTalk登壇者であるリップシャッツ信元夏代氏により、グローバルなビジネス実践型の視点で開発されたBreakthrough Method™。
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リップシャッツ信元夏代
アスパイア・インテリジェンス 代表
ブレイクスルー・スピーキング 代表


早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルに鉄鋼・紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーを経て、2004年に、戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社をNYに設立。2015年にはブレイクスルー・スピーキングを設立し、グローバルに活躍したい日本人のためのパブリックスピーキングのE-learningプログラムや企業内研修を中心に、個人コーチングなどを行っている。


トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初のNY大会優勝3連覇を果たしたほか、世界で100名強しかいない、World Class Speakingコーチに唯一の日本人として認定される。世界的権威者、ブライアン・トレーシーらと共に共著した「The Success Blueprint」は、アマゾンの2016年ベストセラーに。2015年にはTEDxTalkに登壇している。


BREAKTHROUGH Speaking:http://www.btspeaking.com

ASPIRE Intelligence:http://www.aspireintelligence.com

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