高齢化社会と労働市場

第3回

RAMP危機と定年制度廃止

 

前回のコラムでは、定年前後の諸問題とRAMP(定年後年金受給前世代)世代の増加をテーマとしました。今回はRAMP世代の就業意識と現実の雇用環境のギャップについて考えたいと思います。

■就業率は4割以下、働き続けたくても仕事がない現実

内閣府では毎年高齢者白書という年次報告書を作成しています。前回のコラムでは、65歳以上の就労率は30%以下の水準を推移していることに触れましたが、平成24年度版の最新のこの白書でも60歳代後半の就業率は40%弱、70代前半は30%弱に留まっている現実が確認できます。

一方で、高齢者の就業に対する意向については、65歳以降も働き続けたい人は全体では40%以上、定年まで勤め上げた人は60%近く存在します。働く意欲はあっても労働市場が機能しておらず、定年退職後のシニア世代の再就職が非常に困難であることはこれらの統計からも確認できます。
なお、現在人材紹介会社各社は厚生労働省からの指示で、募集・採用における「年齢制限の禁止」を強く打ち出しています。しかしながら現実的には書類選考段階では年齢を理由とした合否判断は行われており、有名無実化しています。

■定年制度廃止、年齢に関係のない労働市場へ

政府は改正高年齢者雇用安定法により、企業が労働者を65歳まで雇用することを義務付けましたが、多くの企業が継続雇用制度を導入しています。この制度は一旦60歳で定年退職した後に企業側が再雇用を選別可能な仕組みであり、就業継続を希望する全ての方が働けるわけではありません。
また、この制度下では65歳が就業継続の上限となっており、現段階で65歳以降も就業意欲がある方々が非常に多い現実とはミスマッチだと言えます。

そこで私が望ましいと考えるのは定年制度の廃止です。65歳という年齢制限付の雇用義務は単に年金支給開始までの"つなぎ"でしかなく、年金支給開始が70歳となった場合には、再度制度変更が必要になります。RAMP世代を含む高齢者雇用問題を解決するためには、定年制度を廃止し、年齢に関係のない労働市場を生み出すことが必要不可欠です。

■1987年アメリカ、2011年イギリス、201X年日本?

 しかしながら、定年制度廃止はこれまでも幾度となく議論されてきましたが実現できていません。その理由としては、年功序列的賃金体系や昇進昇格システムなどの従来型人事慣習を維持した企業においては、一時的な雇用コスト増に繋がってしまうためだと思われます。
 これまで年功序列的な報酬制度下では能力・役割・価値ではなく、年齢を重視して報酬が設定されてきました。定年制度の廃止は年齢に関わりなく能力のある人材を然るべき役割に就け報酬を支払うことになるため、年功序列的賃金体系から同一価値労働同一賃金を意識した抜本的な制度改革が必要となります。このような大きな変更にはそれなりの経過措置を設けなくてはならず、団塊の世代を数多く抱える大手企業は急激な不利益変更も解雇も出来ないために、一時的な雇用コスト増に繋がってしまうわけです。
 しかしながら日本は今後労働力不足・年金財源不足などの社会問題に直面することは間違いなく、定年制度の廃止は現実的に大きなメリットがあります。いまや一時的な負担増を理由に問題を先送りすることは出来ないのではないでしょうか?

1987年アメリカ、2011年イギリスで定年制度は廃止されています。
日本でも早期に定年制度の廃止し、年齢不問・能力主義の人材配置、柔軟な労働市場の整備を進めることが経済再生の端緒となるもと考えます。

 次回はRAMP世代の「就業形態の多様化」と「フリーで働くこと」について検討したいと思います。

 
 

プロフィール

サーチファーム・ジャパングループ
ジーニアス株式会社
代表取締役社長 三上 俊輔

弊社は、独立系のエグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社から「組織戦略及び技術コンサルティング事業の分社化」を受けて、 2011年4月にジーニアス株式会社として発足致しました。現在国内外の大手製造業、新興IT企業の「経営戦略、事業計画の策定のサポート」、「人材・組織戦略の提言」、「人材採用、ヘッドハンティング」の各種サービスを提供しています。また、RAMP(=Retirement Age to MissPension、年金受給前の定年世代)の労働市場構築に向けた求人求職サービスの運営を行っています。

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