NY発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術

第24回

シリアスなスピーチでもユーモアを盛り込むには

リップシャッツ信元夏代 2019年6月6日
 

前回のコラムで、ユーモアとジョークの違いについて解説し、ユーモアを引き出すための3つの基本ステップについてお話しました。
特にグローバルな場でのプレゼンには、聞き手をひきつけるためにユーモアは必要不可欠です。


しかしシリアスなプレゼンなど、ユーモアを引き出すのが難しそうなケースではどうでしょうか?ユーモアはやはり必要なのでしょうか。


答えはYESです。


なぜなら、シリアスな内容が続く場合、全体の空気が重くなりがちで、聞き手にとって、深呼吸ができる“抜け感”が必要だからです。ユーモアは、この“抜け感”を与えてくれるものなのです。
ただし、ユーモアを無理やりねじ込むのは逆効果です。


ではシリアスなプレゼンでは、どのようにユーモアを活用したらよいでしょうか?


ダイアログを活用する


いかなるスピーチでも、ストーリーが組み込まれていることがいかに大切か、は幾度となくこのコラムでもお伝えしてきました。


そしてストーリーに欠かせないのが、ダイアログです。
シリアスなストーリーでもユーモアを引き出すための最良の方法は、登場人物どうしのダイアログを活用して、ストーリーに出てくる登場人物に(スピーカー本人以外)のセリフにユーモアを見出す方法です。


お手本として、1999年の国際スピーチコンテスト世界チャンピオンのクレッグ・バレンタイン氏のスピーチの一部を聞いてみて下さい。ネイティブの英語、かつ彼は話すスピードも速いですが、アメリカのパブリックスピーキング業界のトップレベルの技術を是非感じていただきたいと思います:


【オーディオファイル】//craigvalentine.com/wp-content/uploads/IdontknowIdontread.mp3


大学卒業後、どの仕事も失敗してうまくいかず、どうしたらいいのか悩んでいたクレッグは、当時のルームメートだったスコットにアドバイスを求めます。「すべて僕の手から離れていくんだ」と絶望的に語るクレッグに、スコットのセリフが間髪いれず入ります:


「どうがんばっても手から離れてくれなかった、あのダメ彼女がいたじゃないか!」


さらに真剣に悩むクレッグに対しスコットは、「本を読んで自己開発をしろ」という最もらしいアドバイスをするわけですが、そこで今から本屋に出向いて本を買う気満々になったクレッグは、「よし!そうしよう、ここから一番近い本屋はどこだ?」とたずねます。そこでスコットのセリフが再度入ります:


「知らないよ、僕、本は読まないから。」


スコットにこれらのユーモアあるセリフを言わせたおかげで、全体的にシリアスなトーンのストーリーにもかかわらず、たった60数秒間の中で、4箇所も笑いが起きています。平均すると15秒に1回です。もちろん、デリバリーの技術や、絶妙な間の取り方も笑いに貢献していることは言うまでもありません。


なぜ、他人に言わせるのか


なぜ自分「以外」の登場人物がユーモアのあるセリフを言う必要があるのでしょうか。
それは、自分自身は、シリアスな状況に陥っている張本人だからです。


もしそんな状況にある自分自身(という登場人物)に面白いセリフを言わせたら、それは「後付けでむりやりねじ込んだ感」が伝わってしまいます。その時そんな気持ちではなかったはずだからです。
一方で、その場にいた他の人物だったならば、深刻な状況でも、それを第三者として捉えることが出来ますから、突拍子もないセリフが出てきても、さほど不自然ではありません。逆にその人物の個性が生き生きと見てくる効果もあるのです。


さて、今度は皆さんの番です。苦悩やコンフリクトなどを語るシリアスなストーリーはありますか?その時その場にいた人は誰でしょうか。その人はなんと言ったのでしょうか?何かユーモアにつなげられる一言がなかったでしょうか?探してみましょう。


ここでひとつのコツは、その人物が言った内容全部をセリフとして言わせるのではなく、その内容をコンパクトに要約して、短いセリフとして言わせることです。そうすることで、ユーモアのインパクトが最大化されます。

 
 
 このコラム筆者のe-ラーニング講座開講中! “ニューヨーク発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術”  ニューヨークを拠点に20年以上にわたり、多くの企業のお手伝いをしてきた事業戦略コンサルタントであり、元マッキンゼー、そしてTEDxTalk登壇者であるリップシャッツ信元夏代氏により、グローバルなビジネス実践型の視点で開発されたBreakthrough Method™。
ニューヨークで活躍する戦略コンサルタントならではの鋭い分析力をふんだんに生かした解説で、あなたのプレゼンが劇的に変わります!

リップシャッツ信元夏代
アスパイア・インテリジェンス 代表
ブレイクスルー・スピーキング 代表


早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルに鉄鋼・紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーを経て、2004年に、戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社をNYに設立。2015年にはブレイクスルー・スピーキングを設立し、グローバルに活躍したい日本人のためのパブリックスピーキングのE-learningプログラムや企業内研修を中心に、個人コーチングなどを行っている。


トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初のNY大会優勝3連覇を果たしたほか、世界で100名強しかいない、World Class Speakingコーチに唯一の日本人として認定される。世界的権威者、ブライアン・トレーシーらと共に共著した「The Success Blueprint」は、アマゾンの2016年ベストセラーに。2015年にはTEDxTalkに登壇している。


BREAKTHROUGH Speaking:http://www.btspeaking.com

ASPIRE Intelligence:http://www.aspireintelligence.com

このコラムをもっと読む NY発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術

同じカテゴリのコラム

キーワードからコラムを検索する