高齢化社会と労働市場

第5回

RAMP世代の活用法-2

 

前回のコラムでは、RAMP世代の「就業形態の多様化」と「フリーで働くこと」をテーマとしました。今回はRAMP世代を外部リソースとして活用して成功している企業の事例を紹介したいと思います。

■大手精密メーカーA 光熱費、燃料費の大幅削減を達成

<状況>
大手精密メーカーAは売上2兆円、従業員10万人、事務機器、複合機器を開発製造する世界的な企業です。東日本大震災以降の電力供給の不安定化、燃料コストの大幅な高騰を受けて、製造部門の光熱費、燃料費の大幅削減が目下の課題でした。
特に関連する副資材の製造ラインでは、温度の異なる連続した乾燥工程があり、ボイラー(加熱)とコンプレッサー(冷却)が交互に稼働し、その中に熱や冷気を循環させるようなプロセスは導入されていませんでした。
同社の生産技術部には工程改善や生産性向上を実現するためのスタッフはある程度揃っていましたが、ボイラーやコンプレッサー、触媒に関するプロフェッショナルはいませんでした。

<取組>
生産技術部門ではエンジニアリング会社に大規模な設備変更の設計・工事を発注するか、内作で基幹装置を開発し工事のみ外注するかの検討を行いました。
また、これらを実現するためのコストや時間をシミュレーションするために、造船メーカーを定年退職したエンジニア(ボイラー、熱交換の専門家)を技術顧問として招聘しました。
技術顧問を交えた打ち合わせの結果、低予算で熱効率を最大化する特殊装置を内作することが決まりました。その後、熱交換の基本的な考え方のレクチャー、試作機の開発設計プロジェクトのスケジュールとアクションプランの作成、特殊プロセスの特許化と量産工場への移管計画が決まりました。
技術顧問は計画策定後、月1,2回の訪問、その他は自宅での業務を行い、プロジェクト全体の進捗と試作機の図面評価、試験方法の提案、特殊部材の購買先調査などを実施しました。

<結果>
生産技術チームは計画通りに6カ月後に試作機をマザープラントに導入することに成功、国内の量産工場への移管についても目途をつけ、当初目標としていた光熱費、燃料費の削減に成功しました。
また、当初エンジニアリング会社に全て外注する場合に試算したコストと比較して格段に安いコストで工程改善を実現しました。
なお、その後量産工場への投入の結果、全社的にコミットメントしている製品製造における温室効果ガスの削減にも大きな貢献を果たすことができました。

<評価>
大手精密メーカーAの成功要因を整理すると、3つのことが言えるのではないでしょうか?

① 自社の不得手な技術開発プロジェクトに外部専門家を組み込んだこと。
内製化が大好きで、不得手なことでも社内でどうにか解決しようとする傾向が強い会社ではありませんか?
A社は中長期で保有すべき技術とそうでない技術に対する投資のスタンスを明確にしています。

② 技術顧問が適切な技術指導、プロジェクト管理を行ったこと。
外部にプロマネを依存することに違和感を持たれる方も多いと思いますが、専門性の高い人材が社内にいなければ、その役割を外部リソースから調達することも必要です。
A社は部門長がプロマネを外部専門家に委託することを決め、口先だけではなく実務遂行能力の高い技術顧問を確保しています。

③ 削減すべき光熱費、燃料費を明確な目標としたこと。
ゴールの設定や責任の所在がうやむやになってしまう社内プロジェクトありませんか?
A社は外部専門家にコストを投じ、緊張感のある関係性を築くことで、プロジェクトメンバー全員の方向性を揃えることに成功しています。

■RAMP世代活用の効果

A社プロジェクトの技術顧問を引き受けたRAMP世代のエンジニアのその後の状況を確認すると、このような返答がありました。

「プロジェクトは当初6ヵ月間の予定であったが、2年経った今でも契約は継続している。現在はテーマが変更となり量産工場のユーティリティー関連の効率化案件に取り組んでいる。」
「またクライアントからの紹介で別の顧客でも新しいプロジェクトに取り組むことになった。自分のスキルや経験を活かした形で、非常勤でもクライアントに貢献できる現状の働き方には満足している。」

一方でA社の生産技術部門長からのフィードバックも確認しました。

「当時、原発がストップし電力価格や燃料価格が高騰することは確実で、光熱費、燃料費の削減は必達の目標だった。しかし当初検討していたエンジニアリング会社への外注費用を目の前にすると、設備投資を足踏みしていた。技術顧問の招聘とプロジェクトマネジメントの外部委託は当初社内でも懐疑的な意見もあったが、結果的には素晴らしい投資となった。」
「我々の会社だけではないと思うが、ヘッドカウントが増やせないが、解決しなくてはいけない課題があり、しかも専門家が社内にいない、このような状況は多々あるのではないか? その際に専門性の高い外部リソースを活用し、ミッション終了とともに契約も完了する、このようなプロジェクト型の雇い方はこれからますます必要とされるのではないか。」

ここにRAMP世代をどのように活用するべきなのか、1つの答えが見えてきます。
「専門性を持った人材をプロジェクト型で活用する」という形です。

私は仕事柄、多くの経営者の方々とお話をさせて頂いていますが、ヘッドカウントは増やせないが、「人」でしか解決できない課題を抱えている企業・組織は非常に多いと感じています。しかもその課題の大半が期間限定的に発生しており、継続して存在し続けるというものではないように思われます。このようなテーマに対してA社のような外部リソース(脳)の戦略的活用を検討される場合には、是非お気軽にお声がけください。

 
 

プロフィール

サーチファーム・ジャパングループ
ジーニアス株式会社
代表取締役社長 三上 俊輔

弊社は、独立系のエグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社から「組織戦略及び技術コンサルティング事業の分社化」を受けて、 2011年4月にジーニアス株式会社として発足致しました。現在国内外の大手製造業、新興IT企業の「経営戦略、事業計画の策定のサポート」、「人材・組織戦略の提言」、「人材採用、ヘッドハンティング」の各種サービスを提供しています。また、RAMP(=Retirement Age to MissPension、年金受給前の定年世代)の労働市場構築に向けた求人求職サービスの運営を行っています。

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