自走する組織作りのためのコアコンセプト・マネジメント

第5回

捨てることで経営者として器を大きくする

岩井 徹朗 2018年5月23日
 

ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。

「会社は経営者の器以上に大きくならない」と言われます。私自身もクライアントさんとセッションを通して感じるのが、経営者が成長しないと、会社も成長しないということ。


1人社長の場合、経営者の成長=会社の成長であることはたいへん分かりやすいです。一方で、社員がいる場合。自分一人でやっている時と比べると、余計なストレスがかかります。


知識や経験については、会社の中では、社長が抜きんでています。このため、「どうしてできないの?」というイライラが募ります。また、「この仕事はこんなふうにやってね」と細かく指示を出しても、人によって言葉の解釈が違うので、社員は必ずしも社長の思い通りにやってくれるとは限りません。


社員数が増えることで、より多くの仕事がこなせるようになり、売上も増えますが、同時に経費も増えるし、何よりもストレスが増えます。

 

私は「人が成長する」という時、二つのパターンがあると考えています。


一つは年輪型の成長。


樹木が毎年少しずつ大きくなっていくように、見た目にはよく分からなくても、10年、20年という単位で測った場合は、年輪で分かるように少しずつ大きくなっているという成長です。これは確実な成長であり、誰でも実践できますが、時間がかかるという難点があります。


そして、もう一つは、断捨離型の成長。 


これは、いま自分が持っている考え方や常識、やり方やノウハウ、コンプレックスやプライドをいったん捨て、その空いたスペースに新たな考え方や概念が入ってくることで、質が変わるという形での成長です。 


会社を成長させようと考えた時、創業時に気の合う仲間だけでやっていた方法では、いつしかいろんな場面で支障が出てきます。また、「あいつらに何度教えてもダメだ」という固定概念があると、社長はいつも仕事を抱えて、社員は社長の指示待ち人間だらけになります。


この時、鍵を握っているのは、「社長が何を捨てられるのか」ということ。しかし、言葉で「捨てる」というのは簡単ですが、人の本能としては変化を嫌うので、実際には、いま持っているものを「捨てる」のはかなり難しいのが現実です。


実際、一度は仕組み化して、自分がいなくても仕事が回る体制を整えたものの、気がつくと、その体制を崩して、また、自分が中心となって仕事を回す体制に戻ってしまった経営者もおられます。


けれども、自分の深層価値観であるコアコンセプトが言葉として分かっていると、捨てることで成長を促す断捨離型の成長を実現することができます。なぜなら、自分の価値判断の基準が分かっているので、それに沿って、やるのか、やらないのかをすぐに決めることができるからです。


私の場合で言えば、コアコンセプトの裏は強要。このため、自分が強要と感じる仕事はできる限りやらないということで、捨てられるものが増えた気がします。経営資源が限られている中、中小企業では、社長が一番力を発揮する状況を作らないと、成長の基盤ができません。


世の中に出回っている実用書を読むと、「財務が分かっていないと社長失格」、「営業ができてこそ経営者として一人前」、「人事管理がマネジメントの要」といったように、社長に求められる能力や資質は数限りなくあります。


もちろん、すべてを兼ね備えたスーパー経営者になるのは理想。けれども、たとえ、苦手な分野や嫌いな仕事があっても、経営者として会社を成長させるやり方はあります。経営者としての最終的な責任を取る覚悟があれば、思い切って仕事を社員に任せることで、会社の成長を加速化することができます。


今は変化への対応スピードが求められる時代。自分の価値判断の基準を知った上で、捨てるべきものは捨て、新しいものを取り入れる形で、柔軟に、かつ大胆に成長することで、経営者としての器を大きくしていくことがベターです。

 
 

ヒーズ株式会社
代表取締役 岩井徹朗


都市銀行に14年半在籍し、創業期のインターネット専業銀行とベンチャー企業の勤務を経て、2006年7月に独立。


「経営者が自然体で力を発揮するためのレールを敷く」ことをミッションとして、オーナー企業を中心に、業務改善、社内体制の構築や新規事業の創出に日々取り組んでいる。


最近はマーケティングのコーチである取締役と一緒に、「社長専任」の社外チームを組成。社長の本質的な価値観に沿った事業展開をマーケティングからマネジメントまでカバーし、洋々たる未来を一人ひとりが切り開いていく世界を実現するべく活動している。

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