チームが元気になる!エンパワーメント会話術

第6回

アドバイスよりも有効!アクティブリスニング実践のコツとは

齋藤 実央 2016年6月30日
 

少し前になりますが、第3回のコラムでは、部下や後輩が「自分でやり遂げた!」という達成体験(成功体験)を積み重ねて自己効力感を持つためには、上司や先輩から“できていること”をきちんと言葉にして伝えることが重要だということを書きました。


それでは逆に、部下が仕事でうまく行かなかった時、自分自身で状況改善の方法を考えられるよう促すには、どのような働きかけが求められるでしょうか?


今回はその一つのヒントとして、臨床心理学者カール・ロジャースが提唱した「アクティブリスニング(積極的傾聴)」というアプローチをご紹介します。

アクティブリスニングとは、話し手の立場に立って考えや気持ちを理解し(共感)、自分の価値観や評価基準は一旦横に置いておいて、相手の心情を受け止める(受容)聴き方のことを言います。


上司という立場だと、どうしても部下とコミュニケーションを取るときに、「よし、アドバイスしてやろう」と考えてしまうことがあるもの。たとえば、私がまだ社会人2年目だった頃、当時の上司Aとの間でこんな会話がありました。



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私「新しく入ってきたSさん(私の後輩ですが、一回り年上)、ミスを指摘してもなかなか自分で直してくれず、少し困っているのですが・・・」


上司A「Sさんはちょっと頑固なところがあるからね。今はまだ難しいかもしれないけれど、そのうちコミュニケーションのコツがわかってくるよ。まぁ仲良くやってよ!」


私「・・・わかりました・・・」

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私は、愚痴を聞いてほしかったのではなく、「Sさんは年下の私から注意されるのが嫌なのかもしれないから、別の方法を考えたい」と相談したかったのですが、切り出せずじまいでした。


その状況のまま、しばらくは我慢していたものの、やはりSさんのミスが続き、私の指摘は響かず・・・ということが続いていたので、今度は上司Bに相談することにしました。



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私「Sさんのことで、どうしたら良いか困っていることがあるのですが・・・」


上司B「Sさんのことで、何か困ってるみたいだね。どうしたの?」


私「実は、同じミスが続くことが多く、仕事にも支障が出るので指摘するものの、私が年下だからか素直に聞いてもらえなくて」


上司B「なるほど、ミスを直してもらいたいけれど、自分の方が年下だからあまり聞いてもらえないんじゃないかと思っているんだね。それなら、何か良い方法はありそうかな?」


私「もしできれば、上司からもそれとなくSさんに様子を聞いてみてもらえないでしょうか?もし私の教え方がわかりづらいということであれば、やり方を変えてみますので」


上司B「わかった、あとで僕の方から様子を聞いてみるよ」

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上司Bはまず話し手である私が言葉にしたことを受け止め、「君はこういう風に思っているんだよね」と確認しながら話を聴いてくれたのです。その結果、私も冷静に状況を見つめることができ、行き詰まりを打開する糸口も見つけることができました。


このように、話し手の言ったことを「あなたはこう考えているんだね。それを私はこう受け止めたよ」と繰り返すことで共感を示し、本質を明確にしていくことが、アクティブリスニングのポイントです。


部下が何か問題を抱えている時、上司としての責任感や親切心もあって「良いアドバイスを与えよう」と思ってしまうこともありませんが、まずはぐっとこらえて、部下の言葉の背景にある真意を汲み取れるまで、丁寧にフィードバックをしながら話を聴いてみてください。大切なのは、「上司である自分ではなく、部下自身の中に答えがある」と信じる姿勢です。そうすることで、部下が感情的になっている場合でも少しずつ冷静になることができ、状況改善の方法を自分で考えてみよう、という気持ちになってくるでしょう。


 
 

プロフィール

株式会社エンパブリック
齋藤 実央(さいとう みお)

首都大学東京卒業、英国・ヨーク大学修士課程修了(シティズンシップ教育)。 日本赤十字社で青少年教育プログラム等に従事し、大学院留学を経て2015年10月エンパブリックに入社。 各種ワークショップの企画・広報・運営を担当。 セルフエンパワーメントを促す教育的アプローチや環境づくりをテーマに、研究と実践を続けている。

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