NY発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術

第25回

話し手が聞き手と「コネクト」できない10の理由

リップシャッツ信元夏代 2019年6月20日
 

今あなたが、大切な人に電話をかけて大切なメッセージを伝えようとしている、と想像してください。ところが回線が不安定で電話が切れてしまい、何度もかけ直さなければいけなかったとしたらどうでしょう。


スピーチに置き換えてみましょう。世界一素晴らしい話の内容だったとしても、聞き手と心をつなぐこと(=コネクト)が出来なければ、すべて台無しになってしまいます。でもちょっとしたコツを知り、ちょっと手直しするだけで、コネクションはぐんと深まります。


今日は、話し手が聞き手とコネクトできない原因とそれを回避するコツを10つ、ご紹介します。


1. “オレ様”スピーチ


話し手は、自分の成功話を語りたいものです。しかし聞き手はどうでしょうか。もちろん成功の秘訣を聞きたいでしょうが、もし話し手が、自分の素晴らしい業績やスキル、経験などばかりにフォーカスした話をしてしまったらどうでしょう。聞き手はきっとこう感じるはずです。


「あの人は特別だから…すごいから…(自分には無理)」


「話し手は雲の上の特別な存在なのだ」、と感じてしまうと、聞き手の心は離れてしまいます。聞き手とコネクトするためには、成功話の前に、まず、自分の失敗談や苦悩、欠点、初めての体験などを話し、「自分自身も聞き手と同じような経験を経てきた」ことを感じさせるように心がけましょう。


2. “原稿丸読み“スピーチ


なぜわざわざ、そこに人を集めてきて話をするのでしょうか。それは何らかの心のつながりが大切だからです。
原稿を読むだけなら誰にでも出来ます。さらに言うなら、印刷して配布すればいいだけの話です。原稿を丸読みするようなスピーチでは、聞き手は「時間の無駄」と感じてしまうことでしょう。話し手の「心」や「感情」、「情熱」がそこになければ、聞き手とのコネクション作りはあり得ません。原稿ばかりに頼らず、自分の言葉で、心をこめて、情緒的コネクションを大切にしてください。


3. “含まれている”感が感じられない


話し手が演台の後ろに立ったまま動かず、一方的に話し続ける…というスタイルもよく見かけますが、皆さんがもし観客だったらどう感じますか?「聞かないといけない義務感」から仕方なく聞こう、という姿勢になりませんか?それではコネクションなど生まれようがありません。


聞き手も、「自分もこのスピーチの一部だ」、と感じたい欲求が実は隠れているのです。「これは自分に関わることだ!」と感じたいのです。
ですから、彼らをスピーチの中に含めてあげましょう。例えば彼らに質問をしたり、簡単なアクティビティーをしたり、彼らの反応を見ながら返してあげたり、というようなことです。


4. エナジーレベルのミスマッチ


もし、静粛な場に、突如吉本芸人的お笑いを始めたらどうでしょう。或いは盛り上がっている観客を前にして、厳粛なスピーチを始めたらどうでしょう。
こんな極端な例は少ないとは思いますが、観客の空気感に合わせたオープニングは、想像以上に大事なコツです。

このコラムでも何度もお話ししている7秒ー30秒ルールを覚えていますか?最初の印象で全体のスピーチのトーンが決まります。まずスピーチの冒頭は、会場、観客の空気感にあわせましょう。一体感が生まれたところで、そこから聞き手をどんどん話し手のストーリーの世界に引き入れていくのです。


5. 目線の偏り


話し手が聞き手全体に目線を配ることが大切なのはご存知のとおりですが、緊張していたりなれていなかったりすると、同じところにばかり目線を配りがちになります。
すると当然、目線が届かない部分にいる聞き手は疎外感を感じてしまいます。スピーチ全体を通して、満遍なく目線を配分するよう心がけましょう。


