自走する組織作りのためのコアコンセプト・マネジメント

第6回

人の振り見て、腹が立つ時の対処法

岩井 徹朗 2018年6月12日
 

ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。

「みんな責任を取りたがらないんですよね」

社員を交えたグループセッションを終えた時に、ある経営者がポツリと話されました。


たしかに、社員の発言を聞いていると、皆さん現状に不満を持ってはいるものの、いざそれを改革しようとする段になると、ちょっと腰が引けているのを感じます。けれども、その経営者と個別に打合せをしていてたまに感じるのは、「この人、いつも最後の最後では逃げてしまっているのでは?」ということです。


つまり、我々から見ると、「経営者が責任を取りたがらない→その影響で、部下である社員も責任を取りたがらない」という流れです。


しかし、ご本人には「自分は責任を取ろうとしていない」という自覚がありません。このため、自分のことはさておいて、責任を取ろうとしない社員に腹を立てているという、少し滑稽な事態が生れているのです。


「人の振り見て我が振り直せ」と言われますが、誰しも冷静になって第三者の言動を見ると、その良い点や悪い点が分かるので、「自分はもっと頑張ろう」とか、「あんなことは絶対にやめよう」と思って、自らの糧にすることができます。


でも、特に腹が立っている時などは、相手の嫌な点ばかりが目につき、自分の短所との比較検討ができないので、なかなか「人の振り見て我が振り直せ」とはいきません。


けれども、怒りや悲しみなど、自分の感情が動いた時はなんらかの形で自分の深層価値観であるコアコンセプトとつながりがあります。そして、怒りや悲しみなど、どちらと言えば、負の感情が出た時は、たいてい自分のコアコンセプトの裏と紐づいているのです。


先の経営者にも、その方のコアコンセプトの裏に言及しながら、「社員に腹が立つのは、実は過去の自分を反映しているからではないですか?」とお伝えしたところ、「なるほど、そういうことか!」と納得されました。


私の場合、コアコンセプトの裏は「強要」。そして、この「強要」から「逃げる」ことで、一定の安定と安心を保ってきました。


子供の頃、何かと強要してくる父とは、一定の距離を保つことで自分の安心を確保してきました。また、社会人になってから、自分を認めない上司や組織から逃げることで、自尊心を保ってきました。


これ自体はコアコンセプトが分かった後では、「そりゃ、しょうがないよね」と納得できます。けれども、それを自覚する前では、目の前の問題から逃げることに対して、心の奥底では自分に対してコンプレックスを抱えていたのだと思います。


このため、私自身は今でも、自分で責任を取らずに逃げている人を見ると、必要以上に腹が立ちます。これは、他人を通して、嫌な、弱い自分を見せられているように感じるからです。


社員が自分の指示通りに働かない。いろいろと手を変え、品を変え、手を打っているのに、なかなか成長しない。そんな時に、経営者はだんだん腹が立ってきます。そして、その中でも、特に腹が立つ人が2、3人はいるかと思います。


そして、その怒りの対象となる社員の特徴を冷静になって観察してみると、それはダメだった自分、だらしなかった自分と似ていることがあるのです。そんな時に、怒りに任せて、追加で手を打っても、その場の問題は解決するかもしれませんが、長期的な課題は未解決のままです。


もし、怒りやイライラの対象が自分のコアコンセプトの裏とつながっていたら、まず改めるべきは経営者本人の言動。先の例で言えば、「自分自身は経営者としての責任から逃げていることはないか」と考えて、少しずつでも行動を変えていけば、それを見ている社員にも少なからず影響が出てきます。


「人の振り見て、怒りの感情が出てきたら、コアコンセプトと紐付けて、我が振り直せ」です。


 
 

ヒーズ株式会社
代表取締役 岩井徹朗


都市銀行に14年半在籍し、創業期のインターネット専業銀行とベンチャー企業の勤務を経て、2006年7月に独立。


「経営者が自然体で力を発揮するためのレールを敷く」ことをミッションとして、オーナー企業を中心に、業務改善、社内体制の構築や新規事業の創出に日々取り組んでいる。


最近はマーケティングのコーチである取締役と一緒に、「社長専任」の社外チームを組成。社長の本質的な価値観に沿った事業展開をマーケティングからマネジメントまでカバーし、洋々たる未来を一人ひとりが切り開いていく世界を実現するべく活動している。

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