NY発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術

第19回

聞き手と繋がる3つのツール

リップシャッツ信元夏代 2019年3月7日
 

皆さんが普段スピーチをする際、どんな角度で話をしているでしょうか?
自分・自社の視点から、聞き手のためになる成功事例や秘訣を共有する。このような角度で話すことは多々あると思います。営業トークの時などは特にそうでしょう。


しかしそれを聞いた聴衆の頭には、おそらく次のいづれかが思い浮かぶことでしょう:

「この人は自身満々な人だな…」

「この人は特別な人だから成功したんだな…」


スピーカーとして人前に立って何かを話す、ということは、特別な何かを持っていたり経験していたりしないといけないもの、というステレオタイプを持っていませんか?
それは大きな間違いです。スピーカーとして、聞き手に「この人は特別だ。すごい。」と思わせることは、実は好ましいことではありません。


それは、スピーカーが特別な存在に見えてしまうと、聞き手にとっては、「あの人は特別だからそんなことができるのであって、自分は普通の人間だから無理。」と感じてしまい、どんどん距離が離れ、スピーカーのメッセージに価値を見出せなくなってしまうからです。


常に聞き手視点に立ち、「私もあなた方と同じような普通の人間です。こんな苦労や失敗をしたんです。」と距離感を埋めることで、初めて聞き手はあなたのメッセージに耳を傾け、価値を見出すことができるのです。
しかしついつい、気づかぬうちに「自分視点」のメッセージになってしまいがちです。


そんな落とし穴を防ぐために、次の3つの「聞き手とつながるツール」をご紹介します。


聞き手とつながるツール その1


もちろん、営業などの際には、自社や自社商品の優れた点をアピールしなければなりません。ミーティングなどでも、自分の意見がいかに優れているかを主張する必要があります。


ここで大切なのは、強調すべきは「人(または会社)」ではなく、「プロセス」である、ということです。つまり、自分の成功や優れた点を自慢するのではなく、そこに至った「旅路」の中で得た、成功の「プロセス」(商品ならば、フォーミュラ、レシピなど)を強調するのです。すると聴衆は、その「プロセス」に興味を惹かれ、それを学んでみたい、と思うようになります。


しかしこれだけではまだ不十分です。この段階では、その「プロセス」に興味を持ったものの、どのような内容なのか、自分にとってどんな効果があるのか、わからないからです。
そこで、ツール その2をご紹介します。


聞き手とつながるツール その2


プロセスを定量化することです。
ステップ分けする、と言ってもよいでしょうか。


例えば、「自己実現をするため、アリストテレスからトニー・ロビンズまで、昔も今も変わらず共通して使われているフォーミュラがあります。4ステップ・フォーミュラです。」 または、「私のこの体験から学んだことは、変革を、自分にとってマイナスではなくプラスに活用するためには4つのRを実践する、ということです。」といった具合です。
このように、プロセスが定量化されると、単にプロセスを並べ立てられるよりも、急に具体性が増し、実現度が高まるような気になるものです。


さらに、聴衆の興味の持続にもつながります。
それは、プロセス自体に興味を持ったら、プロセス1だけではなく、最後の4まで聞きたい、と思うからです。
しかしもしプロセスが定量化されていなければ、まだいくつか話すべきプロセスが残っているのに、聞き手は「もう十分良い話を聞いた。」と感じてしまい、最後まで聞く耳が持続しない可能性が高くなるのです。


ですから最初に、〇つのプロセス、と定量的に数字を示すことで、「あともう2つあるんだな。なんだろう?」と思わせるきっかけ作りができるのです。(このコラムでも、3つのツール、と最初にお伝えしていますね!)
その結果、そのプロセスが自分にとってもわかりやすく、実現しやすく、効果もあるものだ、と感じてもらうことができることでしょう。


しかし中には懐疑的な聴衆もいます。確実に納得してもらうためにはどうしたらよいのでしょうか。
それがツール その3です。


聞き手とつながるツール その3


あなたが伝えたメッセージをもとに、聞き手にアクションを取ってもらいたいならば、あなた(=スピーカー)は特別な存在ではなく、聞き手と同じような人間なのだ、と思わせなければいけません。
そのためには、失敗談(営業などならば、商品開発の苦悩や秘話など)を語ることが一つの有効な方法として挙げられます。


たとえば、筆者の場合、今ではパブリックスピーキングのコーチングをしていますが、MBAの初日でクラスで自己紹介した時、単なる自己紹介なのに脇汗をびっしょりかき、いざ自分の順番が回ってきたら、言おうと思って頭の中で練習していたこととは全く違うことが口をついて出てしまい、いきなりフリーズしてしまい、その後スピーチの苦手意識がなかなか払しょくできなかった、という話を良くします。


そうすると、「スピーチコーチは昔からしゃべりが得意だったんだろう」という「特別感」が覆され、「コーチにもそんな過去があったのか。じゃあ私にもできるようになるかも。」と感じてもらえるのです。


このような、失敗、欠点、苦悩・フラストレーション、初めての体験、などをオープンに共有することで、聞き手はぐんとスピーカーであるあなたに距離が近づいてきます。これを4つのF、と覚えてください。Failures(失敗)、Flaws(欠点)、Frustrations(苦悩)、Firsts(初体験)、です。


スピーカーとしてのあなたの役割は、聞き手に、「このプロセス(フォーミュラ、ツール、レシピ…etc.)を使えば、望まれる結果や最終的な効果が得られる」というメッセージを売ることである、ということをよく覚えておきましょう。


そのためには、聞き手とつながることが必要です。

・人ではなく、プロセスにフォーカス

・プロセスを定量化

・4つのFを共有する

次回スピーチを行う際はぜひ、この3つのツールに留意してみましょう。

 
 
 このコラム筆者のe-ラーニング講座開講中! “ニューヨーク発:文化と言葉の壁を越えて” 伝わる”ロジカルスピーチ術”  ニューヨークを拠点に20年以上にわたり、多くの企業のお手伝いをしてきた事業戦略コンサルタントであり、元マッキンゼー、そしてTEDxTalk登壇者であるリップシャッツ信元夏代氏により、グローバルなビジネス実践型の視点で開発されたBreakthrough Method™。
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リップシャッツ信元夏代
アスパイア・インテリジェンス 代表
ブレイクスルー・スピーキング 代表


早稲田大学商学部卒。ゼミ専攻は「異文化コミュニケーションとビジネス」。NYUにてMBA取得。1995年に渡米後、伊藤忠インターナショナルに鉄鋼・紙パルプ業界の営業・事業開発に携わる。その後マッキンゼーを経て、2004年に、戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンス社をNYに設立。2015年にはブレイクスルー・スピーキングを設立し、グローバルに活躍したい日本人のためのパブリックスピーキングのE-learningプログラムや企業内研修を中心に、個人コーチングなどを行っている。


トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストでは、日本人初のNY大会優勝3連覇を果たしたほか、世界で100名強しかいない、World Class Speakingコーチに唯一の日本人として認定される。世界的権威者、ブライアン・トレーシーらと共に共著した「The Success Blueprint」は、アマゾンの2016年ベストセラーに。2015年にはTEDxTalkに登壇している。


BREAKTHROUGH Speaking:http://www.btspeaking.com

ASPIRE Intelligence:http://www.aspireintelligence.com

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