6. “他人事”スピーチ


聞き手にとって、自分自身を反映させられる内容だったかどうかで、コネクションの深さが決まります。ただの「他人事」として流されないよう、聞き手一人ひとりが自分自身の内省につながるように、メッセージを熟考し、効果的に問いかけたりしていきましょう。


7. “金太郎飴“スピーチ


あなたの話は、あなたにしか語れないユニークなものでしょうか?
トピックじたいは、他の話し手でも伝えられる内容かもしれない場合もあるかもしれませんが、そんな時でも、「なぜ自分が話す必要があるのか」、じっくりと考え、自分にしか語れないオリジナリティーあるストーリーに変えていく力が必要です。
オリジナリティー溢れるストーリーには、聞き手はおのずと引き込まれていくものです。


8. ネクストステップがいくつもある


スピーチの終わりに、聞き手に実行してもらいたいネクストステップを提示する場合、あなたはいくつのネクストステップを並べているでしょうか?
例えば、「詳しい情報は弊社のウェブサイトをご覧ください」、「また、お手元に資料をお配りしているのでこちらもお目通しください」、「2時からはブースでデモをやりますの是非お越しください」、「さらに○月○日には体験イベントをやりますのでそちらもお越しください」…、などなど、伝えたいことはたくさんあります。
しかしこれはNGです。


話し手にとっては、「オプションを与えている」と考えがちですが、聞き手にとっては、「やるべきこと」がいくつも提示されると、混乱したり面倒になったり忘れてしまったりして、「どれもやらない」と言う結果を導きます。ネクストステップは、「1つ」に絞り込みましょう。


9. “ケーススタディー”型スピーチ


事実だけを伝えるのではなく、ストーリーとして情緒コネクションを高めましょう。
これは何も、お涙頂戴ストーリーを作れというのではなく、その“ケース”の背景、関わった人々、その人々が経験した苦労やチャレンジ、どのように乗り越えて行ったのか、どんな変化や学びがあったのか、などなど、ストーリーの”9つのC”(詳しくはブレイクスルーのウェビナーや動画コンテンツをご参照ください。http://www.btspeaking.com)といった要素を組み込んでいくことで、単なる事実から、心がつながるストーリーに変化していきます。


10. “一方的”ストーリー


とはいえ、ストーリーを一方的に伝えれば良い訳ではありません。ストーリーとは、「伝える」ものではなく、「そこへ連れて行く」ものなのです。そのストーリーが起こった当時の場面に、聞き手を引き込んでいくのです。
そのためには、登場人物のセリフや表情、反応、その場の情景描写、などを語り、聞き手がその場面を想像できるようにしましょう。それが、聞き手と話し手がコネクトするストーリーテリングです。

 
 
 このコラム筆者のe-ラーニング講座開講中! “ニューヨーク発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術”  ニューヨークを拠点に20年以上にわたり、多くの企業のお手伝いをしてきた事業戦略コンサルタントであり、元マッキンゼー、そしてTEDxTalk登壇者であるリップシャッツ信元夏代氏により、グローバルなビジネス実践型の視点で開発されたBreakthrough Method™。
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リップシャッツ信元夏代
アスパイア・インテリジェンス 代表
ブレイクスルー・スピーキング 代表


早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルに鉄鋼・紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーを経て、2004年に、戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社をNYに設立。2015年にはブレイクスルー・スピーキングを設立し、グローバルに活躍したい日本人のためのパブリックスピーキングのE-learningプログラムや企業内研修を中心に、個人コーチングなどを行っている。


トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初のNY大会優勝3連覇を果たしたほか、世界で100名強しかいない、World Class Speakingコーチに唯一の日本人として認定される。世界的権威者、ブライアン・トレーシーらと共に共著した「The Success Blueprint」は、アマゾンの2016年ベストセラーに。2015年にはTEDxTalkに登壇している。


BREAKTHROUGH Speaking:http://www.btspeaking.com

ASPIRE Intelligence:http://www.aspireintelligence.com

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