NY発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術

第22回

リハーサル5つの間違い

リップシャッツ信元夏代 2019年5月9日
 

どんなスピーチであれ、リハーサルが欠かせないことは言うまでもありません。筆者は競技ダンスの選手もしていますが、コーチからよく言われるのは、「本番では、良くても練習の80%くらいにクオリティーが落ちるもの。だから常に本番さながらに練習していないといけない」、ということです。スピーチも同様です。
しかし、本気度を出して練習するだけでよいかというとそうでもありません。みなさんは、「正しい」リハーサルを行っているでしょうか?


今回は、リハーサルに良く見られる5つの間違いをご紹介します。
 

NGリハーサル#1: 鏡の前で練習する


実はこれ、筆者もつい最近までやっていたことです。自分の表情やボディーランゲージなどを確認しながらリハーサルをしていたのですが、筆者が日本人として唯一認定を受けているWorld Class Speakingスピーチコーチ認定プログラムの大師匠から、それはまさに間違いナンバーワンだ、と指摘を受けてしまいました。


なぜかというと、本番では自分の姿を見ながら話すことなんて決してありえないからです。観客を見て話をするのです。本番さながらに練習するためには、鏡に映った自分ではなく、聴衆を想像しながらすべきなのです。また、スピーチというのは、自分自身ではなく、聞き手中心の視点が大切なのです。ですから、鏡に映った自分ではなく、聞き手を想像しながら練習をしましょう。もし表情やボディーランゲージを確認したければ、ビデオに撮影し、それを後でレビューするのが良いでしょう。


NGリハーサル#2: 自然発生的場面を想定しない


スピーチをする際、必ず聞き手から何らかの反応が返ってきます。笑いだったりうなづきだったり、或いは疑いの表情であったり。このような聞き手の反応は、双方向コミュニケーションをして彼らとコネクトする最大のチャンスです!


しかしリハーサルの際、それをまったく考慮せずに、最初から最後まで通して練習をしていると、せっかく沸き起こった反応を素通りし、練習どおりにそのまま次に進もう、としてしまったら、せっかくのコネクトするチャンスを失ってしまいます。
リハーサルのときから、聞き手の自然発生的な反応を想定しながら、間をおいたり、架空の反応に反応してみる練習などを加えてみるとよいでしょう。


NGリハーサル#3: 声に出したリハーサルしかしない


スピーチのリハーサルですから、当然、声に出して本番さながらにやらないといけません。しかし、それと同じくらい効果があるのが、目をつぶって、その場面を想像しながら、頭の中でリハーサルをすることです。少々つぶやいてもいいかもしれません。
本番をビビッドに視覚化できればできるほど、臨場感を感じることができ、本番当日はリラックスして臨むことができるのです。筆者はよく、タクシーや電車の中などの移動中や、夜ベッドに入ってすぐ、寝付くまでの間に「視覚化リハーサル」を行っています。


NGリハーサル#4:最初から最後まで順番に通し練習をする


たとえば、30分のスピーチだとしましょう。最初からリハーサルを始めたものの、10分くらいたったところで電話がかかってくる、誰かに呼ばれる、或いは、スマートフォンにメッセージが入ったと知らせる音が鳴る、などなど、中途半端で練習が途切れてしまい、そのままリハーサルを中断…なんていうことはありませんか?気を取り直してまた最初から練習開始…そうするとどんなことが起こるでしょうか。
出だしは必ず練習ができるので良いものの、中盤に差し掛かると練習不足が目に見えてしまったり、エネルギーが続かなかったり。このようなスピーチを、「下り坂スピーチ」といいます。高いところから始まるものの、そのまま下り坂で終わってしまうスピーチです。


ではこれを避けるためにはどのような練習方法が良いのでしょうか。
パーツごとに分けた練習です。


1つのスピーチを、5つくらいのパーツに分けてみましょう。そして、毎回、違うパーツから練習を始めてみるのです。また、自信のないパーツがあれば、そこだけを何度も練習します。こうすることで、全てのパーツに満遍なく力を入れることができるのです。もちろん、本番さながらの通し練習も必要であることはいうまでもありません。


NGリハーサル#5: 座ったまま暗唱


リハーサルとは、原稿をしっかり覚えて、言えるようにすること、だと勘違いしていませんか?(ましてや、原稿を「読む」ことだ、という大きな勘違いはしていませんか?)大きな間違いです。
リハーサルの目的は、メッセージを「インターナライズ」すること、つまり、自分のものとして内面に取り込むこと、が目的です。リハーサルの際も、演台を離れて、ストーリーを語ってみましょう。ストーリーの部分とナレーションの部分、重要なメッセージの部分、動き方が異なるはずです。実際に立って、動きながら練習をしてみることです。


今回は、5つのNGリハーサルについてお話しました。


しかし、最大の間違いがもうひとつあります。それは、リハーサルをしないこと。
「内容は熟知してるから大丈夫」、「返ってリハーサルしないほうが自由に話せてよい」とおっしゃる方。「自分視点」、になっていませんか?自分自身がうまく話せ、プレゼンを終わらせること、が目的になっていませんか?

スピーチの目的は、聞き手に何らかの影響を与えることです。
買うという行動、賛同、士気アップ、知識習得、などなど、様々な「影響」が考えられます。つまり、スピーチは、聞き手視点で行うものであり、決して自分視点で行うものではありません。「スピーチを通し、相手の心をつかむ」ことに成功したいならば、リハーサルは絶対的に欠かせません。
そして何より、周到な準備から生み出される質の違いは、聞き手に必ず伝わるものなのです。

 
 
 このコラム筆者のe-ラーニング講座開講中! “ニューヨーク発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術”  ニューヨークを拠点に20年以上にわたり、多くの企業のお手伝いをしてきた事業戦略コンサルタントであり、元マッキンゼー、そしてTEDxTalk登壇者であるリップシャッツ信元夏代氏により、グローバルなビジネス実践型の視点で開発されたBreakthrough Method™。
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リップシャッツ信元夏代
アスパイア・インテリジェンス 代表
ブレイクスルー・スピーキング 代表


早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルに鉄鋼・紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーを経て、2004年に、戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社をNYに設立。2015年にはブレイクスルー・スピーキングを設立し、グローバルに活躍したい日本人のためのパブリックスピーキングのE-learningプログラムや企業内研修を中心に、個人コーチングなどを行っている。


トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初のNY大会優勝3連覇を果たしたほか、世界で100名強しかいない、World Class Speakingコーチに唯一の日本人として認定される。世界的権威者、ブライアン・トレーシーらと共に共著した「The Success Blueprint」は、アマゾンの2016年ベストセラーに。2015年にはTEDxTalkに登壇している。


BREAKTHROUGH Speaking:http://www.btspeaking.com

ASPIRE Intelligence:http://www.aspireintelligence.com

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