チームが元気になる!エンパワーメント会話術

第7回

「やる気を出させる」より「可能性を信じる」ことがエンパワーメント

齋藤 実央 2016年7月7日
 
これまでこの連載コラムでは、「部下や後輩の能力や意欲を活かして、いきいき働ける職場にするには、どんな工夫をしたら良いのだろう?」と考えている方にコミュニケーションのコツをお届けするべく、「エンパワーメント」という視点で記事を書いてきました。

実は「エンパワーメント」には、大きく分けて、①関係概念(社会学的)、②動機付け概念(心理学的)の二つの捉え方があります。社会学的には、「パワーは行為者間の関係性の中で生じる」と考えるため、関係概念としてのエンパワーメントは「相対的にパワーのある者(組織)がパワーのない者(組織)に対してパワーを与える行為」として捉えられます。従来の経営学者の多くは、その社会学的理論を背景に、エンパワーメントを「権限移譲」や「権限付与」と解釈してきました。

一方、このコラムのテーマとしてきた心理学的アプローチでは、人間は誰しも自分は無力な存在ではなく、何かができる価値ある存在だと願うパワー欲求があると考え、「パワーはすでに自己の内側にある」と捉えます。つまりエンパワーメントとは「自己の内側にあるパワー欲求が満たされている感覚、状態」であり、「自分の存在には価値があり、やっていることには意義がある」と自分で思える内発的動機付けのことを指すのです。

これを職場での上司と部下という関係性に応用するとき、何がベースにあるべきでしょうか?それは一言で言うと、「部下が潜在的に持っている可能性を信じる」ことだと思います。これまでお伝えしてきたコミュニケーションのコツを、その視点で振り返ってみましょう。

まず、やる気がないように見える部下も、実は「自分はやればできる」という自己効力感が低いだけかもしれない、と視点を変えて、向き合ってみてください(第2回)。やがて、仕事を通じて「自分でやり遂げられた!」という達成体験を積み重ねられるよう丁寧にコミュニケーションを取っていけば、部下は次第に自信を持てるようになるでしょう(第3回)。そして、部下に仕事を任せられるようになってきたら、「権限を任された側の責任を、あなたが自覚できていると信じていますよ」という信頼感を見せると、部下の士気が上がります。一方で、権限を任せた上司としての責任もしっかり示すことも肝です(第5回)。

逆に、部下が仕事でミスをしてしまったり、何か問題を抱えているときには、頭ごなしに叱る前にまずは部下が安心して話せる環境を整えてみましょう(第4回)。また、良いアドバイスをしてやろう、という親切心をぐっとこらえて、部下自身の頭で打開策を考えられるよう、話し手への共感を示すアクティブリスニングを実践してみてください(第6回)。

繰り返しになりますが、心理学的エンパワーメント理論の基本にあるのは、「パワーはすでに自己の内側にある」という考え方です。誰もがいきいきと働ける職場にしたい、と考えるのであれば、まだ経験もスキルも少ない部下も無力な存在ではなく、その潜在的パワーがあると信じること、そしてそのパワーが内発的動機によって発揮されるよう、サポートするのが上司の仕事だという視点を持ってみてください。人は誰しも、自分の可能性を信じて期待してくれる存在があるだけで、自信を持てるもの。このコラムを読んでくださったあなたが、まだ自分のパワーに気付いていない若い社員にとって、そんな存在になることを祈っています!
 
 

プロフィール

株式会社エンパブリック
齋藤 実央(さいとう みお)

首都大学東京卒業、英国・ヨーク大学修士課程修了(シティズンシップ教育)。 日本赤十字社で青少年教育プログラム等に従事し、大学院留学を経て2015年10月エンパブリックに入社。 各種ワークショップの企画・広報・運営を担当。 セルフエンパワーメントを促す教育的アプローチや環境づくりをテーマに、研究と実践を続けている。


HP:株式会社エンパブリック

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