NY発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術

第23回

ユーモアとジョークの違い

リップシャッツ信元夏代 2019年5月23日
 

どんなスピーチでも、第一印象が大切です。最初の7秒でスピーカーの印象が決まり、30秒で、スピーチに興味を持てるかどうか判断されてしまう、という7秒ー30秒ルールについては以前にもこのコラムでお話ししました。

ブレイクスルー・スピーキングでは、受講者の皆さんにオープニング7つの手法を学んでいただいていますが、時折、こうおっしゃる方が見られます。


「最初にジョークを交えて話すとアイスブレイクになっていいんだよね。」


そうでしょうか。
実はここに大きな落とし穴があります。


「ユーモア」のあるオープニングは効果的ですが、これは「ジョーク」とは性質の異なるものなのです。


ユーモアとジョークはどう違う?


プロのコメディアンをよく観察してみてください。


彼らは何も面白い事をただ言っているだけではありません。
絶妙なタイミング、間、緩急のつけ方、声の表現力、表情、体の動き、オチでドカンと笑いをとるストーリー構成…。全てを計算されつくされているからこそ、笑いが起きるのです。彼らは「笑いのプロ」ですから、常に、笑いのネタにもアンテナを張っていることでしょう。


それを素人がやろうとするとどうなるでしょう?ご想像はたやすいと思います。
「笑いをとろう」と思ってジョークを一発言ってみる、ではなかなか人は思ったように笑ってくれません。
万が一うまくいって笑ってくれたとしても、笑いをとることを目的としたジョークは、本題とは直接関係ないことが多いものです。せっかく笑いが取れても、その後急に話題の異なる本題に移ってしまったら、その場の空気感は、一気に冷え切ってしまうことでしょう。これでは7秒ー30秒ルールもすっかり逆効果になってしまいます。


一方で、「ユーモア」はスピーチにおいて大切な要素です。ユーモアとジョークの大きな違いを一言で言うならば、ジョークは「笑い」を目的にしているのに対し、ユーモアは「笑い、学ぶ」ことを目的とする、と言う点です。


ユーモアは宝探し


ジョークのように、「どこかに笑いを取る箇所を作ろう」と思って、「笑いを挿入」すると、ぎこちなくなったり無理があったりするものです。


ユーモアは、実はあらゆるところに潜んでいるのです。
何の変哲もない普通の日常に思えることでも、ユーモアは潜んでいます。言い方をちょっと工夫するだけでも、ユーモアあふれる内容になったりすることもありますし、たったひとことを加えたり、言う順番を変えるだけで笑いが起こったりすることもあるのです。
そうすると、観客も、その意外性に不意を打たれ、ついついわれを忘れて笑ってしまうことでしょう。


肝心なことは、普通の出来事の中に潜んでいるユーモアを探し出し、引き出し、磨いてあげること。宝探しのようなものです!


ユーモアを引き出すには


次の例を見てみましょう。セールスパーソンたちに、営業のコツを伝えるプレゼンを聞いていると想像してください。


「1年後、今の自分の売上げの3倍の成績を出したいと思いますか?
わが社の、“売上げを3倍にする52のコツ”プログラムにサインアップすれば、毎週1つずつのコツを配信します。52週目つまり1年後には必ずあなたの売上げが3倍になっていることでしょう。」


さて、ここでストップ。
サインアップする気になりましたよね?


でももし私がこんな営業トークをしたらどうでしょう?


「“プログラムにサインアップすると、52週連続で私からEmailが届きます” ★」

誰もサインアップする気が起こりませんね?
営業では、“得られる結果”を先に述べ、次に“結果を得るための正しいプロセス”を、“正しい言い方で”伝える、というポイントが大切です。


★のところで必ず観客から笑いが起こることでしょう。
なぜでしょう?そんな言い方はあり得ないからです。しかしそれ以上に笑いが起こる理由があります。


“正しい”言い方&“NG”な言い方、を対比させることで、間違った言い方がユーモアあふれた内容に聞こえてきます。
ただしここで重要な注意点がひとつあります。対比させる順番を間違ってはいけない、ということです。上記の例では、“正しい”言い方をしっかり頭に焼き付けたからこそ、“NG”バージョンが、面白おかしく聞こえる、という効果が生きるのです。


その他にも、対比する事例、ストーリー、事実、などなど、対比を出すことでユーモアを発掘できるケースが多々あります。
つまり、ユーモアを引き出すポイントは、「対比」にあるのです。


この対比を出すための3つの基本ステップは次のとおりです。


Step 1 “正しい”プロセスは何か?考える

Step 2 “NG”プロセスは何か?考える

Step 3 両方のプロセスを立て続けに述べる。ただし、“正しい”プロセスを先に述べる


では、シリアスなプレゼンなど、ユーモアを引き出すのが難しそうなケースではどのようにしたら良いのでしょう?
次回のコラムでお話いたします!

 
 
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リップシャッツ信元夏代
アスパイア・インテリジェンス 代表
ブレイクスルー・スピーキング 代表


早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルに鉄鋼・紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーを経て、2004年に、戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社をNYに設立。2015年にはブレイクスルー・スピーキングを設立し、グローバルに活躍したい日本人のためのパブリックスピーキングのE-learningプログラムや企業内研修を中心に、個人コーチングなどを行っている。


トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初のNY大会優勝3連覇を果たしたほか、世界で100名強しかいない、World Class Speakingコーチに唯一の日本人として認定される。世界的権威者、ブライアン・トレーシーらと共に共著した「The Success Blueprint」は、アマゾンの2016年ベストセラーに。2015年にはTEDxTalkに登壇している。


BREAKTHROUGH Speaking:http://www.btspeaking.com

ASPIRE Intelligence:http://www.aspireintelligence.com

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