自走する組織作りのためのコアコンセプト・マネジメント

第7回

言葉の重みを活かし、思いを込めて伝えきる

岩井 徹朗 2018年7月24日
 

ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。


「社長は軍隊の話が好きなんですよね」


半年に1回行われる全体会議が終わった後、社員の方に印象に残ったことをお聞きすると、社長方針の中で出てきた軍隊の話に言及されました。


社長方針の中で、例話として軍隊の話が2回ほど出てきました。一つは定期的な人事ローテーションを導入していくこと、そして、もう一つは地域密着型の営業を強化すること。その際、「例えば、軍隊では・・・」ということで、米軍では定期的に前線と本隊との間で人の入れ替えを行っていることや、ミサイルによる攻撃が主流になった今でも、なぜ地上部隊が存在しているのかという事例が使われていたのです。


言葉は一度発せられると、一人歩きします


社長の話を全体として俯瞰すると、「厳しい経営環境の下でも、皆で知恵を絞って生き抜いていこう」というメッセージが込められています。そして、その話の流れの一環として、厳しい戦況の中でも、戦いに勝って生き抜くことを目的とする軍隊の話題が出てきたのです。


しかし、「軍隊」という言葉尻だけを捉えると、「上意下達」、「上司の命令は絶対」という印象があります。このため、社長の真意とは別に、「社長の言う通りに黙ってやってればいいんだ」というメッセージとして理解されることもあるのです。


社長からすれば、一を言えば、十を理解してくれるのが理想です。でも、現実問題としては、十を言っても、せいぜい五~六ぐらいしか分かってもらえません。また、時には社員の自立を促すつもりで言ったメッセージが、逆に社長への依存を強める結果につながることもあります。


本来であれば、高い視点を持った社員がいて、社長が伝えきれなかった部分や、言葉の裏にある背景を他の社員にも伝えられるようになるのがベストです。そして、そのためには、「なぜ、我が社はこういう経営理念を掲げているのか」、「なぜ、社長がこの言葉を使うのか」を複数の社員が把握しておく必要があります。


弊社では、社長の深層価値観であるコアコンセプトを深掘りした後、会社のミッションやビジョンを再定義します。


オーナー企業や中小企業では、その経営理念も社長の価値判断の基準が少なからず反映されているケースがほとんどです。このため、ミッションやビジョンを見直しても、それらが大幅にガラッと変わるということはありません。


しかし、会社のミッションやビジョンが社長の価値観と結びついていることがハッキリすると、まずは社長自身が確信を持ちます。次に、社員も、「なぜ、社長がいつもうるさく言うのか」、「どうして、社長はそこにこだわるのか」が雰囲気ではなく、言語化されて伝えられるので、納得感が増すのです。


人によって、言葉の辞書は違います


「お客様第一主義」という理念を掲げても、社長の考える「お客様第一主義」と新入社員が捉える「お客様第一主義」とは違っています。特にミッションやビジョンは比較的短い言葉で書かれるために、解釈の幅は大きくなる傾向があります。それゆえ、その言葉の背景やそれが生れた経緯も含めて伝えていく必要があります。


先の例で言えば、「軍隊→上意下達」という理解されるのが普通なので、「軍隊→厳しい状況でも生き残る」という、より上位概念を踏まえて、伝えられるかどうか。


そのためには、最初のうちは面倒でも、社長が言葉を紡いで伝えきる姿勢が大切です。それを繰り返し、繰り返し続けていく中で、一人、そして、また一人と社長の価値観を踏まえた形で社長の言葉を理解する社員が出てきます。


中小企業においては、社長の言葉は本人が想像している以上に社員には重く伝わっています。その重みをどう活かすのか。せっかく良いことを言っても、間違った形で伝わるのは非常にもったいないこと。重い言葉は自分の思いもしっかり込めて伝えきりましょう


 
 

ヒーズ株式会社
代表取締役 岩井徹朗


都市銀行に14年半在籍し、創業期のインターネット専業銀行とベンチャー企業の勤務を経て、2006年7月に独立。


「経営者が自然体で力を発揮するためのレールを敷く」ことをミッションとして、オーナー企業を中心に、業務改善、社内体制の構築や新規事業の創出に日々取り組んでいる。


最近はマーケティングのコーチである取締役と一緒に、「社長専任」の社外チームを組成。社長の本質的な価値観に沿った事業展開をマーケティングからマネジメントまでカバーし、洋々たる未来を一人ひとりが切り開いていく世界を実現するべく活動している。


HP:ヒーズ株式会社

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