高齢化社会と労働市場

第2回

2. RAMP(定年後年金受給前世代)

 

前回のコラムでは、高齢化社会の現状とどんどん増える社会保障給付費をテーマとしました。今回は高齢化する労働市場における定年前後の諸問題について検討を深めたいと思います。

■「役職定年制」

実際の働く人々にとっては定年前後にどのようなイベントがあるのか考えてみましょう。比較的規模の大きな会社では「役職定年制」と「早期退職制」が導入されています。
「役職定年制」はだいたい50代半ばを迎えると管理職ポストを外れ、専門職に異動する制度で、人事組織の新陳代謝と活性化を目的として"表向き"は導入されています。ただ真の狙いは年功序列型の賃金制度と昇進昇格制度を運用している会社が人件費コストの増加を抑えることにあると思います。
役職が外れると当然のことながら給与も減額されます。また役割も元部下のサポートなど後進育成が中心であり、長年貢献してきたベテラン社員全員が高い情熱を持って取り組んでいるとは限りません。
個人的には、ポストや役割を限定し自動的に給料が下がる「役職定年制」は、対象となる年齢層の社員が後述の早期退職制度に応募するモチベーションを上げるための導入として機能していると考えています。

■「早期退職制」

「早期退職制」はこれまで会社業績が不振になると人員リストラを行うべく退職者を募るために一時的に運用することが一般的でした。しかし現在は「役職定年制」とセットで運用されており、管理職ポストを外れた後に内部ローテーションが難しいと判断した社員に個別に提示する運用が多いようです。
そのため、多くの企業では定年60歳を迎える前に早期退職する社員が増加しています。早期退職後の再就職は大変難しく、離職期間が長期化した結果、「就業しない」という選択をされる方も相当数存在します。

■RAMP(定年後年金受給前世代)

早期退職を含む定年退職後、公的年金受給前の世代をRAMP(Retirement Age to Miss Pension)といいます。これは勝手に私が作った言葉ですが、RAMPがこれからの日本の労働市場のキーワードになると考えています。
RAMPは通常、60歳定年を迎えてから65歳年金受給開始までの世代のことを意味しますが、上述の早期退職パターンを含めると55歳前後まで若年化します。再就職先が見つからない場合には、65歳の年金受給開始まで所得がなく、これまでの蓄えを取り崩して生活していくことを余儀なくされる可能性があります。
また今後年金支給年齢が70歳、75歳に引き上げられると、更にその期間は長くなり、蓄えの少ない人は生活保護を申請せざるを得なくなるかもしれません。

皆さんは、長年勤めてきた会社を55歳で早期退職した後、年金受給開始(65歳→75歳?)まで何不自由なく暮らせますか?

なお、2012年65歳を迎える人口は142万人、来年は少し減って133万人、それ以降は5年に渡り200万人以上が毎年65歳を迎えようとしています。その一方で65歳以上の就労率は30%以下の水準を推移しています。

現在RAMP世代が就業継続し所得税を払い続けるのか、それとも社会保障費をつぎ込む対象となるのか、社会としてどちらかを選択する分かれ道に来ていると思います。
どちらを選択するかによって、未来の日本社会の構造は大きく変貌することは間違いありません。

次回は、このRAMPという存在について検討を深めたいと思います。

 
 

プロフィール

サーチファーム・ジャパングループ
ジーニアス株式会社
代表取締役社長 三上 俊輔

弊社は、独立系のエグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社から「組織戦略及び技術コンサルティング事業の分社化」を受けて、 2011年4月にジーニアス株式会社として発足致しました。現在国内外の大手製造業、新興IT企業の「経営戦略、事業計画の策定のサポート」、「人材・組織戦略の提言」、「人材採用、ヘッドハンティング」の各種サービスを提供しています。また、RAMP(=Retirement Age to MissPension、年金受給前の定年世代)の労働市場構築に向けた求人求職サービスの運営を行っています。

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