チームが元気になる!エンパワーメント会話術

第5回

部下の士気を高める!気の利いた上司の一言

齋藤 実央 2016年6月6日
 
前回のコラムでは、何らかの理由で部下が行き詰っているとき、まずは上司が「聴く」姿勢を言葉と態度の両方で示し、安心できる環境を用意することが大切だ、ということをお伝えしました。今回は、部下が「失敗したらどうしよう」と弱気になりがちな場面で士気を高めるのに有効な、上司のちょっとした一言について好例をご紹介したいと思います。

先日、某マスコミ通信企業の法人営業をしている知人のIさんが、こんな話をしてくれました。

「これまで上司が3人変わったのですが、一番私が成長したと思うのは『たとえあなたが失敗しても最後の責任は私が持つから、自分で考えてやってごらん』と言ってくれた上司の時です」。

また、彼女はこう続けました。

「君に任せる、とか自主性を大切に、という人は多いですが、その上司は『あなたのことはオトナだと思っているから、細かいことは言わないよ』と言ってくれたのが嬉しくて、その期待に応えたいと思ったから頑張れました。それは当時の他のチームメンバーも同じで、みんなで成果を出せるように頑張ろう!という雰囲気があったように思います」。

この話のポイントは、上司が「失敗しても、最後の責任は自分が取る」と部下のIさんに伝え、安心感を与えていることです。
若手職員は、上司よりも経験が不足しているため、仕事を任されたとしても「失敗して迷惑をかけてはいけない」「失敗して怒られたらどうしよう」という不安を抱えてしまうことが良くあります。「任せられたやりがい」と「失敗のリスク」を比べると、どうしても後者を重く考えてしまいがちなのです。

Iさんの上司の場合、「最後の責任は自分が」と伝えることで、「失敗のリスクについてもしっかりと受け止めてもらえる」という部下の安心感につながっていると言えます。実際にIさんも、「私はものすごく心配性なので、最初にこう言ってもらえただけでかなり気持ちが楽になりました!」と話していました。こうした安心感があってこそ、未経験の仕事にも意欲的に取り組めるのではないでしょうか。

「任せる」とは、「自分の裁量で仕事を進めていい」という権限を与えることであり、権限には責任が伴います。上司が部下に仕事を任せる時には、「権限を与えられた側の責任」だけでなく「権限を与えた側の責任」も発生します。仕事の結果に対する責任を部下にだけ押し付けると、仕事の「丸投げ」になってしまいますが、Iさんの上司が発した言葉からは、「仕事を任せたことで生じる上司としての責任」も自覚している姿勢が伝わります。

ただし、若手社員や部下が好き勝手やって、責任を全部上司に押し付けるというのでは問題です。その点、Iさんの上司が付け加えた「あなたのことはオトナだと思っているから」という言葉は、「仕事(権限)を任された側の責任をあなたが自覚できていると信じていますよ」と暗に念押ししており、部下自身に「権限を与えられた側の責任」を自覚させるうえで大事なポイントだと言えるでしょう。

このように、短いやり取りですが、上司と部下の役割、権限と責任についてしっかり確認できているコミュニケーションであり、そのことが「信頼されているから頑張ろう」という部下の安心感と意欲にもつながった好例です。


上司と部下の間のコミュニケーションは仕事内容中心になりがちですが、それだけでなく役割や責任、権限についても確認していくことが、お互いに対する信頼感やチームの雰囲気に大きく影響する、ということをぜひ意識してみてください。
 
 

プロフィール

株式会社エンパブリック
齋藤 実央(さいとう みお)

首都大学東京卒業、英国・ヨーク大学修士課程修了(シティズンシップ教育)。 日本赤十字社で青少年教育プログラム等に従事し、大学院留学を経て2015年10月エンパブリックに入社。 各種ワークショップの企画・広報・運営を担当。 セルフエンパワーメントを促す教育的アプローチや環境づくりをテーマに、研究と実践を続けている。


HP:株式会社エンパブリック

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